On Track Nightsは「レースの概念をがらりと変える」をコンセプトに2023年から世界5都市で展開している競技性とエンターテイメントが融合した型破りな陸上イベントだ。一般的な陸上競技の大会と異なり、「フェス」のような雰囲気で絶大な人気を集めている。

 東京が6都市目の開催で、今大会もネオントンネル、通行できるゲートブリッジ、ド派手なゴールゲートを用意。お祭りムードのなか、近距離でレースを「観る」ことができる。それは〝新体験〟になるだろう。

 それから出場選手も非常にハイレベルだ。今回はオーストラリアから世界クラスのランナー4名が参戦する。女子800mは1分58秒56のベンディアリー・オボヤ、男子1500mには3分33秒64のジェシー・ハント。日本記録を上回る自己ベストを持つ選手が出場する。他にもパリのランニングクルー『Eight Lines』から4名が参加。レースはヒートアップするだろう。

 なにしろ日本記録更新で100万円の賞金が出るからだ。日本人選手たちのモチベーションは非常に高い。では、どんなレースが期待できるのか。

 On Track Nights: MDCを共同主催するTWOLAPS代表の横⽥真⼈⽒(On アスリートストラテジー アドバイザー)はこう解説する。

「グランプリ800mと1500mはペースメーカーとペーシングライトをつけます。女子1500m以外は日本記録を狙えるペースに設定する予定です。なかでも男子1500mは飯澤選手と荒井選手から日本記録(3分35秒42)ではなく、『3分33秒50のペースにしてほしい』という要望が出ています。このタイムはパリ五輪の参加標準記録です。世界大会を目指す意志のある選手が男子1500mには集まってくれたのかなと思っています」

 男子1500mは日本選手権のワン・ツー・スリーに入った飯澤千翔(住友電工)、荒井七海(Honda)、館澤亨次(DeNA)が集結。それから5000mで世界陸上に2度出場している遠藤日向(住友電工)、800m日本記録保持者の川元奨(スズキ)も参戦する。なかでも飯澤は日本歴代2位の3分35秒62を持ち、日本選手権でも完勝した。条件に恵まれれば、日本記録を大きく更新する可能性を秘めている。

 男子800mは1分46秒台の自己ベストを持つ薄田健太郎(DeNA)と松本純弥(FAJ)、昨年の日本インカレ王者・北村魁士(山梨学院大)らが好タイムを狙う。女子800mには日本歴代7位のタイムを持つ塩見綾乃(岩谷産業)、同9位の川田朱夏(ニコニコのり)、同10位の卜部蘭(積水化学)らがエントリー。先日、久保凛(東大阪大敬愛高)が樹立した1分59秒93の日本記録にチャレンジする。

 グランプリレースはどの種目も見どころ満載だ。また、インフルエンサーNo.1決定戦1000mには男子800m元日本記録保持者の横田氏が登場する。上野裕一郎(ひらまつ病院)らと激しい争いを見せるだろう。

 「僕は去年ペースメーカーで1000mを2分25秒で走っているので、それぐらいでは走りたいなと思っています。ただ言い訳をすると、朝から大会運営に携わっているので、ハンデを背負っています(笑)。それでも勝ちにいきますよ!」と横田氏は楽しそうだった。

 他にもパン食い競争は「新谷仁美vs.増田明美」「為末大vs.柏原竜二」という〝夢の対決〟が予定されている。競技の合間にはチアリーディング、ソングリーディング、ロックダンスがあり、会場は大いに盛り上がるだろう。

 インフィールドではキッズ向けのコンテンツ(スーパー鬼ごっこ、かけっこ教室、50mタイムアタックなど)やDJコンテンツなどがあり、Onブースでは最新レーシングシューズの『Cloudboom Strike』と人気モデルの『Cloudmonster Hyper』の試し履きができる。スタジアムの外ではカレー、ホットドッグ、かき氷などを販売するキッチンカーがスタンバイ。ビールを片手に観戦するのも楽しいだろう。

 「来ていただければ、これまでの陸上競技とは違った大会を体感できると思います。18歳以下は無料ですので、家族の皆さまで遊びに来てください!」と横田氏。陸上好きなら、7月27日(土)は世田谷区の大蔵運動公園陸上競技場に行くしかない(※現在、観戦チケットを発売中)。

 開場は11時30分で、グランプリレースは17時13分から始まる。大注目のグランプリ男子1500mAは最終種目で19時59分スタート予定。〝日本新記録誕生〟の瞬間を見逃すな。


酒井政人

元箱根駅伝ランナーのスポーツライター。国内外の陸上競技・ランニングを幅広く執筆中。著書に『箱根駅伝ノート』『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。