©荒川祐史

巨人の若手からは、貪欲さが見えない

――まず、今シーズンのプロ野球の話を伺います。巨人が、チーム史上初めてクライマックスシリーズ出場を逃してしまいました、球団OBとしての率直な気持ちを。
 
鈴木 残念です。今年は大型補強をしましたが、FA選手の出遅れもあって、あまりメンバーを固定できないままでした。若手にもチャンスがあったんですけど、貪欲さが見えなかったですね。言い方は変ですけど、「どうせ結果を出しても、(彼らが)帰ってきたら出られないんでしょ」という雰囲気はあったと思います。

でも、最終的にはもちろん実力があるものが選ばれるわけですから。勝負に対するこだわり、「1軍にいたい」っていう気持ちがあまり見えない。なんだか、あっさりしているように感じます。
 
もちろん、実際はそうじゃないと思うんです。ただ、そう見えてしまう。広島は、気持ちが見えますよね。そこの違いも大きい。あれだけチャンスをもらっているのに、結果を出せないことをどう考えているのか、ってことは感じました。そして、若手が育たないのであればベテランに頼らざるを得ないわけです。
 
――今シーズン、蓋を開けてみたらそういうイメージが確かに強いですね。
 
鈴木 巨人の一番難しいところは、勝たなきゃいけないし、育てなきゃいけないこと。プロの厳しい世界にとって、(育成と結果の)両立ってすごく難しい。ベテランはプレッシャーを感じてやっています。それを、若手も感じられたか。そこがすごく大事なところかと。ここからだと思うんですよね、巨人が変わっていくためには。若い選手の台頭があるかないか。

まずは(自分たちの)位置をしっかり理解すること。広島と戦っても、すごく差を感じていると思います。そこから上に行くためには、当然モチベーションが必要だと思いますから、発奮材料にしてもらいたいなと思います。

――とはいえ2、3シーズン前は巨人にも圧倒的な強さがあったと思います。こんなに変わるものなのですか。

鈴木 それだけ、広島が力をつけてきたんでしょう。鈴木誠也がケガしたって、代わりはいっぱいいる。前田健太がメジャーに移籍して黒田博樹さんが引退しても、若い選手が台頭してくる。僕らのなかでは、広島に投手王国ってイメージはなかったんです。今じゃ10勝ピッチャーが3、4人いて投手王国になってきています。ドラフトの戦略も含め。

――広島は、若く可能性のあるピッチャーをやたら取るようになったっていうのが、印象的には10年前ぐらいからあります。もう一度投手王国を、という意図があったんでしょうね。

鈴木 やっていると思います。ですから、ドラフトはすごく大事な位置づけになってきます。ここのポジションが今足りないから、かぶらないような選手をドラフトで取る。そういう戦略が必要だと思うんですね。

――現有戦力だけでなく、長期的な視点で見た戦略の両方が必要と。

鈴木 そうです。そういったこともトータルにやっていかないといけない。選手の力だけでなく、フロントも含め。目先の勝利ではなく、長いスパンのなかでと個人的には思うんですけど、世論とは差があるかな。ファンは負けたら離れていくかもしれない。「こんな弱い巨人は見たくない」と。

――本当に強い巨人を作るための下準備が、必要ですよね。

鈴木 そうです。(そういう時期が)絶対ないと、ずっと同じ感じになる可能性もありますから。

©荒川祐史

梵英心のような選手が、コーチをやるべきだと思います

――そういう意味で、連覇した広島の強さは際立ちます。

鈴木 突き抜けましたね。付け入るスキがない。投手陣にしてみても先発、中継ぎ、ロングリリーフとメンツがそろっている。中田廉や一岡竜司もいて、ある程度盤石感があります。そして、センターラインが強い。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、ベテランの石原慶幸……新井貴浩さんという大黒柱がいて石原もいて、その中間に田中や30代がいて、若い鈴木誠也や西川龍馬がいる。すごくバランスがいい。外国人もエルドレッド、バティスタ、メヒアとそろっている。スピード野球だけど、一発を打てる選手もいる。負ける要素があまりないですね。

――今シーズンは、逆転勝利が多かったですね。

鈴木 相手だけでなく、チーム内のライバルたちとも戦っているんですよね。一つ一つのことを、気持ちを出している。代わりがきたら結果も出す。準備もしっかりしているんだろうなと。

――技術的な部分でいうと、鈴木尚広さんからみて広島のすごさはどこにあると思われますか? 黒田さんのプロ意識や、とにかくバットを振る部分がフィーチャーされますが。

鈴木 つなぐ意識の高さ、そして状況に応じたバッティングができることですね。足で攻撃のバリエーションができる。打つだけではなく、その部分で非常に厚みがある。さらに、ここぞというときの集中力がチーム全体で違います。チーム全体で身を乗り出していく、そういう意識がチーム全体に広がっていく。一方で、巨人を見てくださいよ。

――なんだか、個人事業主が集まっているという感じに見えます。

鈴木 そんな感じに見えます。もちろん、チームとはいえ個人事業主の集まりなんですけど。

――広島は、チーム全体で一体感をうまくだそうと、選手もコーチ陣もやっているってことですよね。

鈴木 仲がいいっていう感じじゃない。ただ、まとまっている。その中でも競争があるわけですからね。

――梵英心選手も、あれだけ貢献した選手ですが、今年は1軍で出ることすらなかった。でも、チームを離れても野球は続けたいと。田中広輔が台頭しなかったら、ああいう風にはなってなかったかもしれないですよね。

鈴木 梵くんの性格だったら、他球団へ行くだろうなとは思っていました。このまま終われないっていうか。1試合も出られなくて終わるっていうのは、自分の野球観にとってないんじゃないですか。

――すごいストイックな選手じゃないですか、梵選手って。ああいう選手をとることによって、プラス面が絶対あるだろうなと。

鈴木 若い選手は見習うと思います。僕もいい先輩はまねしようと思いますもん。小笠原さんにしても小久保さんにしても高橋由伸さんにしても、結果を出しているし、行き着くまでの姿勢に感じるものがありました。

当然選手からの信頼もあるし、組織からの信頼も厚い。「トップに立つ人って、こういう風なんだな」と感じていました。広島でいえば新井さんですね。ベテランって、両極端だと思うんです。真似したい人と、したくないなと思う人と。梵くんとかはしっかり自分を持っていて、経験値も高い。結果を出すだけでなく、若手の意識の高さを上げる意味では(彼を獲得するのは)いいことかもしれません。むしろ、梵くんのような選手がコーチをやるべきだと思います。

©荒川祐史

CSでは横浜の躍進に期待したい

――最後に、クライマックスシリーズの予想をお願いします。

鈴木 期待しているのは、横浜DeNAベイスターズです。3位が掛かった状況の中で、去年の経験を活かして接戦をしっかりものにした。いまチームの状態として、広島、阪神、横浜の3チームで一番いいのは横浜だと思います。短期決戦のなかでの強さは、横浜が一番あるのかなと。もちろん、トータルに考えると広島でしょう。実績や付け入るスキのなさという部分で。ただ、この流れでいったら、もしかしたら横浜があるんじゃないかと。

――去年の広島は、クライマックスシリーズが始まってから初めての優勝でした。新鮮味があり、プレッシャーもそこまで感じていなかったと思います。比べると今年は、去年も勝っているし、ある種「勝って当たり前」みたいなところもありますよね。それは、プレッシャーじゃないかなと。阪神も、本当に最後のところでいい状態のパフォーマンスが出せれば……。

鈴木 ただ、阪神はピッチャーがいないのが痛いですね。中継ぎは60試合登板している5人がいて、藤川球児も51試合投げている。先発にメッセンジャーが戻ってきたら、もう少し違うと思います。だっていま、(計算できるのは)能見篤史と秋山拓巳ぐらいですよね。

――確かに短期決戦の場合、ピッチャーが良かったらその2人を2度まわせばいい、という計算が立ちます。

鈴木 あとは阪神もベテラン頼りなんで、その雰囲気がどうなのかなって。トータルでいえば広島ですけど、短期決戦の面白さでいったら横浜。流れに乗ったらドーンといく。連勝もあるけど連敗もある、そういうチカラを持ってきているんで面白いかなと。ピッチャーも今永昇太、濱口遥大、さらに石田健大や井納翔一もいる。広島に比べたら落ちますけど、そこを打線でカバーできる爆発力があるのが横浜かなと。

――阪神は爆発力がないですよね。

鈴木 ないですね。

――横浜の方は、去年の成功体験もありますから。今年は、去年以上の成績をというところも含め。

鈴木 あとはラミレス監督、ラミちゃんは策士なんで。マネージメント能力がすごくあるので、監督としても横浜は面白いなと。

――短期決戦のところでそのマネージメント能力が生きてくる可能性ありますよね。そういう意味でいった一体感みたいなものをDeNA横浜にも感じるじゃないですか。

鈴木 ありますね。だから阪神はないかな。今の勢いからすると。

――貴重なお話をありがとうございました。クライマックスシリーズの展開が楽しみです。

<了>

カープ女子の、ガチすぎる愛情。優勝の1日を振り返るなぜこの時期に発表? 巨人・澤村「施術ミス」への違和感11連敗の巨人、打開のカギは組織づくりにあり。池田純コラム4年で3度優勝のソフトバンクホークス、常勝球団を支える経営サイクル清宮、プロ志望表明。歴代のドラフト指名競合選手を振り返る。
VictorySportsNews編集部

著者プロフィール VictorySportsNews編集部