中村剛也が不調もリーグトップクラスの攻撃力はキープ

619得点は日本ハムと並び、パ・リーグ2位。チーム打率.264もリーグ2位、128本塁打はリーグ最多と、今季も攻撃力においてはリーグでもトップクラスの記録を残した。

 浅村栄斗がリーグ3位の打率.309。本塁打も24本塁打と3年ぶりに20本超え。昨季、シーズン安打の日本記録216安打を樹立した秋山翔吾は、厳しいマークにあいながらも打率.296と3割近くをキープし、出塁率も.385と十分な役割を果たした。ベテランの栗山巧はリーグ6位の出塁率.390をマークし、エルネスト・メヒアはリーグ2位でチーム最多の35本塁打と長打力を発揮。

 近年の西武打線を支えてきた主力が軒並み好成績を残すなかで、主砲・中村剛也は苦しんだ。契約更改の会見で「最低最悪のシーズン。評価できる数字じゃない、なかったことにしたいです」と振り返ったが、一昨年に痛めた右膝が悪化したこともあり、今季の中村は108試合の出場で規定打席にも届かなかった。

 昨季の37本塁打から今季は21本塁打、打点も124打点から61打点と半分以上減らした。昨季、初球時の打率はパ・リーグトップの.473だったが、今季は.306。初球時の本塁打も6本から3本に減っている。

 これまでのプロ15年で規定打席に達した6シーズンは、すべて本塁打王のタイトルを獲得しているだけに、体調を万全にすることがなによりも重要になる。

若手が台頭するもショートは固定できず

 中村が不振だったが、昨季の631得点、136本塁打から微減に留まったところからも西武打線の底力を感じさせる。その背景には、主力選手以外にも若手選手の台頭が目立ったことにある。

 入団4年目の金子侑司は129試合に出場し、自身初の規定打席に到達。打率.265を記録し、53盗塁は糸井嘉男(オリックス)と並んでリーグ最多タイ。持ち前のスピードを存分に発揮したが、盗塁成功率は75.7%。パ・リーグで10盗塁以上記録した選手のなかで9番目の数字である。より確実性を上げることが求められるだろう。

 金子侑が放った122安打中32本が内野安打。これはリーグ最多の本数で、安打のなかに占める内野安打の割合はリーグトップの26.2%。それだけの脚力からすれば、盗塁成功率はもっと上げられるはずだ。

 3年目の山川穂高も能力の一端を垣間見せた。6月までは二軍暮らしが多かったが、7月30日に一軍へ昇格すると、レギュラーシーズンの最終戦までに37試合に出場し13本塁打。1試合2本塁打を3度、3試合連続本塁打を1度、2試合連続本塁打を2度記録した。157打席で36個と、安打と同じ数の三振を喫したことや一塁の守備は課題だが、西武打線に新たなパワーヒッターが加わったことは間違いない。

 金子や山川のように若手の野手が着実に育ってきているものの、懸案だったショートのレギュラーをつかむ選手は今季も出てこなかった。

 2012年オフに中島宏之(現・オリックス)がアメリカへ渡って以降、西武はショートを固定できていない。2013年から昨年まで、ショートで出場している選手の名前はほとんど同じながら、最多出場の選手は毎年変わっているという状況だ。

 今季は外崎修汰で開幕したが、渡辺直人、鬼崎裕司と変わり、4月中旬からは金子侑がショートで出場するようになった。しかし、送球面で不安があり5月中旬からは鬼崎がショート、金子はライトへ回った。その後も木村昇吾、永江恭平と固定できない日が続いた。シーズン終盤にルーキーの呉念庭を多く起用したが、インパクトを残すような成績ではなかった。

 ショートでスタメン起用した選手の通算打率は、リーグワーストの打率.223。出塁率も.282で、リーグ唯一の2割台だった。内野の要とも言われるショートで苦労している間は、上位進出も難しいのではないだろうか。

バッテリーエラーもリーグ最多に……

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リーグトップクラスの攻撃力を見せた一方で、投手を含めた守りには今季も泣かされた。12球団最多で、4年ぶりに3桁の101失策を記録した。今季、28試合を消化した4月終了時点で28失策。これは、1試合1失策をしていた計算で、5月は14失策、6月は22失策、7月は17失策とシーズンが進んでも改善されることはなかった。

 そこで田辺監督は「失点を防げないならそれ以上得点を上げよう」という考えを基に、攻撃力重視のオーダーを組むようになる。指名打者での起用が多かった森友哉を捕手で、ファームでダントツの本塁打数を記録しながら守りに不安のある山川を一塁手で起用し、8月は14勝10敗、9月は11勝10敗1分と2カ月連続で勝ち越しに成功。失策数も8月は11失策、9月は9失策と攻撃型のオーダーを組みながらも7月までより減らすという皮肉な結果となった。

 ポジション別の失策数を見ても、ピッチャー、キャッチャー、ファースト、サードでリーグ最多を記録(サードはロッテと同数)。特に、ピッチャーとキャッチャーの失策は他球団の倍近くあり、バッテリーは自ら首をしめる格好になってしまった。

 失策だけではなく、暴投や捕逸のいわゆるバッテリーエラーも多かった。61暴投はリーグ最多で、7捕逸はリーグで3番目に多い数字。合わせて68バッテリーエラーは、2番目に多かった日本ハムとオリックスの48個より20個も多い。

 また、今季の西武は618失点、543自責点。その差が75とリーグで最も大きかった。失策で出塁した走者は基本的に自責点とならないが、西武は失策で出塁を許した走者を多く生還させたことになる。

外国人投手がたったの4勝……防御率もリーグワーストの数字

投手陣は、リーグ4位のチーム防御率3.85。78被本塁打はリーグ最少だったが、524与四球、76与死球はいずれもリーグ最多だった。

 菊池雄星が自身初の規定投球回に到達し、高橋光成やルーキーの多和田真三郎といった若手も経験を積むことができた。それでも苦戦した要因は、外国人投手が期待を大きく裏切ったからだ。

 途中入団の選手を含め、6人の外国人投手を一軍で起用したが、勝利を挙げたのは以前に日本ハムとソフトバンクに在籍したブライアン・ウルフのたった4勝だけ。外国人投手の合計成績は4勝13敗、防御率5.66とリーグワーストである。合計の投球回168回2/3はリーグで2番目に少ないが、自責点は最も多かった。外国人投手が先発した25試合中13試合で敗戦投手となっており、仮に勝敗が逆転していればAクラスに入っていたことになる。投手力に不安があるなかで、外国人投手でカバーしようとしたが裏目に出てしまった。

リーグトップクラスの攻撃力がありながら守りが崩れてしまい、得点と同じくらいの失点を喫した西武。頼みの外国人投手も大誤算で、3年連続のBクラスは寂しい限りだ。ただ、課題は明らか。投手力と守備力をどこまで整備できるかが来季もポイントになるだろう。「黄金時代、再び――」の声も、このままでは虚しく響くだけだ。

(プロフィール)
京都純典
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。


京都純典(みやこすみのり)