文/京都純典
強くないが……弱くもないロッテ
72勝68敗3分、勝率.514の3位。2年連続Aクラスは、球団としては1985年以来31年ぶりのことで、伊東勤監督の下、上位をキープできる力をつけてきた。だが、今季は2位ソフトバンクに12.5ゲーム差、優勝した日本ハムには15ゲーム差を離され、対戦球団別成績でもソフトバンクに8勝16敗1分、日本ハムに9勝15敗1分と大きく負け越している。昨季も2位日本ハムに6.5ゲーム差、優勝したソフトバンクに18.5ゲーム差離され、両チームに大きく負け越していることを思えば、“2強”との差は歴然だ。
クライマックスシリーズでは、昨季ソフトバンクと対戦したファイナルステージで3連敗。今季もファーストステージでソフトバンクに2連敗を喫した。2年連続でAクラス入りを果たしたものの、言葉は悪いが……強くないが弱くもないのが今のロッテである。
日本ハムとソフトバンクの2強に追いつき追い越すため、ロッテに必要なことはなんだろうか。
今季のチーム打率はリーグ5位の.256。得点は583でリーグ4位。角中勝也が打率.339で自身2度目の首位打者に輝いたが、チーム全体で見ればあまり打てなかった。チーム本塁打は2年連続でリーグ最少の80本(昨季は楽天と同数)。2桁本塁打を記録したのは、24本塁打のアルフレド・デスパイネ、10本塁打のヤマイコ・ナバーロの両助っ人だけだ。チーム全体の二塁打はリーグ2位の216、三塁打はリーグ2位タイの30本と中距離ヒッターが多いだけに、本塁打がもう少し増えれば得点力も上がることは間違いない。
一塁手の攻撃力が3年連続でリーグワースト
本塁打が少ないロッテ打線のなかで、ポジション別に見ると特に少ないのが一塁手である。スタメン出場した選手のポジション別成績で、ロッテの一塁手が放った本塁打は10本。リーグ最少だった楽天の5本より多いが、打率と出塁率は楽天の一塁手のほうが高かった。一塁手の攻撃力が不足していたわけだが、それは今季に限ったことではない。
2015年は、打率.232、出塁率.310、7本塁打。2014年は、打率.214、出塁率.296、6本塁打。いずれも2年連続でリーグワーストだ。2013年に井口資仁が一塁手で99試合にスタメン出場し、一塁手の通算成績は打率.296、出塁率.372、20本塁打を記録したが、それ以降はかなり落ちている。
今季は、細谷圭が一塁手でチーム最多の36試合にスタメン出場。井口の35試合と続き、計6人の選手を一塁手としてスタメンで起用している。昨季は、10人の選手を一塁手でスタメン起用するなど固定できていない現状だ。
一塁手は、打線のなかで最も攻撃力を求められるポジションだ。一塁手を固定できず、攻撃力も乏しければ、チームの得点力があがらないのも当然。伊東監督は、フロントに補強の必要性を訴えたようだが、納得である。

期待の大砲・井上晴哉にブレークの予感

一塁を守ることができ、デスパイネのように長打力のある外国人選手を獲得できればすべては解決だが、期待の若手有望株もいる。
2013年ドラフト3位で指名され、来季で4年目を迎える井上晴哉だ。ルーキーイヤーのオープン戦で打率.435を記録し、ドラフト制後では初となるルーキーでの首位打者となった井上は、その年の開幕戦で4番指名打者としてスタメン出場。大きな期待を背負ったが、シーズン通算では36試合の出場に終わり、打率.211、2本塁打。昨季は一軍出場が5試合しかなかった。今季は、一塁スタメンで27試合に出場したのをはじめ、35試合の出場で打率.232、2本塁打という数字を残している。
一軍では目立つ成績を挙げられなかった井上だが、二軍では圧倒的なバッティングを見せた。69試合の出場で打率.342、15本塁打、50打点。規定打席にこそ達しなかったが、規則によりイースタン・リーグの首位打者となっている。また、出塁率と長打率を足したOPSは1.029と、10割超えというのも力を証明する数字だ。
近年、一軍でブレークした若手選手の成績を見ると、ブレーク前年に二軍で長打率.400以上、OPS.700以上を記録していることが多い。井上は、昨季も二軍で長打率.503、OPS.925を記録したが、今季はさらに数字をUPさせた。秋季キャンプでも長打力が話題になることが多く、来季を飛躍のシーズンとしたい。

左腕が先発した試合はリーグ最少の8試合
投手陣は、リーグ3位のチーム防御率3.66。先発陣の防御率3.82、リリーフ陣の防御率3.33もともにリーグ3位。石川歩が防御率2.16で最優秀防御率のタイトルを獲得した。上位2チームには及ばないが、先発、リリーフ陣ともに大きく崩れたわけでもない。だが、近年のロッテ投手陣を見ていると、左腕が少ないことが気になる。
今季、支配下登録された34投手のうち、左腕が8人とパ・リーグのなかでも最も少なかったこともあるが、一軍で登板した左腕は6人でソフトバンクと並びリーグ最少である。
ロッテの左腕で規定投球回に達したのは2012年の成瀬善久が最後。2014年オフに成瀬が移籍し、昨季は6人の左腕が計33試合に先発したが、今季は計8試合でリーグ唯一の1桁。古谷拓哉とチェン・グァンユウが4試合ずつ先発しただけだ。左腕の合計登板数105、投球回137、勝利数5はいずれもリーグ最少と、右腕に頼り切っているのが現状だ。
もちろん、左右のバランスにこだわりすぎる必要もないが、今季のパ・リーグで規定打席に達した28人中16人が左打ちの選手である。打率ベスト10では右打ちが浅村栄斗(西武)、内川聖一(ソフトバンク)、陽岱鋼(日本ハム)の3人だけだ。
打率リーグ2位の西川遥輝(日本ハム)はロッテ戦で打率.337、同4位の糸井嘉男(オリックス)は.326、同5位の柳田悠岐(ソフトバンク)は.366、同9位の中村晃(ソフトバンク)は.326とロッテ戦で高打率を残している。打率ベスト10のなかでロッテ戦の相性が悪いのは打率.270の秋山翔吾(西武)くらいだ。
左投手だから左打者を抑えられるわけでもないが、巧打者が多い左打ちの選手をどれだけ抑えられるかがリーグ優勝へのカギになるのではないだろうか。
先日のドラフト会議でロッテは7人を指名したが、そのうち6人が投手。左腕で唯一指名した4位の土肥星也(大阪ガス)が、開幕から投手陣の一角に入ってくるかどうかも来季の戦いにおけるポイントになるだろう。

2005年、2010年と日本一に輝いたが、いずれもレギュラーシーズンでは2位か3位。レギュラーシーズンで1位となったのは1974年が最後と12球団で最も遠ざかっている。シーズン終盤になると「今年も下剋上!?」と話題になるが、それも話題だけになりつつある。伊東監督の集大成ともいわれる来季――2強の壁を崩すことができるだろうか。
(プロフィール)
京都純典
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。