文=西尾典文

1位は三つどもえで大阪と神奈川の伝統校がしのぎを削る

まず今回は高校のランキングから発表するが、トップは大阪桐蔭(大阪)、横浜(神奈川)、東海大相模(神奈川)の三校が13人で並ぶ形となった。やはり目立つのは大阪桐蔭の充実ぶりだ。この10年間で春2回、夏3回の甲子園優勝を誇り、中田翔(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)、森友哉(西武)と三人の異なるタイプのドラフト1位を輩出しているのは、すごいの一言である。今年の選抜大会を制したメンバーも下級生を中心に逸材ぞろいで、今後もしばらく大阪桐蔭の時代が続くことが予想される。

横浜も甲子園の優勝は2006年春から遠ざかっているが、輩出している選手の充実ぶりは大阪桐蔭に負けていない。筒香嘉智(DeNA)、近藤健介(日本ハム)の打棒が両リーグを席巻し、昨年のドラフトでは柳裕也(中日)と藤平尚真(楽天)が1位指名されている。長年コンビでチームを支えた渡辺元智監督と小倉清一郎部長がチームを去った今後に注目だ。

横浜のライバルである東海大相模も菅野智之(巨人)、田中広輔(広島)の2人が侍ジャパンに選出されるまでに成長。小笠原慎之介(中日)も将来のエースとして期待されており、大田泰示(日本ハム)もようやく殻を破りつつあるのは頼もしい限りである。

プロ選手供給源となっている強豪3校

この三校に続くのが帝京(東東京:12人)、広陵(広島:11人)、仙台育英(宮城:10人)の3校。そして福岡の九州国際大付(9人)と福岡工大城東(8人)が続く形となった。帝京は2011年夏以降、甲子園から遠ざかっているものの、その育成力はまだまだ健在。以前は大型右腕のイメージが強かったが、最近では原口文仁(阪神)、石川亮(日本ハム)、郡拓也(日本ハム)と捕手が続けてプロ入りしているのが特徴的だ。

広陵は高校から直接プロ入りしたのは中田廉(広島)だけで、大学で大きく伸びる選手が多い。強豪の大学にとっては欠かせない選手供給源であるとも言えるだろう。仙台育英は売り出し中の上林誠知(ソフトバンク)、1位競合となった平沢大河(ロッテ)の2人が代表格。ともにパ・リーグを代表する野手に成長する可能性を十分に秘めている。

特筆すべき隠れた名門校

昨年の夏を最後に休部となったPL学園(大阪)は6人で11位タイとなった。過去10年に入団した選手では小窪哲也(広島)、吉川大幾(巨人)が一軍の戦力となっているが、既に退団した選手も3人いて、かつての輝きは失われている。今年のアマチュア球界には前野幹博(ヤマハ)、中山悠輝(東京ガス)というPL学園出身のドラフト候補がいるが、今後そのような選手が出てくることがなくなることを考えると、やはり休部は残念でならない。

公立高校の上位では静岡(静岡)と市立柏(千葉)が5人でトップ。静岡は甲子園常連校だが、市立柏は過去に一度(1989年センバツ大会)出場しただけである。スポーツ科学科があるとはいえ、レギュラークラスの清田育宏(ロッテ)や将来のレギュラー候補として期待されている船越涼太(広島)と宇佐見真吾(巨人)を輩出していることは称賛に値する。

近年甲子園出場の少ない工業高校、商業高校では大分商(大分)が4人でトップ。現在売り出し中の源田壮亮(西武)も大分商出身であり、明治大2年の森下暢仁も大学日本代表に選ばれるなど再来年の上位候補と言われている。野球部専用のグラウンドはなく、県内でも近隣の選手しか進学しない中でこの数字は見事と言えるだろう。

高校の所在地県別のランキング上位は現役選手と変わらない顔ぶれとなった。ただ、意外だったのが2位の大阪の30校という数字である。学校としての成績は大阪桐蔭、履正社の完全な2強となっているが、これだけ多くの学校がプロ選手を輩出しているところに大阪の野球の裾野の広さを感じずにはいられない。甲子園だけでなく、プロの世界でも大阪の球児が席巻する時代がしばらく続くことになるだろう。

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西尾典文

1979年、愛知県生まれ。大学まで野球部で選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。