文=斎藤健仁

絶対王者は来季も大学ラグビー界の中心に

 2017年1月9日(月・祝)、東京・秩父宮ラグビー場でラグビーの大学選手権の決勝が行われ、帝京大が東海大を33-26で下して見事に8連覇を達成した。帝京大の8連覇は日本ラグビー界において、新日鐵釜石(現・釜石シーウェイブズ)が全国社会人大会で、神戸製鋼が日本選手権で成し遂げた7連覇を超える前人未踏の数字。試合後に優勝回数にちなみ岩出雅之監督、亀井亮依主将らが8回も宙を舞った。

 ラグビーの全国大学選手権最終日は9日、東京・秩父宮ラグビー場で決勝が行われ、8連覇を狙う帝京大(関東対抗戦1位)が初優勝を目指す東海大(関東リーグ戦1位)を33-26で破り、8季連続8度目の優勝を飾った。
帝京大、東海大を33-26で破り8連覇/大学選手権

 今年度の大学選手権は2012年度から始まった3ステージ制ではなく、2011年度大会以来の一発勝負のトーナメント方式が復活し、参加チームが18から14チームへと減少した。その14チームは前年度の結果から関東大学対抗戦Aグループの1位~4位、関東大学リーグ戦1部の1位~4位、そして関西大学Aリーグの1位~3位、さらに地域リーグの代表3チームに決められた。

 序盤の大会を盛り上げたのは関西勢だった。3回戦で京都産業大がスクラムを軸に26-22で明治大を下したことは大きな話題になった。1985年度から明治大に6連敗しており、7度目の対戦で初勝利となった。さらに関西王者の天理大が慶應大を、関西2位の同志社大が早稲田大を下して準決勝に進出。関西勢が準決勝に進出するのは5大会ぶり、2校がベスト4に入ったのは10大会ぶりとなった。大西健監督によって鍛え上げられたスクラムが武器の京都産業大、能力の高いBK陣を擁した同志社大、小松節夫監督の下で伝統の展開ラグビーだけでなくスクラムも強化した天理大と、特色のあるチームが打倒・関東勢を掲げて強化を続けたひとつの成果と言えよう。

 だが、決勝は1988年以来29年連続となる関東勢同士の対戦となった。決勝に進出した帝京大と東海大は、明らかに他大学と比べて頭一つ抜けていた。

 帝京大は3連覇あたりまでは鍛え上げられたフィジカルを武器に、FW中心のラグビーで大学ラグビー界を席巻していた。4連覇からはボールを動かすラグビーを見せ、今年度は5トライ中4トライをBKで挙げて逆転勝利。組織ディフェンスを高めつつ、ボールを動かすラグビーを追求し、少しずつ進化を遂げてきた。

 また、帝京大はボールキャリアのランやスキルの能力だけでなく、2~3人目の寄りやブレイクダウンのスキルも年々と向上している。そして、来季は再びスクラムに時間をかけると帝京大の岩出監督は言う。
「今季はスクラムがウィークポイントになることを覚悟にやっていました。来季は今やっていることをベースに、スクラム、ラインアウトのセットプレーにも手を入れていきたい」
新シーズンのキャプテンにU-20日本代表でもスキッパーだったHO堀越康介が、副キャプテンにトライを量産するFB尾﨑晟也が務める。いずれにせよ、来季も優勝候補筆頭であることに間違いない。

有力選手が残る東海大

 絶対王者の帝京大に唯一互角に戦うことができたのが東海大だった。スクラムでは圧倒、組織ディフェンス、ブレイクダウンでも十分に戦うことができていた。ただし、モールを自由に組ませてもらうことができず、外国人選手もマークされた。「スキを見せたら一気に畳みかけられる。(帝京大とは)集中力の差」と木村季由監督は肩を落としたが、十分に賞賛されるべきパフォーマンスだった。

 東海大は今季出場していた半数以上の選手が3年生以下であり、No.8テビタ・タタフ、WTBアタアタ・モエアキオラ、FB野口竜司といった日本代表経験者もおり、来季こそは打倒・帝京大を目標に掲げる。 

 帝京大と東海大はフィジカル、タックルを含むディフェンス、ブレイクダウンで他を圧倒しており、他の大学は戦術やセットプレーを磨きつつも、この3つのエリアで互角に戦うことができなければ勝つことは難しい。この2校を軸に来季の大学ラグビーも展開することは間違いない。


斉藤健仁

1975年生まれ。千葉県柏市育ちのスポーツライター。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパンの全57試合を現地で取材した。ラグビー専門WEBマガジン『Rugby Japan 365 』『高校生スポーツ』で記者を務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。『エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡』(ベースボール・マガジン社)『ラグビー日本代表1301日間の回顧録』(カンゼン)など著書多数。Twitterのアカウントは@saitoh_k