―2024年はどんな1年だったか

加藤 望んだ結果ではなかったけど、グランドスラムでベスト8(全仏オープン)に久しぶりに入れたので、そこは収穫だった。グランドスラムで勝っていけるイメージが少し出たし、いい試合もできたので、手応えはあった。23年に(全仏オープンの)ミックス(混合ダブルス)で優勝できたので、ダブルスの方でもと思っていたけど、シードにつかないとやっぱり苦しい部分もあったし、1年間固定したパートナーもいなかった難しさもあった。パリ五輪は年齢的にも時期的にも結構いいところだったので、出場できなかったショックはありましたね。

―手応えを感じた点とは

加藤 シード組や(世界ランキングの)トップ10の選手たちとやる時でも通用する場面も多かったし、ここは「私の方が上だな」とか、客観的に見られるようにもなった。勝てるイメージ、向かっていくイメージがついた。最近シングルスのプレーヤーがダブルスも出ているけど、そういう選手に対しても打ち負けないストローク力が上がった感じがある。ダブルスで押されると、前に動かれてボレーで決められるケースが多いけど結構減ってきた。リターンも(混合ダブルスで)男子のサーブを受けるようになって、速いサーブや回転のかかったサーブでも対応できるようになってきています。

―女子ダブルスに特別な思いを抱いている

加藤 23年まではぼやーっとグランドスラムで活躍したい、五輪に出たいという感じだったけど、ミックスで優勝して気持ちいい瞬間を味わえたというか「1回も世界大会で負けなかった」みたいな気持ちになった。これをもっと味わいたいと思うようになったし、1度優勝を経験したことによって、優勝を狙えるんちゃうん?とぼんやりしていたものが明確になった。24年は優勝したい気持ちが強過ぎて空回りしているところもあったので、23年までと24年のちょうど間の気持ちくらいでプレーしないといけないかな(笑)。でもやっぱりプロテニス選手って言ったら、グランドスラムで優勝すること。ダブルスに専念したからには、そこを目指していきたいですね。

―25年はペアを固定する

加藤 (1月の)全豪オープンは違うけど、2月からスペインのクリスティーナ・ブクサ選手と1年間組むことになった。ブクサ選手はシングルスも出ているので、ダブルスと両方出ながらだけど、秋の香港テニス・オープンで組んだ時は初めての割にはうまくいったし、相性も結構良かったので、組むことになりました。

―優勝のために必要なことは

加藤 大事なところを見極めて、要所での集中力を上げることが1つの課題。ポイント取得率で言えばトップと差はあまりないので、その少しの部分をいかに大事なところで取れるかどうかだと思う。大事なところを見極めることができれば集中してできると思うので、そこを磨いて見極めていければ優勝の可能性はあると思う。グランドスラムはデュースもあるので、しっかりポイントを取らないといけないが、いいプレーを10回も20回も出さなくても、チャンスは2、3回転がってくると思うので、そこで決めることが大事になると思います。

―どうやってアプローチしていくのか

加藤 今までは「ここで取らないと」って力が入って、若干前のめりになって周りがあまり見えていなかった感じがした。「ここで(サービス)エースを取れたら絶対流れ変わる」みたいな単純な感じだった。難しいけど、ちょっと一歩引いてもうちょっと冷静にできたら、できることも変わってくるんじゃないかなと最近ふと思った。12月の頭くらいからオフシーズンが終わって練習を再開して、軽い試合っぽいメニューをやる時に、30―30とか40―40の大事な局面の時に結構力入っていて、思ったようにできなかったことが何回か続いた。まだ気持ちもそこまで試合モードになっているわけじゃなかったので、「これちょっと力入りすぎやな」とか話しているうちに気がついたというか、前から思っていたけど、「力入りすぎやな」と。取りたいという思いが強すぎると感じたので、もうちょっと引いてもいいんじゃないかなと思うようになった。25年にそれができるかどうか、試合の緊張した場面で冷静にいられるかはわかんないけど、そこはトライしたいところですね。

―コート外でもユーチューブチャンネルを開設するなど、精力的に活動している

加藤 ユーチューブは前からやってみたいなと思っていたけど、テニスをやりながら動画の編集をするのは大変なので思いとどまっていたし、飽きっぽい性格なので、続かないだろうなと思っていた。でも今回(事務所から)提案してもらって、企画とかも考えようと言ってもらったので「やりたかったことできる」と思ってすぐに「お願いします」と言いました。

―どんな動画を撮りたいのか

加藤 スポーツ選手ってスポーツをしているところは見るけど、それ以外のところってどういう生活をしたり、どう過ごしているかわからないと思う。特にテニスは海外遠征多いので「海外でどうしているの?」って聞かれる。私は「結構時間あって暇やで」と答えるけど、いろんなところに行ける強みもあるので、遠征先の有名なところとか、試合以外のところの私も見てほしい。自然な部分が出ると思うので、そういうところも出していけたら。やったことないことは好きというか、新しいことには挑戦したいので、スポーツ選手ともコラボしたいかな。いろんなスポーツをお互いのフィールドでやるのは結構楽しそうですよね。

―ユーチューブ上での目標は

加藤 いろんな人に見てもらいたいので、まだまだ先のことだけど(一定の登録者数に達するともらえる)盾がほしいかな(笑)。でも盾がもらえなくても「面白いね」や「ここに行ってみたい」と言ってもらえるようなチャンネルにできたらいいですね。あとは私のYouTubeがテニスに興味を持ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。

―2025年はどんな1年にしたい

加藤 グランドスラムで優勝したいのもあるが(年間成績上位8選手で争う)WTAファイナルズに出たい。もしかしたらそっちの方が強いかもしれない(笑)。出たことのない大会なので。もちろんグランドスラムで優勝もしたいし、優勝したら多分WTAファイナルズに出られると思うけど(24~26年大会の会場である)サウジアラビアの試合はライトの演出がすごくて、テニスでは今まであまりなかった演出なので「ここで試合してみたいな」と思ったし、より出たいなって思いが高まりました。


◇プロフィール
かとう・みゆ 1994年11月21日生まれ。京都府出身。7歳でテニスを始め、各年代の全国大会で活躍。2013年にプロ転向し、16年カトビツェオープンの女子ダブルスでWTAツアータイトルを獲得。17年全豪オープンでは、穂積絵莉とのペアで4強入り。18年東レ・パンパシフィック・オープンでは二宮真琴とのペアで優勝を果たした。23年全仏オープンは女子ダブルスの3回戦で失格騒動に巻き込まれるも、混合ダブルスで初優勝した。156センチ。


中西崇太

1996年8月19日生まれ。愛知県出身。2019年に東京スポーツ新聞社へ入社し、同年7月より編集局運動二部に配属。五輪・パラリンピック担当として、夏季、冬季問わず各種目を幅広く担当。2021年東京五輪、2024年パリ五輪など、数々の国内、国際大会を取材。