文/田澤健一郎
シリーズを決したジャクソンVSレアード
今季のプロ野球も幕を閉じた。25年ぶりにセ・リーグを制した広島と、二刀流・大谷翔平を筆頭に、若い選手たちが躍動した日本ハムの日本シリーズは、ここ数年では最も注目を集めたのではないだろうか。
さて、この日本シリーズは第6戦、日本ハムが終盤に勝ち越し、突き放して日本ハムが日本一に輝いたわけだが、勝敗を決した場面が興味深かった。広島の敗戦投手はジャクソン。8回に勝ち越しを許す失点を含め、一挙6点を献上してしまった。そのジャクソンから満塁本塁打を放ち、広島に引導を渡したのは日本ハムのレアード。押し出し直後の満塁本塁打は今シリーズ3本目。パ・リーグ本塁打王の力をまざまざと見せつけた。他にも日本ハムはバースやメンドーサ、広島はジョンソン、エルドレッドなど中心選手として好成績を挙げている外国人選手が複数いたように、今年の日本シリーズは外国人選手の存在感が大きかった。その意味で、シリーズの勝敗が決定的となった場面が外国人投手VS外国人打者だったのは、非常に象徴的だったのである。
外国人選手獲得は、ドラフト、トレードと並ぶプロ野球界における大きな「補強」の一要素だ。ただし、ドラフトは新人ゆえに戦力となるまで時間がかかる選手もいる。即戦力と呼ばれる選手もプロでの活躍できるかは未知数。またトレードは日本の場合、主力級のトレードはそれほど多くはない。故に外国人選手獲得は、成功すれば最も即効性のあるチーム補強である。もしや外国人選手枠が広がったことで、その傾向がより強くなっているのではないか? そんな疑問をベースに、2016年シーズンにおける12球団の外国人選手の成績をチェックしてみた。
リーグ優勝を争うチームに3人の外国人投手あり
まず投手は規定投球回数到達者と、先発、セットアッパー、クローザーとして一定の働きをしたということで「5勝」「30試合以上登板」「10S」をクリアした選手をピックアップ。打者はレギュラー、準レギュラーとして活躍したか、という観点から、規定打席到達者か「80安打」「15本塁打」「50打点」のいずれかをクリアした選手をピックアップしたのが下記の表である。

結果、最もクリア外国人選手が多かったのが日本ハム、広島、中日の4人。セ・パ両リーグの覇者と最下位チームとなった。ただ、中日の場合、ジョーダンが5勝、バルデスが6勝、ナニータが91安打と4人中3人がギリギリで基準をクリアした選手となった結果の4人である。続いて3人がクリアしたのはソフトバンク、横浜、阪神。3チーム2チームはAクラスだった。つまり両リーグAクラス6チームのうち4チームは外国人選手が一定以上、機能、貢献したと言える。
そのなかで注目すべきは日本ハム、ソフトバンク、広島の3チームが、いずれも3人の投手がクリアしている点だ。僅差のマッチレースでパ・リーグ優勝を争った日本ハムとソフトバンク、独走でセ・リーグを制した広島。言ってみればリーグ優勝およびそれに匹敵する成績を残したチームは「外国人投手が3人活躍」という点で共通しているのである。
外国人投手への依存度は高まっているのか
現在の外国人選手枠は、支配下登録選手は制限なし、出場選手登録、すなわち一軍登録できるのは投手・野手を合わせて4人。ただし、4人すべてを投手・野手にするのは禁止で、「投手・野手のいずれか3人と1人」、あるいは「投手・野手が2人ずつ」となる。つまり、一軍登録は4人可能でも、外国人投手4人の投手リレーや外国人野手の4人同時出場は不可能。そのなかでいくと、今季は「投手3人・打者1人」が強いチームのトレンドだったわけだ。これは、あくまで今季の成績をもとにした傾向だが、現在の外国人枠制度になってから、外国人投手の数は確実に増えている。
現在の制度導入は2002年だが、それ以降の外国人投手の貢献度を調べてみたら、この傾向、流れが一過性のものではなく、現在のプロ野球における戦力構成において外国人投手の役割が想像以上に重要なものになっていることは十分あり得るだろう。かつてのプロ野球における「助っ人外国人選手」は、多くが打者だった。そういう視点で見ると、現在における外国人選手事情もずいぶん変わったものである。
(著者プロフィール)
田澤健一郎
1975年、山形県生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て編集・ライターに。主な共著に『永遠の一球』『夢の続き』など。『野球太郎』等、スポーツ、野球関係の雑誌、ムックを多く手がける元・高校球児。