文/田澤健一郎

 いよいよ今年もプロ野球がはじまる。となると、観戦の友に欠かせないのが選手名鑑。かつてに比べ、近年は選手名鑑の種類も増えてきた。というわけで、今回は数多ある選手名鑑のなかから、主要なものをピックアップ。長所や特徴を検証してみる。

①『2017プロ野球全選手カラー写真名鑑&パーフェクトDATA BOOK』

ベースボールマガジン社
A4版・907円(税別)

 まずは老舗ベースボールマガジン社の1冊。表紙で「圧倒的なデータ量!!」とうたっているように球団、選手ともに基本的に「足りない」と思うような資料・データはない。中心選手については、投手の球種別投球割合の他、2ストライク後の投球割合、すなわち決め球のデータや野手のゾーン別打率も左右投手別に図案化。その他、投手は「カモ」(本当にこの表記なのが地味に面白い)「苦手」の打者が記されていたり、打者も打球方向や打順別成績など細かな点まで触れている。

 全選手の誕生日がカレンダー式にまとめられた「Birthday Check」や実績をもとに編集部が独自判断した「適正ポジション」などユニークな項目も目を引く。ただし、ただ、いわゆるセイバーメトリクス的なデータは少ない。こうした点を見ると「野球マニア」というよりも「熱心な球団ファン」向きかもしれない。

 サイズは大きいので球場持参向きではない。自宅、テレビ観戦用としての購入がベター。

②『プロ野球カラー名鑑2017』

ベースボールマガジン社
A6版(文庫サイズ)・491円(税別)

『2017プロ野球全選手カラー写真名鑑&パーフェクトDATA BOOK』と同じベースボールマガジン社のハンディ・コンパクト系名鑑。サイズ的に球種・投球割合やゾーン別打撃成績など「詳細なデータ」はなく、ごく基本的な「選手情報」がまとめられている。

 表紙でうたっているようにアマチュア時代の主な経歴は異様に細かいが、ハンディ・コンパクト系でよく見る過去3年、5年の年度別成績がなく、昨季と通算の成績のみなのがちょっと寂しい。ただ、その分、選手の顔写真が大きく、他のハンディ・コンパクト系と比べればだが、文字も大きく読みやすい。その点では球場へ持っていきやすいハンディ・コンパクト系のなかでも、子どもや高齢者にも優しいと言えるかもしれない。

③『2017 スポニチ プロ野球選手名鑑』

毎日新聞社
A6版(文庫サイズ)・417円(税別)

 スポーツ新聞社が発行するハンディ・コンパクト系名鑑のなかでも定番的1冊。過去3年の成績と通算成績の表、詳しいアマチュア時代の戦績が特徴。一方で育成選手は顔写真がなく紹介は基本プロフィール程度の簡単な紹介になっている。

 首脳陣だけではなく球団スタッフの役職・氏名も掲載されているのはうれしい。

 珍しいのがNPBの記録員名簿も記載されていること(日本シリーズ、オールスター出場回数付き)。また、マスコット紹介がスペースは小さいものの原稿が奔放で楽しい。

④『2017 プロ野球選手写真名鑑』

日刊スポーツグラフ
A6版(文庫サイズ)・370円(税別)

 スポーツ新聞社のハンディ・コンパクト系名鑑において、スポニチの『2017 スポニチ プロ野球選手名鑑』と長くライバル的存在であった日刊スポーツの名鑑。スポニチ名鑑と比較すると成績表は昨季と通算のみだが、タイトルに「写真」とつけているように選手の写真が大きい。

 また、育成選手も支配下選手と同様の紹介スペース、内容となっている。各球団のホーム球場の詳細解説も地味にうれしい。巻末にある新人選手一覧リストは契約金と年俸付き。価格はスポニチ名鑑に比べ若干リーズナブル。

⑤『プロ野球選手カラー名鑑2017』

日刊スポーツ出版社
B5版・907円(税別)

 日刊スポーツの週刊誌・一般雑誌サイズ版名鑑。ハンディ・コンパクト系で犠牲になっていた(?)選手の詳細データが豊富。ただ、『2017プロ野球全選手カラー写真名鑑&パーフェクトDATA BOOK』と比較すると、ややデータ量は寂しい。

 が、よく見ると投手の円グラフは球種・投球別投球割合ではなくアウトの内訳。野手の円グラフは安打の傾向と個性的。簡単だがセイバーメトリクスの数値もある。

 またチーム紹介の欄外にある「16年一番多かったオーダー」「16年開幕10試合のローテーション」も豆知識的面白さがあるなど、変化球なネタで楽しませてくれる。その最たる部分が球場ガイドとマスコット名鑑。

 前者はアクセスなど画一的な球場情報ではなく、おすすめの「グルメ」「グッズ」「エリア」「イベント」「ファンクラブ情報」などを詳しく掲載。確かにアクセスやチケット価格などはファンならある程度承知済み。ビギナーでもネットですぐ確認できるだけに、こうした情報の方がありがたいかもしれない。

 後者はマスコットにアンケート調査を敢行。千葉ロッテ・マーくんの趣味が「アイドルDVD鑑賞」だったりと、ムダに細かな情報が手に入る(ホメてます)。

⑥『2017プロ野球オール写真選手名鑑』

日本スポーツ企画出版社
B5版・907円(税別)

 メジャーリーグ専門誌『Slugger』特別編集の選手名鑑とあってか、各選手のセイバーメトリクスの数値が豊富。マニアの間ではその充実度に定評があるシリーズである。実際、中心選手は、投手は球種ごとの初球率や空振り率、野手はUZRや初球スイング率といった非常に細かな数値までカバー。

 選手寸評のほかにデータ&セイバーメトリクスの寸評を独立して設けているのも熱心。選手個々のデータだけではなく、投手なら、救援空振り率ベスト・ワースト、打者であればP/PA上位・下位など、詳細なセイバーメトリクス数値のリーグ・ランキングも掲載されているので、「選手の結果・能力・数値」を知るには最適ではないかと思われる。

 その特徴は他の企画にも出ていて、たとえば球場ガイドも、各球場のパークファクター(球場ごとの特徴を数値化したもの)に寸評付き(「二塁打は例年少ない」「今年はマウンドを硬くした」など)。

 それに加えて選手寸評の情報も「球宴に選ばれた際はソフトバンクの工藤公康監督になぜかSkoop on SomebodyのCDをプレゼントした」(日本ハム・マーティン)など遊び心たっぷり。「野球マニア」にはたまらない1冊ではないだろうか。

⑦『2017プロ野球オール写真&データ選手名鑑』

日本スポーツ企画出版社
A6版(文庫サイズ)・463円(税別)

『Slugger』特別編集『2017プロ野球オール写真選手名鑑』のハンディ・コンパクト版と言っていい内容。

 本家(?)掲載データから小さなサイズに合わせて主要、必要なデータ抜き出した形だが、セイバーメトリクスの細かな数値よりも、投手は球種・ゾーン別投球割合、野手は打球方向、共通で得意・不得意な選手リストなど、球場で観戦する際、キャッチーに参考になりそうなデータが図案化で優先された格好だ。

 その分、他の名鑑との差別化が本家よりも小さくなった印象はあるが、ハンディ・コンパクト系と考えれば致し方ないだろう。

 ただ、セイバーメトリクス数値のリーグ・ランキングは残り、またセイバーメトリクスの指標解説もしっかり収録。遊び心ある選手寸評の情報も本家同様と、限られた条件の中で最大限、親切なつくりをしようという心意気は感じられる。

 一口に選手名鑑といっても、内容は様々ということがおわかりいただけただろうか。後編でも(良くも悪くも?)ディープな選手名鑑レビューをお届けする!

後編はこちら

BBCrix編集部