NBAファイナルのPVイベントで来日「唯一無二の体験」
NBAの2024・2025年シーズンのファイナルは、オクラホマシティ・サンダーがインディアナ・ペイサーズを破って優勝し、幕を終えた。第7戦までもつれた激闘となり、毎試合、アメリカのNBAファンだけでなく世界中、日本のNBAファンも熱狂していた。今回のファイナルでは、日本においてファンたちが一緒になって楽しむためのパブリックビューイングが、第3戦6月12日、第4戦6月14日に東京・丸の内で開催された。
そこにゲストとして登壇したのが、レバンガ北海道への入団が決まった日本代表・富永啓生とジャレットだった。ジャレットは6月12日の早朝にアメリカから日本に到着し、朝から行われていたイベントに登場するというハードなスケジュールだったが、会場に集まった日本のファンたちとの交流を楽しみ、14日も同イベントにも再び登壇してファンを喜ばせた。穏やかな雰囲気をまとい、着飾らないジャレットに多くの人が魅了されていた。
13日に都内のホテルの一角でインタビューを受けてくれたジャレットは、同日既に多くのメディアの個別取材対応をして大忙しだったが、疲れを見せずに約15分笑顔で話してくれた。
「パブリックビューイングは非常に素晴らしいイベントでした。私にとって唯一無二の体験でとても良かったです。アメリカでこういったイベントに参加したことがなく、映画館という特別な環境でバスケットボールを見るというのはすごく楽しかったです。ファンも熱狂的で素晴らしく、チームを応援することもありましたし、試合に没頭しているシーンもありました。そういった点が本当に良かったです」
ジャレット自身は、カンファレンス・セミファイナルでペイサーズに敗れて悔しい思いをしたが、体を張ったリバウンドや得点など中心選手の1人として活躍を見せた。プレーオフやレギュラーシーズンでのチームについて、悔しさはありつつも素晴らしいシーズンだったという。
「シーズン全体的に良く、素晴らしいシーズンでした。レギュラーシーズンとプレーオフの第2ラウンドまでは、私たちは多くの連勝を重ねました。素晴らしいチームにするためにできることを見つけ、皆が成長しました。もちろんプレーオフの途中で終わってしまいましたが、連勝も多く負けないチームを作れていました。そういう経験を通じて、多くの選手が成長し、ブレイクアウトする選手たちも多かった。プレーオフでは、負けたラウンドで良いところを出し切れない場面が多かったのはありますが、ベイサーズが本当に素晴らしかったので彼らを称えたい」
自身のプレーについてもシーズンを通じて納得の出来だったという。
「非常に良いシーズンを過ごせたと思っています。ケニー・アトキンソンのもとでの新しいシステムについて、戦略面でかなり今までと変わったので、毎回ピックアンドロールをするだけでなく、ポジショニングやカッティングといった新しい側面を学ぶ良い機会になりました。目標としていた全試合出場を達成ができて良かったです」
ジャレット「八村は良いプレーをする」
昨年8月に2028・2029年シーズンまでの延長契約を発表しているジャレットだが、堅実なプレーぶりで評価の高いことで、今オフシーズンにトレード候補になるのではとも一部囁かれている。他チームからも注目されていることについて問うと、ジャレットは冷静に振り返った。
「(私自身)新たなステージに立っているように感じますし、選手として成長していることが明らかです。チームの一員であることは良い気分ですし、多くの人が私のポジションでの役割の価値を理解してくれています。チームを助け、改善することにもつながります。他のチームから求められるのならば、やはり嬉しいです。自分のポジションで行っているプレーの価値を理解してもらえているんだなと思いますし。そういった点が、他のチームからも、自分たちの助けになるのではないかと見られているかもしれません」
日本のメディアということでレイカーズの八村塁の印象について聞いてみると、正直に答えてくれた。
「そこまで多く、彼(八村塁)のプレーをあまり観ていませんが、彼と対戦するたびに非常に良いプレーをします。自分の体のサイズを活かしてポジショニングが上手い選手です。小さいディフェンダーに対しても戦略的にプレーし、多くのリバウンドを獲得することができます。ワシントンウィザーズにいる時は、彼はミッドレンジショットを好んで打っていました。ただ、現在のNBAではあまり効率的なショットではありません。それを彼は時間をかけて3ポイントラインの外にまでシュート範囲を広げることは本当に素晴らしい。今はレブロン(ジェームズ)や途中で加入したルカ(ドンチッチ)と一緒に上手くプレーする方法も見出していた様に見えました」
コンビニお菓子を満喫
今やオフシーズンになると毎年何人かのNBA選手たちが日本をプライベートで訪れたりして話題になるが、ジャレットは初来日。
「今回は4日間ほどしか滞在しません。もっと長くいたいですが用事がありまして帰国する予定があるので。でも、日本に戻るために2度目の旅行を計画しなければならないと感じています」
来日してから1日半ほどしか経過してない段階だったが、その時点で印象に残った場所を聞くと、思いがけない場所を答えた。
「銀座にあるユニクロが12階建てで、信じられない建物を見ました。こんなものは過去に見たことがありません。あとは色々な食事をしていて、それも本当に楽しい。この後(6月13日夜)、お寺のあるエリアに行く予定で(※浅草寺を指していた模様)、そこで少しカルチャー系の経験をしようと思っています」
食事ではすき焼きを味わったらしく、生卵を使った食べ方が興味を引いた様で嬉しそうに話してくれた。食事の最後に出たデザートの抹茶アイスも美味しかったと名前をあげていた。
こちらのインタビューが始まる前に部屋の外で待っていると、他の媒体の取材が終わったのか、ジャレットが出てきて、スタッフから何やら受け取っていた。近くのことだったので見ていると、スタッフの方がコンビニでチョイスして買ってきた色んなお菓子で、その一つ一つを興味津々に手に取りながら食べていた。
「日本のコンビニのお菓子には興味があったんです。良いですよね、ああいう楽しめるお菓子は。実は楽しみにしていました。なぜなら皆『日本のお菓子はとても良い』と言っていたから。自分たちの国のお菓子とどんなふうに異なっていて、どんなに風味が豊かであるか、今まで試したものは全部美味しかったです」
確かに今や日本のお菓子は海外旅行客の定番お土産になっている。また、NBA挑戦のためにアメリカに渡った日本代表の河村勇輝が、チームメイトたちに日本のお菓子を差し入れして彼らから喜ばれるなど、お菓子の話題がSNS等で話題になっていた。
ポケモン好きは子供の頃から
ジャレットは日本のファンたちから注目された理由の一つが、ポケモン(ポケットモンスター)やゼルダの伝説が好きだから。登壇イベントでもファンから聞かれて答えていた。
「私はポケモンやゼルダと一緒に成長しました。子供の頃からずっと好きでした。ビデオゲームに最初に夢中になったのがポケモンです。若い頃にはカードを集めていました。私の友達も皆カードを集めていましたね。子供の頃から愛しているもので身近にあったものです」
ポケモン好きなら今でもポケモンカードを集めているのかなと思い尋ねてみると、少し悲しそうに空を見つめながら話した。
「昔のことを思い出しました。ポケモンカード集めは、10歳の時にやめました。ポケットにカードを全て入れてたのですが、母がそのまま洗濯機に入れてしまい、カードがぐちゃぐちゃになってしまったので、集めることをやめました。ただ、今はTCG(※)を楽しんでます」
(※Pokémon Trading Card Game Pocket、日本ではポケポケでお馴染み)
インタビュー中は終始穏やかで、すでに何度も同じことを聞かれたであろうに、謙虚な振る舞いで時折笑顔でこちらに答えてくれたジャレット。彼と接した人たちは皆、彼のファンになるのだろうなと思わせた。
ジャレットが短い滞在期間での初来日をどう楽しめたのか、そして、来シーズンはどんな活躍を見せてくれるのか。日本からも多くのファンが楽しみにしているだろう。