現在の状況を簡潔に説明すると、チケット販売のプロセスはすでに50%以上は進捗している。今大会には総数およそ180万枚のチケットが用意されているが、抽選形式の一般販売は1年前の2018年1月から始まっており、いくつかのステップを経てすでに半分以上は販売済みなのだ。

ラグビーワールドカップ2019組織委員会でチケッティングを担当する大内悠資氏は言う。
「これまでの段階において抽選で申し込まれたチケットの枚数は、世界250を超える国と地域から約450万枚。過去の大会と比べても、売れ行きは非常に好調です」
おのずと抽選の倍率も高くなった。売り出しのたびに申し込んできた熱心なラグビーファンの一人は、苦笑交じりに言う。
「かなりの倍率になるという話だったので、『どうせ当たらないだろう』というくらいの気持ちで申し込んでいましたね。予想通りほとんど外れでしたが、日本戦など目当ての試合のチケットを少しは確保できた。粘り強くやってきた甲斐がありました」

ただ、チケットの在庫はまだある。もちろんカードによってバラつきはあり、開催国である日本の試合、決勝トーナメントの試合、イングランドやニュージーランドといった強豪国の試合は人気が高く、すでに品薄状態となっている。

これからチケットを入手するには、どうすればいいのか。
まず知っておかねばならないのは、日本時間の「1月19日(土)午前10時」から一般販売がスタートするということだ。これまでは抽選形式だったが、これから始まるのは「先着順」。残りのチケットをめぐっての“争奪戦”になる。観戦したい試合を決めておき、販売開始後速やかに購入の手続きをとることが必要だ。

とはいえ、出遅れてしまい、欲しかったチケットの在庫がゼロになっていたとしても、あきらめることはない。チャンスはまだまだ残されているのだ。
その理由を知るには、今大会のチケット販売の仕組みを理解する必要がある(図参照)。

【図:チケット販売の仕組み】

約180万枚のチケット販売はまず、組織委と、ラグビーの国際統括団体ワールドラグビーから委託を受けたラグビーワールドカップリミテッド(RWCL)に個人向けと団体(ホスピタリティ、各ユニオン、スポンサーなど)向けを対象に、それぞれ半分ずつ分け与えられた。
1月19日から先着順で販売されるのは、組織委の持ち分のチケットだと考えていい。高額なほうから順に、カテゴリーA、カテゴリーB、カテゴリーC、カテゴリーDの4つの席種がある。

一方、RWCLは主に3つの販路を持っている。
1つ目はホスピタリティチケット。これは、ただ試合を観戦するだけでなく、特別な料理やラウンジの利用などさまざまなホスピタリティ(おもてなし)サービスと組み合わせたパッケージとして商品化され、専門会社を通じて販売される。
2つ目は、「大会参加ユニオンを始めとした各国ユニオンへの割り当て」。一定数のチケットがそれぞれの国、地域を管轄する競技団体に振り分けられる。
そして3つ目は、「スポンサー」。その名のとおり大会スポンサーに付与されるチケットで、各社のキャンペーンなどに利用される
RWCLは、全体の半分(約90万枚)の販売権を当初は保持するわけだが、これは余裕を持ってキープしている状態と言える。現実的には、90万枚を売りきることは想定されておらず、売れ行きの状況を見極めつつ、在庫の一部はある時期ごとに、組織委の持ち分に移行されることとなっている(これを「ハンドバック」という)。つまり、あるカードの組織委の持ち分が一度はゼロになったとしても、どこかのタイミングでハンドバックが行われることにより、在庫が復活する可能性があるのだ(ハンドバックがいつ、どれくらいのボリュームで行われるかは公開されていない)。

もう一つ覚えておくべきこと、それは「公式リセール」というシステムの存在だ。
チケットを購入したものの、何らかの理由で観戦に行けなくなった人は、手持ちのチケット(一部でも可)を売りに出すことができるシステムが公式に用意されるのだ(2019年5月サービスオープン予定)。折しも2018年12月に、チケットの不正転売を禁止する法律が国会で可決されたばかり。2%の手数料がかかるものの、オフィシャルな買い取りの場が設けられ、不要になったチケットを持て余してしまう心配をしないで済むのは購入者にとってはうれしいところだろう。
そして、それは同時に、まだチケットを入手できずにいる人に新たな購入のチャンスを与えることになうえに、プレミアムなチケットを買えるかもしれない。

ハンドバックと公式リセールという2つの仕掛けによって、どんな人気カードでもチケット購入の望みが完全に断たれることはないわけだが、やはりまずは1月に始まる販売で目当てのチケットを確保できるのがベスト。うまく購入するためのコツはあるのだろうか?

前出の大内氏はいくつかのポイントを挙げる。
「試合を選んで購入に進むわけですが、『どの試合を狙うか』が重要なポイントになると思います。もちろん、日本戦など人気の試合にチャレンジするのもありですが、在庫は僅少なのでかなり厳しい戦いを覚悟していただかなければなりません……」
世界中からアクセスが殺到するであろう人気カードに“突撃”するのではなく、早い段階で、より確実性の高い試合のチケットを抑えることも検討いただいたほうが、と大内氏は提案する。
その際に参考にすべき情報がある。一つは、事前にアナウンスされる「各試合の在庫状況」だ。これは在庫の多寡を示す3段階の指標で、「低」は残りわずか、「高」は在庫あり、「中」は在庫が減ってきていることを意味する。もう一つが、会場となるスタジアムの収容人数だ。大会は12のスタジアムを舞台に開催されるが、そのキャパシティは横浜国際総合競技場の72,327人から、釜石鵜住居復興スタジアムの16,020人までさまざま。大きいほうが販売するチケットが出やすく、小さいほうが満員になりやすいのが道理であり、会場のサイズによって狙いをつける方法は有効だろう。

加えて、席種によっても、販売スピードは差が出る。大内氏は言う。
「試合が見やすく高額な席であるカテゴリーAと、最も安価なカテゴリーDが先に売れていく傾向があります。カテゴリーBかカテゴリーCを検討されるといいかもしれません。」

ここからは先着順、いわば「よーいドン!」の競争になるため、果敢にスピード勝負を挑むか、あるいは在庫に比較的余裕のあるカードに狙いをつけるか、いずれにしても準備と戦略が物を言う。あとは、ハンドバックと公式リセールの恩恵を受けるべく、こまめなチェックを地道に続けていくことがカギになる。
ただ、ラグビーワールドカップの楽しみ方は、日本や強豪国の試合を観ることだけではない。耳になじみのない国同士の試合であっても、屈強な男たちが国の誇りをかけて戦うのはすべての代表チームに共通して言えることであり、なればこそ、どのカードもすばらしいゲームになる可能性を秘めている。
 
スタジアムの雰囲気、世界中から集まるファンとの交流や、そこから感じるラグビー文化の奥深さ。カードにかかわらず、その場に居合わせるという体験自体に大きな価値がある。日本でラグビーワールドカップが開催されるというまたとない機会、自分の目と耳と肌で世界最高峰の戦いが醸し出す特別な空気に接してみてはどうだろうか。
すべては一枚のチケットを手に入れることから始まる。

日比野恭三

著者プロフィール 日比野恭三

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。 6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、 またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。