特徴は大きく3つ。1つ目は男子国内ツアー初となる最大10日間にも及ぶプロアマということ。通常のプロアマは本戦前の火曜や水曜に1日のみの開催だが『前澤杯 MAEZAWA CUP』では4月14日(月)〜23日(水)の最大10日間を設定している。本戦は通常の試合と同じように4日間だが、プロアマを入れると実に2週間にも及ぶ最長大会となる。

 2つ目は、そのプロアマに参加するための資格を販売するという点だ。通常のプロアマは大会のスポンサー関連の限られた人だけが参加できるものだが、『前澤杯 MAEZAWA CUP』では誰もが参加できるプロアマを開催する。プロアマという言葉自体はゴルフをする人なら誰もが耳にしたことがあるだろうが、自分が実際に参加するイメージを持っている人はおそらく皆無だろう。それほど限られた人にしか縁がなかったプロアマをある意味で身近な存在にしたのが『前澤杯 MAEZAWA CUP』の仕掛けのひとつでもある。

 3つ目がそのプロアマに参加するためのチケットをオークション形式で販売するという点だ。プロアマは1日50組、1組100万円で販売され、一緒にプレーしたいプロを指名するというもの。大会の賞金総額が最大4億円、優勝賞金も最大8,000万円と「最大」と付けられているのは、オークションの金額によって変動することを意味している。

 では、これまでの常識では考えられない「プロアマに参加するための100万円」の価値について考えたい。

 単純に100万円という金額を聞くと高過ぎると感じるのは当然の感想だろう。ただ、前澤友作氏の言葉からは、男子プロと一緒にプレーすることの価値を考えれば全く危惧していないことが感じ取れる。

 前澤氏は自身が大のゴルフ好きで、これまでも日本のみならず世界でプロアマに参加し、トッププレーヤーらと一緒にプレーをしてきた。そのときの感動や体験を多くの人に味わってもらいたいという純粋な思いがある。そこにゴルフを楽しむ原点があると感じているからだ。

 言われてみれば、プロゴルファーの価値とは何だろうか?夢のような高額賞金を稼ぎ、素晴らしいプレーを我々に見せて感動を与えてくれる。そう言ったことは、もちろんプロゴルファーとしての価値を高めることだが、もう一歩踏み込んで応援したくなる何かが欲しい。それはやはりプロの凄さを目の当たりにすることなのではないだろうか。実際にプロ達の本当の凄さを感じる機会は意外と少ない。どれだけの人がプロゴルファーと一緒にプレーをした経験があるだろうか。観戦ではなく、同じフィールドに立ってこそ感じられるものが必ずそこにはあると、今回の新規大会に大きな期待を寄せている石川遼プロも話している。

 国内男子ツアーは厳しい状況に置かれているのは事実だ。試合数が減り、なにかと女子ツアーと比較されることも多い。ただ、松山英樹プロをはじめ、金谷拓実プロ、平田憲聖プロ、星野陸也プロら、世界で活躍する選手の数を見れば、男子ゴルフのレベルが上がっていることは一目瞭然で、その価値が伝わっていないだけと言える。そういう意味で、前澤氏が仕掛ける今回の異例のプロアマは、プロゴルファーの本当の価値を見出す大きなきっかけになるのではないだろうか。

 ゴルフは多くのスポーツの中でもトッププレーヤーと同じフィールドで、同じルールでプレーできる数少ないスポーツ。どれだけ野球が好きでも大谷翔平と同じグランドで野球をすることなど実現できない。でも、ゴルフにはプロアマという手段がある。前澤氏はそこにプロゴルファーの価値を表現する可能性を見出したのではないだろうか。

 実際100万円と言っても1組100万円なわけで、その組の3人で割れば30万円ちょっと。もちろん好きなプロと回るにはオークションで勝ち取らなければならないが、トッププロを1日独占できると考えれば、決して高くはない金額だ。もちろん1人で独占したい場合は、1人で100万円を出してプロと2人でプレーすることも可能。また、前澤氏の仕掛けはこれだけにとどまらず、プロアマのチケットを購入した人は同伴者を1人帯同させることができる。

 一般的なプロアマでは、プレーヤー以外はコースに立ち入ることはできず、せっかく石川遼プロと同じ組で回るのに、その姿を家族や友人に見せることができないという状況が普通だった。それが今回のプロアマでは、コース内に一緒に入ることができる。いつもはゴルフに興味がなかったパートナーがゴルフに興味を持つきっかけになったり、プロに憧れるジュニアがプロのプレーを目の前で見られる大きなチャンスになったり、様々な可能性がこのプロアマには秘められている。

 前澤氏と同じようなゴルフ好きだけが集うこれまでになかった雰囲気になることは間違いないだろう。

 初めてのことには何かと批判がつきもので、もちろん前澤氏の今回の仕掛けに関しても賛否両論はあるかもしれない。ただ、ZOZOチャンピオンシップしかり、前澤氏が注入してきたことは日本のゴルフ界における歴史の一端を築いていることは間違いない。

 「100万円」でプロアマに参加することは前澤氏と共に日本のゴルフ界の未来を築くことになるとも言えるのではないだろうか。


出島正登