ようやく秋めいて涼しくなってきたが、今年の夏も本当に暑かった。炎天下の東京を歩きながら「来年はこの猛暑のなかでオリンピックをやるんだ」と心配になった人も少なくないだろう。大会組織委員会も同じだったらしい。海の森水上競技場の観客席に、降雪機で人工雪を降らせるという実験を行った。氷三百キロを使って5分間。かき氷のような人工雪を降らせれば、観客も快適に観戦できる……はずだったのだが、雪が風で飛ばされ、気温低下にはほとんど効果なし。おまけに服が濡れる、床が滑りやすくなるといった“副作用”も見つかり、さんざんな実験になってしまったようだ。

「もともと観客席に屋根を作る予定だったのですが、予算の関係で断念したんでしたよね。私も以前、スポーツの施設をつくるときに屋根付きの施設を作ろうとしたら、思っていた以上に建築費がかかると分かって驚いたことがあります。屋根付きの施設は強風対策や吹上の風の対策のため、かなりの強度が必要なんです。そのため建築費もかさむ。この施設もそもそもその見積もりが甘かったのかもしれませんね。だから断念せざるを得なかった。それにしても人工雪とは……。風のために屋根をあきらめたのに、今度はその風で雪まで吹き飛ばされてしまったというのが皮肉な感じですね」

とはいえ、炎天下での観戦はかなり熱中症のリスクがある。人工雪以外に、なにか対応策はないのだろうか?

「プロ野球などの世界では観客へのギブアウェイ(手土産)が一般的になっています。スポンサーに協力してもらい、ユニフォームやキャップを配るのですが、これを目的に来る人もたくさんいて、人気となっています。オリンピック・パラリンピックでも、日よけや暑さ対策のためのファン付きやミストが出る帽子など無料配布してみてはどうでしょうか。五輪関係は、スポンサー関係がガチガチになっていてなかなか難しいというのは理解できるんですが、観客の健康が第一ですから、特別枠で帽子だけのスポンサーを募ってもいいのではないでしょうか」

暑さ対策の目玉とされてきた道路の「遮熱性舗装」が、逆に熱中症のリスクを高めるとする論文も発表された。すべてが後手後手で、その場しのぎばかりに見える暑さ対策。大きく堅い組織ゆえに組織内で忖度が生まれ、風通しが悪くなっていることによって対応が後手にまわっている可能性もある。このままでは観客にもアスリート並みの体力が必要となるオリンピックになってしまう。せっかくチケットが当選したのに健康状態を考えて行かないという人も出てきてしまうだろう。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部