1月24~26日に行われた競泳の北島康介杯を池田氏は、深夜のテレビ放送で観たという。
「私は本格的に水泳をやっていた時代もあったので、かなり面白く観ました。日本人選手の記録がすごく伸びているなとか、やっぱり瀬戸大也は強いなとか、いろいろなことを考えながら深夜の放送を楽しみました」
テレビを観て感じたのは、各選手のコンディションの良さだという。
「普段のオリンピックなら、大会前のこの時期は海外遠征で調整し、海外で試合に出て、海外中心に徐々に調子を上げていくことも多い。でも慣れない海外で環境や食事が変わることで逆にコンディションを悪くする選手もいるんです。北島康介杯を観ていると、地元や日本拠点での調整でみんな調子が良さそうですし、ここからさらに伸びるんだろうなと感じさせられました。これはどの競技も同じ。日本のアスリートが最高の環境で準備をしているいまから注目していけば、オリンピックは絶対に楽しいですよね」
ただ残念なのは、この放送が深夜の録画放送だったということ。
「水泳に限らず、普段は放送しないような競技でもオリンピック前はどんどん放送してほしいですね。オリンピックが始まれば、盛り上がるのは当たり前。でもこの時期から競技や選手に興味を持つことができれば、オリンピック後も興味を持続することができる。オリンピックを一過性のブームにしないためにも、ビフォー五輪の盛り上げが大切だと思います」
なぜプロ野球の松坂大輔がいまだにニュースバリューがあるのかといえば、横浜高校時代からの“物語”を多くの人が共有しているからだ。リオオリンピックで金メダルを獲得した萩野公介がスランプに苦しむなか、ライバルの瀬戸大也は絶好調を維持。ここから萩野がどうやって盛り返すかなど、水泳界だけでもさまざまな物語がある。オリンピックまでの“物語”を知ることで、より関心が深まり、それがオリンピック後まで続くのは間違いないだろう。
「少子高齢化に歯止めがかからない日本では、東京オリンピック以降、スポーツ、スポーツエンタテインメントのマーケットが低下することが懸念されます。下手をすると今回たくさん増強したり新設したりした施設が“負の遺産”になりかねない。そうならないためにも、テレビ放送を含め、事前に考え準備をしておくことが大事。オリンピックを目標にしていいのはアスリートだけ。そのまわりで競技を支える人、特にリーダーシップを握っている人たちは、10年後、20年後のことを考えて、いまどんどん手を打つべきだと思います」
ラグビー界は、2015年のブームを一過性にした反省から、昨年のワールドカップ以降は積極的にPRをし、トップリーグの盛り上げに成功している。各競技団体、特に現在マイナーなスポーツほど、アフター五輪を視野にいれた施策が必要となるだろう。
取材協力:文化放送
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”ビフォー五輪”の盛り上げが“アフター五輪”の日本のスポーツ界を決める
いよいよ開催まで半年をきった東京オリンピック。コロナウイルスの影響やマラソンのシューズ問題など、アスリート不在の話題ばかりが取り沙汰されているが、横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、スポーツビジネス改革実践家の池田純氏は、五輪が始まる前のいまこそ各競技の魅力を伝える大切な時期だと主張する。
(C)Getty Images