文/田澤健一郎

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⑧『2017プロ野球プレイヤーズファイル』

スクワッド
A6版(文庫サイズ)・444円(税別)

 野球専門誌『ベースボールタイムズ』のハンディ・コンパクト系選手名鑑。セイバーメトリクスを重視する本誌の特徴を活かし、一軍実績のある選手について、投手は球種別投球割合を、野手はゾーン別打撃成績を、それぞれ図案化している。

 選手の写真も大きく、育成選手もサイズこそ小さくなるが写真付きで掲載。

 が、データは同じハンディ・コンパクト系の『2017プロ野球オール写真&データ選手名鑑』に比べるとやや物足りず、スポーツ新聞社系と比べると歴代記録などの資料面がやや少ない印象。ただし、その分、『2017プロ野球オール写真&データ選手名鑑』よりも厚さは半分程度なので携帯性は優位。

 なんというか、強い特徴はないが、他のハンディ・コンパクト系選手名鑑のよいところを少しずつ取り入れているのが特徴といえば特徴か。唯一、独自の面白さがあるのが中心選手の選手寸評。遊び心ある細かな情報は『Slugger』系と同じだが、こちらは見出し付き。

「メッセンジャー殺し」(中日・工藤隆人)、「躍動の動物好き」(西武・豊田拓矢)、「元祖オオタニ」(千葉ロッテ・大谷智久)など、ときおり出てくる味のある見出しが楽しい。「マニアまではいかないが、贔屓チームを球場でちょっと詳しく語りたい(でもかさばる本はイヤ)」といったファンには最適かもしれない。

⑨『12球団全選手カラー百科名鑑2017』

廣済堂出版
A5版・980円(税別)

 全体を通してデザインがちょっと古い感じというか、昭和感がにじみ出ているのが、ある意味特徴。各チーム、球団歌、応援歌の歌詞が掲載されているのもそれを加速させているような……。

 だから、というわけではないだろうが、選手情報もセイバーメトリクスなどとは無縁で、むかしながらの基本的なプロフィール情報中心のつくり(ただし選手の出身地が都道府県だけではなく自治体まで記しているのは珍しい)。

 他の本がセイバーメトリクスの解説などを取り入れているなか、この本は「公式記録の計算の仕方とセーブ&ホールドの定義」として勝率や打率、防御率の計算式などタイトルにまつわる数値、成績を解説。一周回って逆に新鮮と言えなくもない。

 同様に資料面も「〝野球殿堂〟入りの人たち」などがあったり、「通算防御率30傑」「通算失点30位」「通算出場試合30傑」「通算打率30傑」「通算三塁打20傑」など、オールドな数字の通算成績がやたら詳しいなど一風変わったつくり(担当者の方はご年配?)。スポニチ版にあったNPB記録員名簿もある。

 ただ、一番の出色は「2017年TV・RADIO解説者ラインアップ」と「2017プロ野球アナウンサー紹介」。文字通り、解説者とアナウンサーの名鑑なのだが、単なるリストではなく基本的に写真付きで解説やアナウンスの特徴も詳しく解説。

「パ・リーグのCS中継は、見どころをコンパクトにまとめていた」(建山義紀)、「夜のお店でも関係者にしっかり取材している」(西山秀二)などここでしか読めない解説者評多数。

 アナウンサーに至っては「(NHKは)ここ数年大きく世代交代が進む。安定感ある田中崇裕と、久しぶりに東京へ戻った渡辺憲司のツートップといった様相」と、まるでチーム解説のような様相(笑)。これだけでも買う価値はあるかもしれない。

⑩『プロ野球2017パーフェクトデータ選手名鑑』

宝島社
A5版・790円(税別)

 オーソドックな選手名鑑。「パーフェクトデータ」とうたっているが、『Slugger』系、『2017プロ野球全選手カラー写真名鑑&パーフェクトDATA BOOK』、『2017プロ野球プレイヤーズファイル』などと比べると、選手能力の詳細データがあるわけではない。

 ただ、表紙の見出しにあるように全選手5年間の全成績&年表表については、他の選手名鑑の多くが最大でも過去3年の表であることを考えれば差別化と言えば差別化(ただし、年俸を除いた表ということでは後述の『プロ野球全12球団選手名鑑2017』も5年分掲載)。

 巻頭に選手インタビュー(阪神・糸井嘉男)にあるのも珍しいが、直接の購買意欲につながると言われれば疑問。

 解説者名鑑もリスト状でコメントも一言と『12球団全選手カラー百科名鑑2017』のクオリティには及ばない。

 ちょっと面白かったのは「野球英語略語集」。「Total Chances(守備機会)」、「Air Outs(フライアウト)」など、意図はわからないが(「日本人メジャーリーガー名鑑」があるから?)、けっこう細かな用語も掲載されている。しかし、これもわざわざ買う動機には……。

 ただ、最低限の情報量は押さえているうえに非ハンディ・コンパクト系のなかではリーズナブル。見やすければ過度な情報はなくてもOK、必要以上のお金もかけたくない、ということであればオススメ。

⑪『プロ野球2017選手データ名鑑』

宝島社
A6版(文庫サイズ)・360円(税別)

 同じ宝島社の『プロ野球2017パーフェクトデータ選手名鑑』のハンディ・コンパクト版という位置づけか……というか、本当にサイズダウンしただけで、内容はほぼ同じ。表紙の見出しも「文字や写真が大きくて見やすい」が抜けただけだ(まあ、サイズは小さくなったから)。よって特徴も『プロ野球2017パーフェクトデータ選手名鑑』と同じとなってしまう。

 同じ会社から大小、ふたつのサイズの選手名鑑が出る場合、「小」は「大」の要素を少なくしたり、というパターンが多いが、これはこれで珍しいというか、いさぎよい(笑)。そうなると、むしろ唯一の大きな違いである巻頭インタビューが阪神・糸井嘉男ではなく、ソフトバンク・和田毅なのが謎と言えば謎。ともあれ、ほぼ内容同じで違うサイズだけ。

 となると、大きい割にデータが寂しかった「大」に比べれば、こちらの方は小さい分、携帯性は高いので球場持参用という点では、異なるメリットはあるかもしれない。

⑫『プロ野球全12球団選手名鑑2017』

コスミック出版
A5版・861円(税別)

 こちらもオーソドックスな選手名鑑。選手紹介部分に取り立てて特徴はないが『プロ野球2017パーフェクトデータ選手名鑑』同様、各選手の成績は過去5年分掲載。ただし、年俸がない分、『プロ野球2017パーフェクトデータ選手名鑑』よりもやや情報量では劣る(というほどの違いでもないが)。

 育成・二軍・コーチ・審判員を顔写真で紹介していることを見出しでうたっているが、他の名鑑にないことではないので独自の魅力とは言いにくい。あえて言うなら「12球団スタジアム&マスコットガイド」が特徴になるが、スタジアムは基本情報中心でグッズやイベントまで解説した『プロ野球選手カラー名鑑2017』と比べるとやや寂しい。

 マスコットも『プロ野球選手カラー名鑑2017』同様アンケートを行っているが項目は少ない。それがコンパクトに1Pにまとまっているのが特徴かもしれないが、非ハンディ・コンパクト本であることを考えれば、もう少し読み応えがほしいところである。

 ただ、最大の特徴というか謎が日本ハム・岡大海の巻頭インタビュー。WHY? 何故? 岡に罪はないし、いい選手だと思うし、確かに前年優勝チームからの選出ではあるのだが、12球団の選手名鑑で唯一の選手インタビューに選ばれる選手かと言われると……?

 ただ、これが担当者の独断、趣味ということであれば、必要以上にビジネスや効率化、知名度などを問われる現在の出版業界で、それを押し通せたこと自体はとても羨ましく、素晴らしいことだとは思う(売り上げにつながるかはわからないが)。

⑬『プロ野球全12球団全選手完全名鑑2017』

コスミック出版
A6版(文庫サイズ)・343円(税別)

 同じコスミック出版の『プロ野球全12球団選手名鑑2017』のハンディ・コンパクト版という位置づけか……と前述の宝島社同様の書き出しにしたのは、こちらも宝島社のパターンと同様、サイズを小さくしただけで、内容はほぼ同じだから。というわけで「ほぼ内容同じで違うサイズだけ。

 となると、大きい割にデータが寂しかった「大」に比べれば、こちらの方は小さい分、携帯性は高いので球場持参用という点では、異なるメリットはあるかもしれない」と、まとめも同じになってしまう……。

 さらに「大」と巻頭インタビューの人選は異なるという点まで一緒。まるで示し合わせたかのようだ。ただ、こちらは「大」の日本ハム・岡大海というエモーショナルでアグレッシブな人選とは異なり、広島・新井貴浩と常識的と言えば常識的な人選。

 どうせならば堂林翔太、ジャクソンくらいパンクな人選でもよかったのに、という気がしなくもない。

⑭『2017 プロ野球選手ガイドブック』

中日新聞社
A6版(文庫サイズ)・200円(税別)

『2017 スポニチ プロ野球選手名鑑』(スポニチ)、『2017 プロ野球選手写真名鑑』(日刊スポーツ)同様、スポーツ新聞社系のハンディ・コンパクト系選手名鑑。

 と言いつつ、前出2社が12球団平等な選手名鑑なのに対し、こちらは中日の親会社だけあって、12球団の選手名鑑でありながら、中日ドラゴンズ推し全開なのが特徴。

 デザインはドラゴンズ・ブルーが基調、表紙は平田良介、大野雄大、大島洋平の主力選手トリオ、成績関係なく選手名鑑トップは中日。巻頭には中日スポーツ報道部長によるチームへの熱いゲキ。

 他球団の球場情報はほぼないが、ナゴヤドームについてはチケット案内から座席表まで掲載と懇切丁寧に紹介と中日色が「これでもか!」とちりばめられている。

 名鑑の情報などは特筆すべき点はなく、オーソドックスな内容だが、まさに中日ファンのための選手名鑑だ。あ、あと価格は税別200円(!)と今回、紹介する選手名鑑のなかでも最安値。なにはともあれまず一番安いものを、という方にもオススメです。

⑮『2017観戦ガイド プロ野球選手名鑑』

報知新聞社
B5版・400円(税別)

 中日新聞社『2017 プロ野球選手ガイドブック』同様、こちらは巨人の親会社、読売新聞のグループ会社である報知新聞社発行の選手名鑑。となればこちらも全開ジャイアンツ推しか、と思いきや、熱量は中日新聞社と大きく異なり、特別扱いは選手名鑑のトップが巨人になっているくらい。

 巨人スペシャル企画や東京ドームの詳細ガイドといったものもなく、あとは淡々と他球団の選手名鑑が続く。選手情報・データも特別、詳細ということもなく、ごくごくオーソドックスな内容。というか、新聞紙面の選手名鑑をそのまま本にしたようなつくりで、最低限の実用性はあるものの、正直、特徴らしい特徴はない。

 サイズはB5と非ハンディ・コンパクトだが、80ページと薄いので、持ち歩きの苦になるほどの重さはない。が、ビジネスバッグには問題ないだろうが、ボディバッグやポーチには入りにくいサイズなので球場に持って行くという意味では……。

 以上で全15冊のレビューは終了。各選手名鑑、それぞれ特徴があるので、自分の好み、必要な情報、プライスなどを考えて、自分にぴったりな1冊を選んでほしいのはもちろんだが、このレビューで気になった選手名鑑を買ってみるのも一興。毎年同じシリーズを買ってしまうことが多い選手名鑑だが、新しい発見があるかもしれない。


BBCrix編集部