2種類ある球団付きトレーナー

「ここ最近で一番気になる、メディアの方々との話題にも多くのぼった、自分としても違和感を抱いたニュースでした」

 球団社長という立場で現場に関わっていた横浜DeNAベイスターズ前社長の池田純氏は、澤村投手をめぐる報道についてこんな風に語っています。

 今シーズンは、シーズン前のキャンプから不調が伝えられ、登板機会のなかった澤村投手。9月1日付けで一軍登録を果たしたものの、4日には登録抹消。周辺からは「イップス」の可能性も指摘されていましたが、球団が発表したのは「施術ミスの可能性が高い」という驚きの不調原因でした。

「メディアや関係者の方とお話ししても、みなさん驚かれていますよね。『何なんだろうね、このニュースは?』という話を何度となくしました」

 一報に触れて、「そんなことが起きるんだ?」と不思議に思った方も多いかもしれませんが、プロ野球の現場に近い池田氏の周辺でも、このニュースは驚きを持って迎えられているとのこと。今回、図らずも渦中の人になってしまった、もう一方の主役、球団トレーナー。池田氏によると、プロ野球の球団付きトレーナーには大きく分けて2種類のタイプがあるということです。

「試合前のウォーミングアップなどを担当するトレーナーと、試合後などに選手の体をケアするトレーナー。球団に所属しているトレーナーは大きく分けてこの2つのタイプがあります。前者は、わかりやすく言うと『笛を吹くトレーナー』。みなさんも、試合前のウォーミングアップで笛を吹いて選手を走らせたりするトレーナーを目にしたことがあるでしょう。コンディショニングを担当するトレーナーですね。後者はグラウンドに出てくることはありませんが、練習や試合後に選手にマッサージをしたり、今回問題になっている鍼を打ったりするような施術を行うトレーナーです」

池田氏の抱いた大きな違和感とは?

 プロ野球選手にとって自らの肉体はまさに商売道具。そのケアには人一倍気を遣うところですが、自分専用のいわゆる外部トレーナーをつけている選手はごく一部。池田氏によると、「基本的に施術を行うようなトレーナールームには外部トレーナーは入れない球団が多い」と言います。

「当然、信頼しているトレーナー以外には体を触らせない選手もいますね。年俸1億を超えるような、特に投手ですよね。それこそ澤村投手クラスの選手になれば個人トレーナーをつけていることも多々あります。しかし、いくら選手がそのトレーナーを信頼していても、球場の中に入れて、球団管理の関係者のみのスペースすべてに帯同させるのは難しいんですよ。だから試合直後のケアなんかは球団トレーナーに委ねることでバランスを取ったりする選手もいます」

 選手にとって試合直後のマッサージや筋肉の張りを取る施術は重要な要素。元球団職員として働いていた、マッサージのうまい、鍼のうまいトレーナーが球団とのなにがしかの理由などにより、球団から離れて球場近くに独立開業して、選手がそこに通うというケースもあると池田氏は話します。

「私もどういう施術しているのかなと気になって、通って試したことがあるんです。筋肉量も多くて、さらにそれを瞬間的に酷使するプロ野球選手たちの体は、揉んでも揉んでも指が入ってかないことも多いそうです。そこで、ただ揉みほぐすだけでなく、鍼を打つとか、そういう“効果”や“効果がある感”を重視した施術も多く行うことになるんです」

 自身は「鍼治療は苦手」と語る池田氏ですが、今回の一件によって鍼治療を含めたトレーナールームで行われる「施術」が考え直されていくきっかけになればと言います。

「原因が何なのかという憶測がいろいろ飛び交っていますが、澤村投手が2月に違和感を訴え、半年以上が経って今このニュースが出ていることを考えると、これはもうかなりの責任を球団として負いますっていうことですよね。社長も出てきて謝罪しているわけですから」

 オープン戦では初球が頭部デットボールになるなど、キャンプ中に右肩の違和感を理由に離脱してしまった澤村投手には「イップスでは?」という声も聞かれていました。

「何でもかんでもイップスで片付けようとするのは簡単ですよね。施術をして腕が上がらない、動かなくなったというのは以前からわかっていたはず。それがこのタイミングで発表ということに大きな違和感があります。どんな施術を行うにしても、事前にきちんとした説明を行って、どんなリスクがあるのかを選手が知った上で同意して行う。インフォームドコンセントが重要なんだと思います」

 現時点で、澤村投手のケガの状況や復帰に向けた見通しは発表されていません。

「もし投げられなくなった場合、セカンドキャリアとして球団職員や、その他諸々ジャイアンツが保証していくことになるでしょうね。今シーズンオフの年俸交渉もどうなるのか。そのあたりを見越して、このタイミングでニュースにしたんでしょうね」

 体が資本のプロ野球選手の管理の徹底、インフォームドコンセントを徹底することが、結果的に選手の利益を守ること、球団側のリスクマネジメントにつながるのではないでしょうか。

<了>

取材協力:文化放送
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VictorySportsNews編集部

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