近年は山田哲人、鈴木誠也のブレイクがあったものの……

 今年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック。侍ジャパンは6戦全勝で決勝ラウンドへ駒を進めたものの、準決勝で米国代表に1-2で敗れ2大会ぶりの優勝を逃した。だが、二次ラウンドまでは打撃戦を制す試合が多く、坂本勇人(巨人)、中田翔(日本ハム)、山田哲人(ヤクルト)らに加え、野手最年少の鈴木誠也(広島)など、右打者の活躍も光った。

 大会前は代表のチーム編成に伴う議論のなかで、メジャー抜きの投手陣、正捕手争いとともに、左右打者のバランスも懸念材料のひとつだった。アマチュア世代も含め、日本野球界は右投げ左打ちの野手が増加傾向にある。そのなかで“右の和製大砲不在”は以前からのテーマではあったが、昨年は広島・鈴木の台頭もあり一旦トーンダウンした。

 ところが今季ここまでの状況を見渡すと、前述の茂木栄五郎(楽天)ら右投げ左打ち選手の活躍は目立つものの、右打ちの新星は皆無に等しい。多くのチームがその役割を外国人に託し、両リーグの本塁打ランキングには、セ・リーグはエルドレッド(広島)とビシエド(中日)。パ・リーグはレアード(日本ハム)とデスパイネ(ソフトバンク)と、お馴染みである右の大砲が顔を揃えている。

巨人・岡本、ロッテ・井上、西武・山川らが伸び悩む

 キャンプ、オープン戦では、期待の大砲候補たちが話題を集めていた。その筆頭は巨人の岡本和真だ。マギー、陽岱鋼らの加入でレギュラー定着への道程はより険しくなったが、今季からは外野にも本格挑戦し、オープン戦で2本塁打を放つなどアピールに成功した。その勢いのまま「7番・左翼」で開幕スタメンの座を勝ち取ったものの、12試合で打率.227、0本塁打、2打点と結果を残せず、体調不良も重なり4月中旬に二軍降格を命じられた。

 ソフトバンクの高卒5年目・真砂勇介も、ブレイクが期待されたひとりだった。昨年オフ開催された「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」では、全9試合で4番を務め、決勝戦での特大弾を含む計4本塁打をマーク。大会ベストナイン選出とともにMVPにも輝き、同い年である鈴木に続くスター候補として注目された。しかし、開幕前の実戦でアピールに失敗し、オープン戦打率は.154で本塁打は0。一方で、1年後輩にあたる右投げ左打ちの上林誠知が飛躍し、こちらは“恐怖の8番”として一軍定着を果たした。

 長打が魅力のロッテ・井上晴哉と西武・山川穂高は、春先のチャンスを活かせなかった。井上は貧打にあえぐチームのなかで4番にも据わったが、ここまで26試合に出場し、打率.220、0本塁打、9打点と、伊東勤監督の期待に応えられずにいる。山川も春先にチャンスを与えられたが、こちらは打率.111、2本塁打、5打点と確実性を欠いた。

 その他、楽天の中川大志、日本ハムの横尾俊建は開幕一軍入りを果たしたが、チーム状況などとの兼ね合いもありその後ファーム落ち。オリックスの高卒4年目・奥浪鏡も右の大砲候補として期待された選手だったが、こちらは免許停止中の自動車事故という不祥事を起こしてしまい、球団から無期限の謹慎処分を課せられた。

ポテンシャル光る阪神勢、ヤクルト・廣岡、日ハム・高濱らに期待!

©共同通信

 一軍で唯一、若い右打者の成長を見られるのは、金本知憲監督が率いる阪神だろう。高卒7年目の中谷将大はチームトップタイの6本塁打を放ち、中谷のひとつ年上で25歳の原口文仁は、今季から一塁手として打線の中軸を担っている。高卒5年目の北條史也は開幕スタメンの座を勝ち取り、3選手とも好不調の波がありながらも、春先好調だったチームの原動力となった。

 阪神は彼ら以外にも、陽川尚将、江越大賀、そしてドラフト1位入団の大山悠輔と期待の大砲候補を多く抱える。メディア、ファンの目が多く集まる人気球団ではあるが、彼らのなかからひとりでも多く、球界の将来を担う右の大砲出現に期待したい。

 ファーム成績に目を移すと、“山田哲人二世”と称されるヤクルトの高卒2年目・廣岡大志が、イースタン・リーグ2位の7本塁打と非凡なパンチ力を見せている。日本ハムの高卒3年目・高濱祐仁は、打率.308、5本塁打、14打点と年々確実性が向上。楽天の高卒4年目・内田靖人は同リーグ3位タイの6本塁打を放っており、こちらもチームに不足している右の長距離砲として着実に成長している。

 時代はイチロー(マーリンズ)や青木宣親(アストロズ)、二刀流・大谷翔平(日本ハム)を筆頭とした右投げ左打ち全盛だが、そろそろ山田、鈴木に次ぐ、スター性と実力を秘めた右打者の出現に期待したい。

※数字はすべて5月27日終了時点


VictorySportsNews編集部