文/京都純典

打力のなさを出塁能力でカバーできなくなった野手陣

6毛差でリーグワーストこそ免れたが、チーム打率は.245、500得点はリーグ最少。今季も得点力不足に悩まされた。しかし、優勝した2010年はリーグ5位の539得点、2011年はリーグ最少の419得点。打率も2010年はリーグ5位の.259、2011年は.228で史上初となるリーグワースト打率での優勝に輝いてきたのが中日というチームだ。

 1997年にナゴヤドームを本拠地にして以降、中日がリーグトップの打率、リーグ最多得点を記録したのは2006年だけしかない。今季までの20年で、チーム打率や得点がリーグ上位3球団だったシーズンは6回と少ない。ナゴヤドームを本拠地にしてからは投手力を中心にした野球を身上としていて、打力とチーム順位の関係はあまりないというのがチームの特徴だ。

 ただ、この2年で四球の数が減っているのは気になる点だ。2010年はリーグ最多の456四球、2011年もリーグ2位の423四球を選んだ。2012年から2014年までもリーグ上位の四球を記録していたが、昨季は401四球でリーグ5位、今季も410四球でリーグ4位。2年連続でリーグ平均を下回っている。打力で劣っているところを四球などの出塁能力でカバーしていたが、それができなくなっているのだ。

 選手別の四球数を見ても、494打席で72四球を選んだ平田良介と471打席で44四球を選んだダヤン・ビシエドくらいしかリーグの平均四球率を上回っていない。今季の中盤以降に出場機会を増やした杉山翔大や福田永将といったレギュラーを狙う選手たちが、リーグ平均よりも優れた四球率を残している点は期待が持てるが、どうにか出塁してしつこい野球を持ち味としていたチームからすれば、物足りない数字だ。

日本人投手の台頭少なく外国人頼りだった投手陣

投手陣はリーグ4位の防御率3.65。良くも悪くもない数字だが、チーム最多勝は大野雄大と若松駿太の7勝。2桁勝利投手がいなかったのは1980年以来、36年ぶりのこと。最多投球回は吉見一起の131回1/3で、規定投球回到達者がいなかったのは2008年以来、8年ぶり。2桁勝利投手も規定投球回到達者もいないのは、球団史上初のことだった。球団創立80周年のシーズンに不名誉な記録を作ってしまったのが今季の中日投手陣である。

 今季の中日は、途中入団のレイソン・セプティモも含め5人の外国人投手と契約した。そのうち4人が一軍で登板し、合計の投球回は290回。12球団で3番目に多かった。ラウル・バルデスとジョーダン・ノルベルトは外国人枠の関係で一軍登録と抹消を繰り返しながら起用されて6勝ずつ。1勝のドリュー・ネイラーとセプティモも合わせた4人の防御率は3.97と投球回の割にはチームに貢献したとは言えない。主力にケガ人が多かったとはいえ、外国人に頼らざるを得ないチーム状態では厳しい。
 
 リリーフ陣の防御率3.04は広島と並びリーグトップ。田島慎二が開幕31試合連続登板無失点のプロ野球新記録を達成し、セ・パ交流戦からはクローザーとして活躍した。防御率こそ良かったリリーフ陣だが、17勝25敗と大きく負け越し、敗戦数はリーグ最多だ。イニング別の失点で終盤のイニングに多く失点しているわけではないが、サヨナラ負けを両リーグ最多の10回喫するなど、勝負どころで痛打を浴びる場面が多かった。

投手陣もまた与四球の多さが課題に……

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ふがいない投手陣のなかで田島の新記録以外の明るい話題は、高卒ルーキー小笠原慎之介の快投だろう。2リーグ制後セ・リーグの高卒ルーキーではワーストの開幕5連敗を喫したが、最終的には15試合に登板し2勝6敗、防御率3.36の成績だった。

 今季、12球団の高卒ルーキー投手は育成契約を除くと15人。一軍で登板したのは小笠原と望月惇志(阪神)のふたりだけ。今季の高卒ルーキーのなかで、小笠原は一軍で最も投げた投手である。大学生、社会人出身のルーキーを含めても、小笠原の投球回72回1/3は5番目に多かった。シーズン後に高校時代から悩まされてきた左肘の遊離軟骨を除去する手術を受けたが、しっかりリハビリをして戻ってきてほしい。

 投手陣全体の話に戻すと、野手陣同様に投手陣も四球が課題だ。2010年の与四球はリーグ3位の416。2011年と2012年はリーグ最少の与四球だったが、2013年に495与四球でリーグ5位になると2014年はリーグ最多の503与四球。昨季はリーグ3位の425与四球に留まったが、今季は469与四球でリーグ4位。投手陣の与四球の増加とチームのBクラス転落がつながっている。

 過去5年のセ・リーグ優勝チームを見ると、昨季のヤクルトがリーグ4位だった以外はリーグ平均より与四球が少なく、そのほかもリーグ最少か2番目に少ないという数字が残っている。打者の四球数よりチーム順位との関係が強いのだ。

与四球が少なく、与死球が多い二軍投手陣

 投打ともに課題が多い中日だが、二軍は好成績を残した。開幕から上位をキープし、最終的にはソフトバンクにウエスタン・リーグ5連覇を許したが、2012年から2014年まで3年連続最下位、昨季も4位と低迷していたことを考えれば大躍進だろう。

 チーム打率は昨季の.245から.269に上がり、1試合の平均得点も3.53から4.36に増えた。投手陣は、防御率に大きな変化こそないが、292与四球はウエスタン・リーグ最少。逆に、与死球はリーグ最多の51。

 死球は制球難のイメージが強く、実際に今季のセ・リーグ最多の73死球を与えているヤクルトは、与四球もリーグで2番目に多い462個。パ・リーグも最多の74与死球を記録した西武が最多の494与四球であった。

死球が増え、四球は減っている中日二軍投手陣だが、その裏には小笠原道大二軍監督の「内角をしっかり突けないと一軍で勝負はできない」という考えがあるようだ。与死球の増加は厳しく内角を攻めている証とも言え、中日の二軍投手陣が単なる制球難に陥っていたわけではない。若手の台頭が切に望まれる一軍投手陣に、二軍で内角を攻めることの重要性を知った選手がどれだけ入ってくるか。当然、一軍と二軍のちがいはあるが、来季以降に興味が持てるポイントかもしれない。

 投打ともに「四球」がチーム再建のポイントになりそうな中日。FAでの移籍も噂された平田良介と大島洋平が残留を選択し、若手の底上げも徐々にではあるができつつある。落ちるところまで落ちたチームが、ここからどうやって這い上がってくるのか。“竜の逆襲”に期待したい。


京都純典(みやこすみのり)