また、JGAが主催するジュニアの全国大会「8地区強化指定選手チーム対抗戦」に特別協賛し、大会名称を「ユニクロ日本ジュニアゴルフカップ/8地区対抗戦」としてサポート。同大会で優秀な成績を収めたジュニアゴルファーには、一般財団法人ファーストリテイリング財団(FR財団)の支援のもと、世界を舞台に多くの経験を積むことができるよう、海外遠征プログラムへの参加機会も提供するという。

なぜ今、ユニクロはジュニアゴルファー育成に力を入れるのか?

 さらに「プロゴルファーを目指す日本のジュニアゴルファーに自身の経験を伝えたい」というアダム・スコット選手の思いをきっかけに2015年から開催してきた次世代育成イベント「Future Golfers Seminar with Adam Scott」をJGAとの共催イベントにすることで、より多くのジュニアゴルファーの参加とプログラムのさらなる充実を図るという。

 ユニクロはアダム・スコット選手との長年のパートナーシップによってゴルファーのサポートに力を入れてきた。一方で、ユニクログローバルブランドアンバサダー6名のうちプロゴルファーは1名のみ。それ以外はテニスのロジャー・フェデラー選手(スイス)、錦織圭選手(日本)、車いすテニスの国枝慎吾さん(日本)、ゴードン・リード選手(イギリス)、スノーボードの平野歩夢選手(日本)と、他のスポーツの選手やすでに世界で活躍している選手のサポートを積極的に行ってきた印象がある。このタイミングでジュニアゴルファーの育成活動に取り組むのはどんな背景があるのだろうか。

 その背景を紐解くには、ユニクロが2022年から推進している世界中の子どもたちを応援する次世代育成活動「UNIQLO Next Generation Development Program」について説明する必要がありそうだ。このプログラムは子どもたちが未来のリーダーに成長できるよう、ユニクログローバルブランドアンバサダーだけでなく世界の一流アスリートやさまざまな団体と連携し、スポーツ競技の指導と合わせてサステナビリティをテーマにした教室を開くなどして社会貢献を実践している。

世界企業ユニクロが日本のスポーツ育成に注力する理由

 今回はJGAとのパートナーシップ締結だが、ユニクロはすでに日本サッカー協会(JFA)や日本テニス協会(JTA)とも連携して次世代育成活動を行っている。「JFAユニクロサッカーキッズ」という6歳以下の未就学児を対象にした誰でも無料で参加できるサッカーフェスティバルを全国で開催しているし、国内最高峰のジュニアテニス大会「ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権」を2022年からタイトルスポンサーとして特別協賛している。

 多くの日本人にとってユニクロは普段着を取り扱っている日本生まれのアパレル企業というイメージだろうが、今や日本での売り上げはたかが知れており、世界での売り上げは3兆1038億円にも及ぶ。したがって今回のJGAとのパートナーシップ契約は、ナショナルチームにウェアを提供するから日本人ゴルファーにユニクロのゴルフウェアを着てほしいということではない。

 ナショナルチームへのウェア提供ということでいえば、ユニクロはスウェーデンのオリンピック・パラリンピックチームと2019年1月にパートナーシップ契約を締結し、東京2020夏季オリンピック、北京2022冬季オリンピック、パリ2024夏季オリンピックで公式ウェアを提供。さらに契約を2年延長し、ミラノ・コルティナダンペッツォ2026冬季オリンピックもスウェーデン代表選手団をサポートすることが決まっている。

 かねてから世界を見据えてビジネスを展開しているユニクロが2022年から次世代育成活動に力を入れ始めたということは、逆の見方をすれば従来の次世代育成活動に不満と危機感を抱いていたということかもしれない。

〜次世代の日本人ゴルファー育成へ〜 ユニクロ×JGAの期待

 世界を舞台に活躍する日本人アスリートは以前より多くなったかのようにも見えるが、特定の選手ばかりが注目を集め、真のリーダーシップを発揮できる選手が限られていることをユニクロは見抜いていたのだろう。

 また、日本という島国の中で体験できることと、世界に飛び出すことで体験できることの圧倒的な差を、できるだけ早いうちに多くの次世代に知ってもらいたいという思いもありそうだ。

 2015年にガレス・ジョーンズ氏(オーストラリア)がJGAナショナルチームのヘッドコーチに就任したことにより、日本のアマチュアゴルファーは世界に目を向ける選手が明らかに増えた。教え子の畑岡奈紗選手は日本ツアーを経験せずLPGAツアー(米国女子ツアー)に挑戦し、ツアー6勝を挙げている。古江彩佳選手も海を渡り、昨年は海外メジャーの「アムンディ・エビアン選手権」でメジャー制覇も成し遂げた。

 男子もナショナルチーム出身の久常涼選手や金谷拓実選手がPGAツアー(米国男子ツアー)への切符をもぎ取り、世界最高峰の舞台での活躍を目指している。彼らに続く選手の育成に今回のパートナーシップ締結が大きな貢献をしてくれることを期待したい。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。