文=西尾典文

現在最も甲子園に出場しやすい高校

 07年春の選抜から今年の選抜大会までの21大会で甲子園に出場した高校は、21世紀枠での出場を含めて全部で344校に上る。昨年度の高野連加盟校数が4,014校であるため、約8.6%の高校が出場していることになる。

 そして、この10年間で全国最多の出場回数を誇るのが聖光学院(福島)だ。夏の福島県大会は07年から10連覇中で、08年夏から13年秋にかけて県内で95連勝も記録している。ちなみに調査対象の期間で甲子園に出場した福島県の高校は13年春の選抜に21世紀枠で出場したいわき海星のみ。県内では完全に1強の状態と言えるだろう。

 聖光学院に続く12回の出場を誇るのが明徳義塾(高知)だ。05年から5年続けて夏の甲子園出場を逃すなど苦しんだ時期はあったものの、10年からは再び持ち直し夏の県大会7連覇を達成している。西日本では間違いなく最も甲子園に近い高校だ。

 続く3位タイの11回出場は大阪桐蔭(大阪)と智弁和歌山(和歌山)の2校。そして5位タイの10回出場で八戸学院光星(青森)、仙台育英(宮城)、天理(奈良)、今治西(愛媛)の4校が続いている。上位に名を連ねる高校の地域を見ると東北が3校、近畿が3校、四国が2校と、偏りのある内訳になっているのも興味深いところである。

現在甲子園で最も勝てる高校

©共同通信

 続いて甲子園での勝利数だが、32勝の大阪桐蔭がトップとなった。過去10年間で春1度、夏3度の甲子園優勝を誇っており、まさに現在高校野球界で最強の名に相応しい実績と言える。

 2位には19勝で八戸学院光星が入った。優勝こそないものの、11年夏からは3季連続で準優勝を果たしている。昨年夏の甲子園2回戦で対戦した東邦(愛知)に球場全体の応援が集まったのも、野球留学だけでなくその実力を認められた証拠とも言える。

 続く3位タイは17勝の聖光学院と敦賀気比(福井)。敦賀気比は15年春には北陸に初の優勝旗をもたらした。17勝中の15勝を過去5年間でマークしており、まさに北信越の覇者と呼べる存在となっている。

 続く16勝で並ぶのが仙台育英、作新学院(栃木)、常葉菊川(静岡)の3校。面白いのが作新学院で、16勝中15勝を夏にマークしている。これは夏に限れば大阪桐蔭の19勝に続く2位の数字で、現在の“夏将軍”と呼べる実績である。

 14勝で9位タイにランクインした東海大相模(神奈川)も面白い。対象期間中の出場回数は5回にとどまっているものの、優勝2回、準優勝1回を誇っているのだ。2度の初戦敗退はあるものの、甲子園での強さは目を見張るものがある。

現在甲子園に強い都道府県

 過去10年間の甲子園での勝利数を都道府県別(北海道は南北、東京は東西に分けてカウント)に見てみると、最も多いのは49勝の大阪となる。大阪桐蔭の32勝はもちろんだが、近年強さを発揮している履正社が12勝をマークしているのも大きい。

 続く2位は31勝で沖縄となった。08年春に沖縄尚学が優勝、10年には興南が春夏連覇を達成しており、現在ではすっかり強豪県となった印象が強い。

 3位は先述した東海大相模と横浜が牽引する神奈川で30勝。4位タイには青森、東東京、愛知、兵庫が25勝で続いている。

 こうして改めてデータで見てみると、かつては初戦敗退の常連だった東北と沖縄のチームがいかに躍進しているかがわかる結果となった。八戸学院光星、聖光学院、沖縄尚学、興南などはその代表と言える。ただ一方で大阪、神奈川、愛知、兵庫といった地域がまだまだ強さを誇っているのも事実である。今後この勢力図がどうなっていくのか。今後も高校野球から目を離すことはできない。

■甲子園出場回数トップ10

1位 聖光学院(福島)  :14回(春4回・夏10回)
2位 明徳義塾(高知)  :12回(春5回・夏 7回)
3位 大阪桐蔭(大阪)  :11回(春7回・夏 4回)
3位 智弁和歌山(和歌山):11回(春4回・夏 7回)
5位 八戸学院光星(青森):10回(春6回・夏 4回)
5位 仙台育英(宮城)  :10回(春4回・夏 6回)
5位 天理(奈良)    :10回(春6回・夏 4回)
5位 今治西(愛媛)   :10回(春6回・夏 4回)
9位 常総学院(茨城)  : 9回(春3回・夏 6回)
9位 作新学院(栃木)  : 9回(春2回・夏 7回)
9位 敦賀気比(福井)  : 9回(春6回・夏 3回)
9位 龍谷大平安(京都) : 9回(春5回・夏 4回)
9位 智弁学園(奈良)  : 9回(春4回・夏 5回)

■甲子園勝利数トップ10

1位 大阪桐蔭(大阪)  :32勝(春13勝・夏19勝)
2位 八戸学院光星(青森):19勝(春 8勝・夏11勝)
3位 聖光学院(福島)  :17勝(春 3勝・夏14勝)
3位 敦賀気比(福井)  :17勝(春12勝・夏 5勝)
5位 仙台育英(宮城)  :16勝(春 3勝・夏13勝)
5位 作新学院(栃木)  :16勝(春 1勝・夏15勝)
5位 常葉菊川(宮城)  :16勝(春 8勝・夏 8勝)
8位 明徳義塾(高知)  :15勝(春 4勝・夏11勝)
9位 日大三(西東京)  :14勝(春 7勝・夏 7勝)
9位 東海大相模(神奈川):14勝(春 5勝・夏 9勝)
9位 興南(沖縄)    :14勝(春 5勝・夏 9勝)

■都道府県別甲子園勝利数トップ10

1位 大阪 :49勝(春24勝・夏25勝)
2位 沖縄 :31勝(春12勝・夏19勝)
3位 神奈川:30勝(春 7勝・夏23勝)
4位 青森 :25勝(春 8勝・夏17勝)
4位 東東京:25勝(春 9勝・夏16勝)
4位 愛知 :25勝(春11勝・夏14勝)
4位 兵庫 :25勝(春12勝・夏13勝)
8位 西東京:24勝(春10勝・夏14勝)
9位 栃木 :23勝(春 6勝・夏17勝)
9位 埼玉 :23勝(春15勝・夏 8勝)


西尾典文

1979年、愛知県生まれ。大学まで野球部で選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。