成長著しいDeNAに対する高い評価が相次ぐ

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 昨年は、「横浜DeNAベイスターズ」となってから初のAクラス入りを果たしたDeNAが非常に高い評価を集め、予想者6人中4人が1位と予想した。

「若手が多く筒香嘉智を中心に勢いあり。またセンターラインも固まり、選手層も厚くなっている。巨人にFA移籍した山口俊の穴は、新外国人投手と若い投手による上積みで問題なし。昨年1年間で失敗や成功を重ねさまざまなことを学んだ知将・ラミレス監督の采配も、昨年よりも冴えると考える」(石塚隆氏)

「過去2年でホップ、ステップの段階を踏んだ感があり、今年は『ジャンプ』の年になるのではないかと予想しています。活きのいい若手が多く、その中心に『日本の4番』である筒香選手が鎮座している。今年は、横浜が盛り上がる予感がします」(菊地高弘氏)

「石田健大、井納翔一、今永昇太と3本柱が安定している」(中島大輔氏)

「どこが優勝してもおかしくない混セ。抜け出すのは筒香、ロペス、シリアコに一皮剥けた感の白崎浩之で構成される重量打線のDeNA。ラミレス監督を今年こそ胴上げしようとするチームの雰囲気が明るい」(永田遼太郎氏)

 確かに、昨年のクライマックスシリーズ(CS)で巨人を破り、マツダスタジアムに乗り込んでいった際の強さは「本物」に映った。若々しい球団のさらなる躍進が実現すれば、昨年に続いてセ・リーグは熱く盛り上がりそうだ。

 2位は広島とした予想者が4人。一定の評価を与えながらも、昨年のような抜け出し方は難しいのではないかという予想も見受けられた。

「抜けた戦力が黒田博樹だけなので大幅な戦力ダウンは考えられないが、若手が多く、経験値を鑑みれば2年連続して高いパフォーマンスを維持するのは難しい」(石塚氏)

「昨年は『神っている』ぶりが度を越えていた。今年は奇跡が起きる材料が不足しており、反動で下位低迷の覚悟も必要と読んだ」(キビタキビオ氏)

「薮田和樹、岡田明丈、大瀬良大地という投手たちが、黒田の抜けた穴を埋められるかがポイント」(中島氏)

「黒田の穴は大瀬良、岡田、九里亜蓮らの躍進で補えると予想。救援陣の層は昨年以上に厚く、機動力と長打力を備えた攻撃陣も健在。今年も優勝争いに十分絡む力を持つ」(服部健太郎氏)

昨年のBクラス勢、ヤクルトや阪神にも一定の評価

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 DeNAと広島を本命・対抗とする予想が多かったが、ヤクルトと阪神も含めて推すのがキビタ氏だ。

「ヤクルトは一昨年優勝しており、元々地力はある。投手力が課題だが、新人の星知弥をはじめ、若手でものになりそうな好投手が揃う気配も。また、最近の優勝チームは打線のつながりによる爆発的な連勝をどこかですることが必須となっており、強力打線のヤクルトと、それに次いでつながりの良いDeNAを対抗馬とした。阪神はフルシーズン戦えるだけの選手層の厚さが出てきたため、Aクラスの可能性が高いとみて3位に」

 確かに昨年、ソフトバンクや日本ハム、広島が派手に得点して勝利を重ねていく様は印象的だった。そうした野球を見せてくれそうなチームの候補としてヤクルトを挙げることには納得がいく。石塚氏も、「昨年はケガ人続出で戦える状態ではなかったが、その点さえ解消されれば一昨年のチャンピオンチームだけに、その戦力はあなどれない」と評価する。

 服部氏は若手中心で戦う阪神に期待を寄せる。

「投打ともに上がり目要素が多い。昨年7勝の藤浪晋太郎は今年13勝以上と予想。2年目の青柳晃洋もローテーション定着を果たし、2ケタ勝利も期待できる。昨年0勝の岩田稔の復調、また新人の小野泰己も戦力として計算できそう。先発陣の充実度はリーグ随一。野手はオフにチームを挙げて取り組んだ肉体改造でスケールアップした。北條史也、高山俊、原口文仁らも年間を通して数字を残すことができそうだ。梅野隆太郎の正捕手定着のメドが立ったのも大きい。スタメンに名を連ね続けるだけの身体の強さ技術を備えた新人内野手、糸原健斗の加入も大きなプラス要素」

 菊地氏も「ベテランとの競争に打ち勝ち、フレッシュな選手がスタメンに並んだとき、金本知憲監督の理想とするチームが見えてくるのかなと」と評価している。DeNA同様、若いチームの快進撃、ましてや人気球団の阪神によるものともなれば熱狂のシーズンとなりそうだ。

 ここまで名前が出ていないのが巨人である。昨年は2位、さらには積極的に補強に努めたにもかかわらず、Aクラスに入ると予想したのは6人中3人のみだった。ただ、各予想者のコメントを見ていくと一定の評価を与えているものもあった。

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「大型補強により溢れんばかりとなった戦力を使いこなせれば、ぶっちぎりで優勝する可能性あり」(キビタ氏)

「巨人は吉川光夫、桜井俊貴、カミネロが期待通りの活躍をできれば、上位も見えてくる。内海哲也、杉内俊哉の復活もカギを握りそう」(中島氏)

「若手が伸び悩み、新旧交代もうまく進んでいないことから停滞感が漂う。だが優勝争いに絡む可能性は十分。条件としては実績十分ながら昨年一軍登板ゼロに終わった杉内の復調、昨年即戦力の働きが期待されたドラフト1位、桜井のローテーション定着、主砲候補の岡本和真の覚醒を挙げる」(服部氏)

 Aクラスに挙げた予想者がひとりもいなかったのが中日。厳しい評価も多かったが、永田氏はダークホースとして中日を挙げ、「高橋周平が春季キャンプ終了後に二軍降格なるなど、若手の伸び悩みが深刻だが、若松駿太、大野雄大の二枚看板がふたりで30勝近く挙げれば昨年のようなことはないかも」とコメントした。

 ここ数年、戦力差がじわじわと縮まり大混戦時代を迎えているセ・リーグ。昨年は広島が突き抜けた戦いを見せたが、ライター陣は混戦が続くと見ているようだ。開幕からCSまで、多くのファンが熱狂し続けることができるシーズンとなることを期待したい。

(野球ライタープロフィール)
石塚隆
1972年、神奈川県生まれ。スポーツを中心に幅広い分野で活動するフリーランスライター。『週刊プレイボーイ』『sportiva』『Number』『ベースボールサミット』などに寄稿している。

菊地高弘
1982年生まれ、東京都生まれ。雑誌『野球小僧』『野球太郎』編集部勤務を経てフリーランスに。野球部研究家「菊地選手」としても活動し、著書に『野球部あるある』シリーズ(集英社/既刊3巻)がある。

キビタ キビオ
1971年、東京都生まれ。30歳を越えてから転職し、ライター&編集者として『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を長年勤め、選手のプレーをストップウオッチで計測して考察する「炎のストップウオッチャー」を連載。現在はフリーとして、雑誌の取材原稿から書籍構成、『球辞苑』(NHK-BS)ほかメディア出演など幅広く活動している。

中島大輔
1979年、埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材し『日経産業新聞』『週刊プレイボーイ』『スポーツナビ』『ベースボールチャンネル』などに寄稿。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)『中南米野球はなぜ強いのか』(亜紀書房)がある。

永田遼太郎
1972年、茨城県生まれ。雑誌編集を経て、2005年からフリーとして活動を開始する。いくつかのプロ野球球団のオフィシャルサイトの記者を経て現在に至る。月イチ野球トークイベント『新大久保ベースボールカフェ』の運営も行う。

服部健太郎
1967年、兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、商社勤務を経て、フリーの野球ライターに転身。関西を拠点に学童野球からプロ野球まで取材対象は幅広い。通算7年の米国在住経験を生かし、外国人選手、監督のインタビューも多数。


BBCrix編集部