文=勝田聡

今シーズンも投手陣の活躍が目立つ

 まず、セ・リーグは加藤拓也(広島)、濵口遙大(DeNA)のドラフト1位の即戦力がローテーションに入り勝ち星を挙げた。ドラフト2位の星知弥(ヤクルト)も、中継ぎデビューから先発ローテーションへと配置転換され日曜日のマウンドを守り続けている。

 パ・リーグに目を向けると、首位を快走する楽天は菅原秀(4位)、森原康平(5位)、高梨雄平(9位)と中位から下位指名の選手がブルペンを支え好調の一端を担っている。また、田中和基(3位)は初スタメンに抜擢された5月20日のロッテ戦で、延長12回に決勝本塁打を放つ活躍を見せた。

 ドラフトの目玉となった田中正義(ソフトバンク)は二軍戦での登板も無く心配ではあるが、山岡泰輔(オリックス)、佐々木千隼(ロッテ)といったドラフト1位組は先発としてローテーション入り。山岡は勝ち星に恵まれていないものの、最低限の仕事はできていると言えるだろう。

 このように、例年通り投手陣の活躍が目立つ今シーズンの新人選手だが、野手陣も負けていない。両リーグともに、内野の要とも言える遊撃手のポジションを奪った新人がいる。京田陽太(中日)と源田壮亮(西武)だ。

開幕スタメンから上位打線へと昇格したふたり

©共同通信

 日本大からドラフト2位で入団した京田は、7番・遊撃で開幕スタメンを掴むと2打席目で初安打をマーク。翌日の試合では出場機会がなかったものの、3戦目でも安打を放つなど出場5試合連続安打を放ちレギュラーを確保した。

 ドラフト前から、「守備は大学生ナンバーワン。打撃が課題」と評されていたが、課題とされていた打撃面でも及第点以上の成績を残している。それは、4月半ばからは1番、2番を任されるようになったことからも明確だ。この活躍で、昨シーズン堂上直倫が高卒10年目でようやく掴んだ中日の正遊撃手の座を奪い去っていった。

 源田は、社会人の強豪・トヨタ自動車からドラフト3位で入団。京田同様に、ドラフト前は「守備はプロでも通用する。課題は打撃」という評価が数多く見られていた。昨年の都市対抗野球を制覇、日本選手権ではベスト8と実績のあるトヨタ自動車とはいえ、社会人野球で9番打者として起用されていたことからも窺い知れる。

 しかし、そんな低評価を覆すかのようにオープン戦で11試合に出場し、打率.300(30打数9安打)と打撃面で結果を残すと守備の安定感も相まって辻発彦監督からも評価を獲得し開幕一軍、スタメンを確保した。社会人時代と同じく9番でスタートしたが、5試合目からは2番打者に抜擢され秋山翔吾、浅村栄斗と日本を代表する選手に挟まれながら役割を果たしている。また、開幕から秋山翔吾とともに同一ポジションでフル出場を続けていることからも信頼の厚さがわかる。

京田陽太 41試合 打率.269 1本 9打点 4盗塁
源田壮亮 40試合 打率.309 0本 15打点 11盗塁

野手による新人王の可能性

 このふたりの活躍により、両リーグともに遊撃手が新人王受賞する可能性も現実味を帯びてきた。ここで、1950年に制定された新人王の受賞に関して、各ポジション別に見てみる。

【セ・リーグ】
投手:38名
捕手:1名
一塁手:1名
二塁手:2名
三塁手:5名
遊撃手:5名
外野手:11名
合計:63名

【パ・リーグ】
投手:46名
捕手:1名
一塁手:2名
二塁手:2名
三塁手:3名
遊撃手:3名
外野手:4名
合計:61名

 両リーグともに投手が圧倒的に多い。特にパ・リーグは、1999年の松坂大輔(当時西武)以来、昨年の高梨裕稔(日本ハム)まで17年連続で投手が受賞している。(2000年は該当者なし)昨年は、茂木栄五郎(楽天)が新人遊撃手として高梨と得票を争ったが15票差で新人王を逃した。源田が栄冠に輝けば、西武の先輩でもある小関竜也が1998年に獲得して以来の野手としての受賞となる。

 セ・リーグは京田が受賞となると高山俊(阪神)から2年続けての野手が受賞となる。2000年・金城龍彦(横浜)、2001年・赤星憲広(阪神)、2005年・青木宣親(ヤクルト)、2006年・梵英心(広島)、2009年・松本哲也(巨人)、2010年・長野久義(巨人)と2年続けて野手が続く傾向もあるがジンクスは継続するだろうか。

遊撃手としての新人王は過去8人

 ふたりは野手というだけでなく、内野の要でもある遊撃手である。これまで遊撃手としての新人王は8名しかおらず、同年度にセ・パ両リーグで同時受賞した事例は過去を振り返っても存在しない。また、2000年以降に遊撃手で新人王を獲得したのは2006年・梵ただひとり。パ・リーグでは1997年の小坂誠(ロッテ)までさかのぼる。これは、チームの要となるセンターラインを新人から任され、それ相応の成績を残すことの難しさがよくわかる結果と言える。

 源田は、盗塁王争いでもトップを走っており新人王と同時受賞の可能性もある。過去、打撃タイトルと遊撃手における新人王の同時獲得した選手もおらず史上初の快挙に期待がかかる。

 この両選手に共通して言えるのは、アマチュア時代に守備の評価が高く打撃に課題があったこと。まずは、守備の安定感からレギュラーを奪い打撃も適応する。これが守備的ポジションと言われる遊撃手のレギュラー確保の近道だということを実証している。。

 今シーズン終了時には、史上初の両リーグ遊撃手による新人王受賞が話題となるかもしれない。
※数字はすべて5月21日終了時点

【遊撃手の新人王】
2006年:梵英心(広島)
打率.289/8本/36打点/13盗塁

1998年:小坂誠(ロッテ)
打率.261/1本/30打点/56盗塁

1992年:久慈照嘉(阪神)
打率.245/0本/21打点/22盗塁

1988年:立浪和義(中日)
打率.223/4本/18打点/22盗塁

1981年:石毛宏典(西武)
打率.311/21本/55打点/25盗塁

1954年:広岡達朗(巨人)
打率.314/15本/67打点/9盗塁

1953年:豊田泰光(西鉄)
打率.281/27本/59打点/25盗塁

1952年:佐藤孝夫(国鉄)
打率.261/14本/33打点/45盗塁


勝田聡

1979年、東京都生まれ。12球団ファンクラブに入会、選手名鑑を全種類購入し比較するなど野球好きが高じてフリーライターに。『野球太郎』等野球関連媒体へ寄稿。2016年から神宮球場のヤクルト戦は全試合現地観戦中。