MLBでも過去にふたりしかいない2年連続トリプルスリー

昨季、打率.329、38本塁打、100打点、183安打、34盗塁で5部門すべてがセ・リーグ2位以内だった山田。5月16日現在、今季の成績とリーグ内順位は以下の通りだ。

昨季のように5部門すべて2位以内ではないが、いずれも上位につけている。現在のペースでいけば、打率以外のシーズン通算成績は本塁打41、打点92、安打177、盗塁34となり、打率3割をキープできさえすればNPB史上初の2年連続トリプルスリー達成が現実のものとなる。MLBでも2年連続トリプルスリーは、ウラジミール・ゲレーロ(2001年~2002年)とライアン・ブラウン(2011年~2012年)のたったふたりしかいない大記録だ。(図1参照)

NPB史上初の40本塁打40盗塁の可能性も十分

山田には、2年連続トリプルスリー以外にも大記録の期待がかかっている。NPB史上初となるシーズン40本塁打、40盗塁、いわゆる「40-40」だ。MLBでもホゼ・カンセコ(1988年)、バリー・ボンズ(1996年)、アレックス・ロドリゲス(1998年)、アルフォンソ・ソリアーノ(2006年)の4人しかいない大記録だが、現在のペースでは盗塁が6個ほど足りない計算になる。

 MLBは162試合、NPBは143試合とシーズンの試合数が異なり、MLBで「40-40」を達成した4選手が記録に到達したのはいずれも143試合目以降のこと。つまり、143試合での「40-40」達成となれば、これはNPB、MLBを合わせて史上初のことだが、非常に困難な記録とも言える。

 盗塁も本塁打も、打席数が増えれば増えるほど記録を伸ばしやすくなるが、MLBで「40-40」を達成した選手のなかで、最も少ない打席で到達したソリアーノでも670打席を要している。NPBでシーズン670打席以上立ったのは、2014年の山田(685打席)と秋山翔吾(西武・675打席)を含め13人しかいない。

 昨季、山田の打席数は646で、今季はこのままのペースでいけば637打席となる。昨季の前半戦のように1番を打てば打席数も増えるが、坂口智隆や比屋根渉の1番から2番・川端慎吾、3番・山田という上位打線の流れが機能しているだけに、そう簡単に山田を1番に回すことはできないだろう。

驚異的な盗塁成功率を誇る山田哲人

ただ、盗塁に関しては数が多いだけでなく成功率も高いことが山田の強みだ。昨季、38回試み成功は34回。成功率は.895で2リーグ制後の盗塁王では歴代3位の成功率だった。昨季の7月30日、広島戦の5回に盗塁を失敗して以降、14回連続で成功してシーズンを終えた。

 今季はこれまで10回試みすべて成功しているため、シーズンをまたいでの記録だが連続盗塁成功24回を更新中だ。連続盗塁成功の日本記録はソフトバンクの福田秀平が2011年から2015年にかけて樹立した32回だが、山田はあと8回までに迫っている。

 昨季、山田が記録した34盗塁のうち、初球に走ったものが16個、2球目が8個と積極的に走ることで盗塁数を伸ばした経緯がある。今季は10盗塁のうち、初球に走ったものが2個。2球目も4個で、3球目以降に決めたものが4個。マークがきつくなったこともあり、積極的に盗塁を仕掛けることは少なくなっているが、球数がかかってでも盗塁を決めている点はさすがの一言だ。

 盗塁のためには出塁が必要なことは言うまでもないが、今季の山田は42試合中ノーヒットに終わった試合は8試合。しかも、一度も出塁できなかった試合は2試合と非常に少ない。リーグ最多の32四球を選んでいて、このままのペースでいけばシーズンで109四球となる(フルカウント時の成績も、10三振19四球と際どいカウントでもしっかりボールを見極めている)。昨季と異なり、今季は山田の後ろにウラディミール・バレンティンが控えていながらもこの四球数は驚異的だ。

二塁手でいながらここまで無失策を継続中

守備面でも今季の山田は大きな進歩を見せている。42試合フルイニング出場しながら、セカンドの守備で無失策だ。フルイニング出場している内野手で、まだエラーをしていないのは山田ひとりだけである。

 昨季までと比べ守備での一歩目が早くなり、グラブさばきも巧みになった印象を受ける。広島の菊池涼介という強力なライバルがいるが、目標として掲げているゴールデングラブ賞を獲得するのも夢ではなくなってきた。

 高打率を残し、長打力も必要な上に走力もなければ達成できないトリプルスリーを2年連続で達成というだけでも偉業だが、NPB史上初の「40-40」も加わればその価値は計り知れない。さらに攻撃面だけでなく、華麗な守備も兼ね備えた山田は、プロ野球史上屈指のオールラウンドプレーヤーとなりつつある。我々ファンは、もしかするとプロ野球史上最もエキサイティングな選手をいま見ているのかもしれない。
※数字は2016年5月16日終了時点


京都純典
1977年、愛知県生まれ。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。


京都純典(みやこすみのり)