この日経新聞の記事は、「文科省によると」というカタチで以下の内容を掲載し、まとめとしている。
NCAAの収入は年約1千億円で、放映権料が約85%を占める。収益を大学の教育やスポーツの充実に使うという好循環がある一方で、監督らの報酬の増大、スポーツ奨学生の拡充による学生の「競技漬け」につながるとも指摘されている。
日本版NCAA=UNIVASがビジネス面ばかりを重視した組織であり、スポーツの安全面やアスリートの教育目線の不足の組織という印象を与えかねないこのまとめの部分が池田氏は気になったようだ。
「そもそも大学スポーツの発展のために、安全面やガバナンス、学生の教育環境の充実などは当たり前の“やらなくてはいけないこと”であって、そういったことのためにもお金の話は避けて通れません。きちんとビジネス面についても考えていくというのがUNIVASの考え方であるはず。だからこそ初年度の売上20億円、その後3年間の売上も計画値として公にしているのでしょう。決して金儲けが目的なのではなく、その集まった資金で、安全面、強化面だけでなく、ガバナンスの充実、教育環境の整備をはかったりすることが大切。どうしてこのUNIVAS立ち上げ前のタイミングで、このような記事やコメントが出ているのか不思議に感じました」
そもそも大学スポーツは、ビジネスになるのか? 恐らく、いちばん大きなビジネスになっているのは箱根駅伝だろう。すっかり正月の風物詩として定着している箱根駅伝は、毎年長時間にわたって視聴率25%以上を叩き出す“お化けコンテンツ”だ。主催は関東学生陸上競技連盟で、放映は1987年から日本テレビが独占している。もしUNIVASが発足し、本国アメリカのNCAAのように機能するようになれば、スポンサー料や放映権は、UNIVASが管理することになるだろう。発生する莫大な利益は、全国の大学スポーツの強化や発展やUNIVASの理念の実現に充てられるようになれば理想的だ。
広い目で見れば、悪い点はない。だが、これまで箱根駅伝をコンテンツに育て利権を持つ一部の勢力から見れば、UNIVASは自分たちの既得権益を阻害する存在にしかならないのだ。同じようなことは箱根駅伝以外のスポーツにもあてはまる。六大学野球や対抗戦ラグビーなどの人気スポーツ、人気校だけに集中した既得権益を分配し、より健全な大学スポーツの環境を整えるのがUNIVASの役割なのであろうが、どうやらそれをよしとしない人も少なくないらしい。
「日経新聞のアンケートでは、新組織参加を表明しているのが19%ということで、まるでUNIVASが不必要だと思われているような印象を与えていますが、まだ発足もしていない、内容もわからない組織に参加しますと手をあげる人が少ないのは当たり前。UNIVASとしては、よりわかりやすく、透明性の高い運営をして、自分たちの存在価値や参加する意義を示していかなければならないと思います」
既得権益を守ろうとする抵抗勢力を押し切ることができるか? UNIVASを立ち上げるスポーツ庁の真価が問われる。
[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>
取材協力:文化放送
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どうなるUNIVAS⁉ 日経新聞「大学スポーツ改革」記事を読み解く
12月5日の日経新聞に気になる記事が掲載された。「大学再編4割前向き」との大見出しが踊るこの記事は、全国の大学学長へのアンケートの集計をもとにしたもの。少子化の時代に大学をどう運営していくかということに主眼をあてた記事だが、問題の記事は、その脇に小さく掲載された「大学スポーツ統治問題」に関するもの。日本版NCAAとして来年からの発足が決まっているUNIVASについて「新組織参加予定 19%」「新組織参加未定68%」という数字をあげて、やや否定的な見解を示している。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、スポーツ庁参与の池田純氏は、この記事を見て、ある違和感を感じたという。
(C)共同通信