文=池田敏明
国内サッカースタジアムは100〜150億円ほど
2020年東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設費は、1490億円かかるという。
2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区)の建設で、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は5日、大成建設などの共同企業体(JV)と約1490億円の工事契約を4日に締結したと発表した。契約額は9月30日に政府の関係閣僚会議で了承されていた。工事費とは別に、工事が計画通りに進んでいるかをチェックする監理費など約14億9千万円の契約も結んだ。【東京五輪】新国立工事、JVと1490億円で契約 維持費試算は年24億円 - 産経ニュース
建設費は当初の1300億円から一時は3000億円超にまで膨らんだが、その後、デザインも含めて計画が白紙撤回され、練り直された経緯を持つ。
スタジアムの建設や改修には、どれほどの金額がかかるものなのだろうか。国内外のいくつかのスタジアムと比較してみよう。
2016年2月に会場となったガンバ大阪の本拠地、市立吹田サッカースタジアムは、建設費の大半が寄付によって賄われたスタジアムとしても有名だ。その建設費は、約140億8500万円。収容人数4万人で国際Aマッチ開催の基準を満たしており、観客席はすべて屋根で覆われ、その屋根が免震構造を備えているため安全性も高い。スタジアムとしての用途や規模、設備面も異なるため「新国立競技場の10分の1」という単純比較はできないが、これだけの費用があればサッカー専用スタジアムは建設できる、という一つのモデルケースになるだろう。
今年3月に開場する予定のJリーグ、ギラヴァンツ北九州の新本拠地、北九州スタジアム(2月1日以降はミクニワールドスタジアム北九州)の建設費は、開場後15年間の維持管理費、運営費を含めて約115億3800万円。当初は107億円超だったが、ゴール裏スタンドに屋根を架けるために8億円あまりの予算が追加され、この金額となった。こちらは1万5000人収容。市立吹田サッカースタジアムとの間で建物としての規模と建設費を比較すると、何となく適正価格が見えてくるような気がする。
“本場”でも500〜1000億円前後が相場か
©Getty Images 野球場の場合はどうだろうか。NPB12球団の1軍フランチャイズの中で、最も新しい球場は広島東洋カープのMAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島。2009年4月1日に開場となったこのスタジアムの建設費は約110億円だ。本場アメリカでは2012年3月5日に開場となったマイアミ・マーリンズの本拠地マーリンズ・パークが最も新しいボールパークだが、こちらは開閉式の屋根を持ちながら建設費5億1500万ドル(約602億7600万円)となっている。
一方、ヨーロッパのサッカークラブは現在、スタジアムの改修や新築を予定しているところが多い。レアル・マドリーのサンティアゴ・ベルナベウ、バルセロナのカンプ・ノウ、チェルシーのスタンフォード・ブリッジなどは改修を、トッテナムやローマ、ミランなどは新スタジアムの建設計画を進めている。費用はスタジアムによって違うが、改修の場合は500億円前後、新築の場合は1000億円前後となっている。ただし、これらのスタジアムの場合、ショッピングモールやホテルが併設された複合施設であることが多く、そのため日本のスタジアムよりも費用がかかっていると考えられる。
ちなみに、カンプ・ノウの改修工事は日本の建築設計事務所『日建設計』が手掛けることが決定している。
スペインの世界的サッカークラブ、FCバルセロナの本拠地「カンプノウ」の改修を、日建設計のチームが手掛けることが2016年3月8日、同クラブから発表された。全世界に1億人のファンがいるとも言われる巨大クラブが総額6億ユーロ(約750億円)を投じる大プロジェクトだ。全文表示 | 日建設計、「江戸の敵をスペインで討った」? 「新国立」敗退をFCバルセロナ「カンプノウ」でリベンジ : J-CASTニュース
同社は新国立競技場の設計に携わる予定だったが、建設計画の白紙撤回により参加を断念した。そしてその半年後、世界的人気を誇るバルセロナの本拠地の改修に携わることが発表された。改修費用総額で約750億円のうち、スタジアムの改修費用は約430億円と見積もられている。
新カンプ・ノウの改修が完了するのは21-22シーズンを予定している。東京五輪がとっくに終了し、新国立競技場に対する評価が出ている頃だ。それぞれのスタジアムは、どのような評価を下されることになるのだろうか。