これにより、試合数は前年比1試合増の39試合となり、3月7日~10日の開幕戦「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」から11月28日~12月1日の最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」まで、1週も空くことなく試合が開催されることになった。

開催が危ぶまれていた3大会の継続が決まったことは、ゴルフファンにとって非常に喜ばしいことである。ただ、気になるのは、争点となっていた放映権の一括管理に関して、問題が解決したとは言えない点だ。

LPGAの小林浩美会長は「この度の交渉を経て、全ての主催者様がトーナメント中継映像における選手の肖像の価値を認めてくださった」とコメントしているのに対して、3大会の主催者は「放映権帰属問題は継続審議」とコメントしている。これではLPGAが望む「国内外への動画配信を一括管理することができる体制」が確立されたとは言えないだろう。

そもそも、なぜLPGAとテレビ局が放映権でモメているかと言えば、LPGAツアーの放映権が1967年の協会創立以来、所在が不明確なまま51年間が経過しており、曖昧な状況下でテレビ中継が行われていたのは、初期のトーナメントがテレビコンテンツ事業として始まったことに起因しているからだという。

だが、テレビコンテンツ事業であるがゆえに、多くの試合がテレビ局の都合で、決まった時間内に終わるように録画放送されている。このような状況に対し、「近年、多くのファンの皆様から、現状の地上波放送はインターネット等で結果が出た後に録画放送されるため魅力的でない、生放送でLPGAツアーを観戦したいとの意見をいただくことが多くなっていました」とLPGAは記者発表で語っている。

実際、LPGAツアーをテレビで視聴するのはストレスを感じることが多い。近年はCS放送のゴルフネットワークで「とことん1番ホール生中継」という人気番組が放送されたり、系列局のCSやBSで生中継してから地上波の視聴につなげる試みも行われたりするようになったが、肝心の優勝決定の瞬間は地上波の録画放送がほとんどだ。

録画放送だと18番ホールで決着がつくのかプレーオフにもつれ込むのか推測できてしまうし、プレーオフも決着ホールしか放送しないケースが多いので、ティショットやセカンドショットの時点で勝者が分かってしまう。

また、録画放送を見るかどうかを決めるために途中経過が知りたくても、インターネットのスコア速報は中継ホール直前で止まってしまう。そんなことを調べている間にネットニュースやSNS投稿で優勝者の名前を見つけてしまい、録画放送を見る気が失せてしまうケースも少なくない。

このような不満を解消するために、LPGAが放映権を一括管理し、インターネットで国内外に生放送し、ゴルフファンに生の醍醐味を提供しようとするのは当然の流れだ。しかも、放映権をインターネット配信業者に有料販売すれば、その対価によって協会の持続的な財務基盤が整い、選手や会員に投資して、さらにLPGAツアーの価値を高めることができるというのだから、LPGAの方針が間違っているとは思えない。

ゴルフに限らず、スポーツの試合を生放送で見たいというのは視聴者として当然の欲求である。野球やサッカーでゴルフのような録画放送が行われていたら、視聴者から苦情が殺到するだろう。

LPGAがゴルフファンの欲求に応えようとしているのに、テレビ局が異を唱えるのであれば、テレビ局が生放送すればいい。それができないのであれば、テレビ局は既得権益を盾にしてツアーの発展を阻害する抵抗勢力でしかないと感じる。

放送技術の発達により、今は世界中のスポーツがリアルタイムで見られる時代になった。それと同時に、テレビだけではなくスマートフォンやタブレットでもスポーツ中継が見られるようになっている。テレビ局は視聴者をテレビに縛りつけたいのだろうが、どのデバイスでスポーツを見るかは視聴者が決めることだ。

プロ野球が地上波でほとんど放送されなくなり、Jリーグも2017年からDAZN(ダ・ゾーン)で全試合が放送されている。Jリーグの視聴方法の変更は一部のファンから懸念する声も上がったが、実際に放送が始まると好感を抱いた人のほうが多かった印象が強い。

ゴルフはサッカーのように試合時間が決まっておらず、天候状況などによってプレーの進行速度も変わる。3日間54ホール、4日間72ホールで決着がつくかどうかも決まっていない。そもそも、決められた時間内に終わらせることが難しいスポーツコンテンツである。

それをテレビコンテンツにするため録画放送という手法が取られたという事情は分かるが、世界中のスポーツがリアルタイムで見られる時代に、日本で行われているスポーツが録画放送なのはあまりにも時代錯誤だ。全試合が生放送される日がいち早く訪れることを期待したい。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。