開幕戦の「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」は、地元出身の比嘉真美子がツアー通算5勝目を挙げ、優勝賞金2160万円を手にした。

一方で、今季は開幕戦の前週にツアー外競技「UUUM トーナメント リクナビNEXT CUP in 沖縄」が開催され、この試合が2日間競技で賞金総額1500万円、優勝賞金300万円と高額であったため、女子プロの話題を集めた。

主催者は人気ユーチューバーのクリエイターサポート事業などを手がけるUUUM(ウーム)株式会社。特別協賛に株式会社リクルートキャリアが入り、従来のトーナメントとは違った形でゴルフの楽しさを伝えた。

この試合に41人の女子プロが出場し、悪天候のため27ホール決着となった2日間競技を服部真夕が通算7アンダーで制し、優勝賞金300万円を獲得した。賞金ランキングには加算されないが、大きな収入と言えるだろう。

出場した女子プロに話を聞いたところ、「QT(クオリファイングトーナメント)で上位に入れたので、第1回リランキングが行われるアース・モンダミンカップまで全試合(計17試合)に出場する予定ですが、正直なところツアーで賞金がどれだけ稼げるかはやってみないと分からない。でも、17試合に出場するためには、かなりの経費がかかる。開幕前にこういう試合があるのは本当にありがたい」と感謝の言葉を口にしていた。

この試合に限らず、昨今は女子プロに対する注目度が格段に高まり、選手が収入を得る方法も多様化してきたと感じる。プロテストに合格すると、実績の有無にかかわらずスポンサーが集まり、プロテストに合格していなくても、QTで上位に入ってツアーへの出場権を獲得すれば、すぐにスポンサーがつくという。

前述の選手によると、QTで上位に入った直後に所属契約とウエア契約が決まり、周囲の関係者を中心に後援会が組織され、ツアーの遠征費を集めるための支援活動が始まったとのこと。これで前半戦の経費は十分にまかなえそうだ。

2000年代前半の女子ツアーは、レギュラーツアーで賞金シードを獲得しなければ生活できないという雰囲気だった。宮里藍がアマチュア優勝を達成した2003年の賞金シードのボーダーラインは973万円。それが今や、賞金シードのボーダーラインは2222万1100円と、2倍以上になっている。

また、賞金シードを獲得できず、QTで上位に入れなかった選手も、2018年から始まったリランキング制度により、挽回の余地が残されている。以前は下部ツアーであるステップ・アップ・ツアーを主戦場にしながら、優勝すればレギュラーツアー4試合に出場できるというシステムだったが、今は主催者推薦などでレギュラーツアーに出場し、一定の賞金を獲得すれば、リランキングで後半戦に出場できる可能性がある。

さらに、昨今はステップ・アップ・ツアーの試合も増え、2019年は20試合がラインナップされている。この賞金だけで生活できる選手もいる。これらの試合はLPGA主催なので、放映権問題も発生せず、ほとんどの試合がCS放送や地元ローカル局でリアルタイムに見られるので、レギュラーツアーで上位に入れない選手よりも、ステップ・アップ・ツアーで上位の選手のほうが、露出が多いという逆転現象も起きている。

加えて、ステップ・アップ・ツアーにも出場できない選手にチャンスを与えるテレビ番組も増えている。女子ゴルフファンの間ですでに人気が定着しているのが、「女子プロ10人が100万円争奪」をキャッチフレーズにしているBS日テレの「ゴルフサバイバル」。賞金が獲得できるのは10人に1人だが、他の9人も活躍次第で3~4週の露出が見込める。

こういった環境の変化もあり、かつては特定の選手にスポンサーが集中しがちだったが、今は幅広い選手にスポンサーが分散する流れになっている。

昨今は芸能人の不祥事が相次ぎ、企業PRに芸能人を起用することはリスクもともなう。それに対して、女子プロは異性交遊や薬物使用などのリスクは格段に少ないし、健康的で明るいイメージがある。選手が活躍して露出が増えれば宣伝効果が高まるし、活躍できなくても若手選手の成長を支援することは地域・社会貢献活動の一環になる。

さらに、自社の得意先を招待して開催するプロアマ大会などに、スポンサー選手が参加してくれれば、顧客満足にもつながる。選手側も、プロアマに出場するとギャラがもらえるので、それを遠征費の足しにすることができる。

懸念材料があるとすれば、人気のない時代を知らず、ちやほやされることが当たり前とは言わないまでも、感謝の気持ちが少し薄れているように感じる選手が一部に見受けられることだろう。そのことさえ肝に銘じていれば、女子プロが収入を増やす方法はさらに多様化していくかもしれない。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。