2位の河本結は16試合に出場して4731万9000円を獲得。3位のペ ソンウは13試合で3819万6666円。4位の吉本ひかるは16試合で3079万1333円。5位の宮里美香は13試合で2848万2666円。この5人が開幕から4カ月で2000万円以上の賞金を稼ぎ、来季の賞金シードをほぼ確定させた。

リランキング対象選手以外では、さらに多くの賞金を稼いでいる選手がいる。「アース・モンダミンカップ」で今季3勝目を挙げた申ジエは、高額賞金3600万円を加算し、8980万7332円で賞金ランキング1位に浮上。2位の鈴木愛も今季3勝を挙げており、6420万1999円で続いている。

女子ツアーはこのところ活況を呈しており、賞金ランキング上位選手は年間獲得賞金1億円を超える選手も少なくない。2018年は1位のアン ソンジュ(1億8078万4885円)、2位の申ジエ(1億6532万5295円)、3位の鈴木愛(1億4023万4839円)、4位の比嘉真美子(1億996万9185円)、5位の成田美寿々(1億627万8614円)が獲得賞金1億円を超えた。

男子ツアーは女子ツアーの人気に押されているが、それでも昨年1位の今平周吾(1億3911万9332円)と2位のショーン・ノリス(1億394万2450円)が年間獲得賞金1億円を超えた。

一方で、プロゴルファーの1億円は、プロ野球選手やプロサッカー選手の1億円と単純比較できないという声も聞く。

プロゴルファーになり、試合に出場できるようになった選手たちがまず驚くのは、試合に出場するためにかかる経費の多さだ。チームスポーツであれば、試合会場までの遠征費は基本的にチームが負担するが、プロゴルファーはすべて個人負担。北海道から沖縄まで、自分たちで飛行機や新幹線のチケットを手配して移動する。

ツアーキャディにサポートを依頼する場合は、キャディの遠征費も選手が負担する。ただ、実際にはツアーキャディとの契約は1試合10万円で、遠征費や宿泊代もすべて込みというのが一般的のようだ。そして選手が優勝すると賞金の10パーセント、トップ5だと賞金の5パーセント、トップ10だと賞金の3パーセントというインセンティブ契約を結んでいるケースが多い。

宿泊代はもちろん選手も必要。4日間競技の場合、試合前日がプロアマ、その前日が練習日なので、練習日から最終日まで6泊することになる。仮に1泊1万円だとしたら、宿泊代だけで6万円かかる。予選落ちしたら4泊で済むが、その代わり獲得賞金がゼロなので赤字が確定する。

この経費を節約するため、選手たちはできるだけ安いホテルを探す。試合会場周辺のビジネスホテルに行くと、「あんなにたくさんの賞金を稼いでいる選手が、こんなに安いホテルに泊まっているんだ」と驚くことがある。もっとも、その理由の一つは、野球やサッカーと違ってゴルフトーナメントは都市部だけで開催されるわけではないので、ホテルの選択肢がそもそも限られるということもある。

それに加えて、意外と知られていないのが、プロゴルファーは試合に出場すること自体にお金を払っていたり、練習ラウンドにもお金を払っていたりすることだ。練習日に選手たちがゴルフ場のフロントで、プレー代やレストラン代や宅配便代などを精算している姿を見ると、「なかなか大変な商売だな」と思わずにいられない。

プロ野球選手やプロサッカー選手が練習するのにお金を払うというのは、あまり聞いたことがない。聞いたことがあるとすれば、年俸交渉が長引いた際、自主トレのグラウンド代を自腹で払うというくらいだ。

プロゴルファーに経費の話を聞くと、1試合に出場するのに、いろいろ含めて20~30万円の経費がかかるという。これが女子ツアーで年間39試合、男子ツアーで年間24試合あるので、女子選手が全試合に出場したら780~1170万円の経費がかかることになる。

そんなわけで、年間獲得賞金が1億円を超えれば、高額所得者なのは間違いないが、そのすべてが選手の懐に入るわけではないのだ。ましてや、年間獲得賞金1000~2000万円だと、必ずしも裕福な暮らしができるわけではないという。

サラリーマンの金銭感覚だと、年収1000万円は高額所得者で、年収2000万円ともなればハイクラスという認識だが、プロゴルファーは気楽な家業ではないようだ。

一方で、プロゴルファーは個人アスリートなので、活躍してスポンサーがつくと、収入が一気に跳ね上がる。契約金だけで数億円、数千万円という契約は、ひと握りのトッププロに限られるが、数百万円、数十万円単位のスポンサーを何社か持っているプロゴルファーは増えている。

また、スポンサー契約の形態もさまざまで、ある選手のスポンサー企業に話を聞くと、優勝で300万円、2位で200万円、3位で100万円の特別ボーナスを出す契約になっているという。こういった形で収入を上積みできるのは個人アスリートの特権だ。

プロゴルフの世界は、お金を稼げる選手は強烈に稼ぎ、お金を稼げない選手はツアーからの撤退を余儀なくされる。そんなシビアな戦いがチームスポーツとは違った魅力かもしれない。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。