出場枠はアジア、アフリカ、北中米カリブ海が各4チーム,オセアニアが1、南米が6、欧州が12、開催国枠1。原則的に2021年以降の各大陸連盟のチャンピオンズリーグ王者や、過去4年間のランキングを基に出場権が与えられた。2005年から日本などで行われていたクラブW杯は各大陸王者に開催国枠をプラスした6~7チームによる大会だったが、4年に1度の開催として、大幅にリニューアルしたのである。
欧州のランキングで、リバプール(イングランド)やバルセロナ(スペイン)が入っていないのは意外な印象も受けるが、「真のクラブ世界一決定戦」として約1カ月にわたる戦いが米国の12会場を舞台に繰り広げられている。
日本からは唯一、浦和レッズが2022~23年大会のアジア・チャンピオンズリーグ王者として出場権を獲得した。しかし、初戦でリーベルプレート(アルゼンチン)に1―3で完敗。中心選手である渡邊凌磨は「正直、向こうの方が“こういう試合に慣れている”なって感じた。こっちがちょっと浮き足立っている中でも、彼らはいつも通りの戦いをしていたし、そこに差を感じた。クリアボールひとつとっても、味方に繋ぐだとか、意図を持ったクリアというのがすごく大事になると感じた。Jリーグではピンチにならないような場面でも、そういう判断ひとつでピンチになるシーンが多かった。セカンドボールを拾う意識も前半は少なかったし、技術というより“意識”や“基準”の差を見せつけられたなと感じている」。普段、どういうプレッシャーの中でプレーしているか、という差が国際舞台で如実に出たといっても過言ではないだろう。
続くインテル・ミラノ(イタリア)には後半アディショナルタイムの失点で1―2の逆転負け。2連敗で早々に敗退が決まり、最終戦もモンテレイ(メキシコ)に0―4で敗れ、浦和は爪痕を残せずに大会を終えた。「より攻撃的に戦いことが今日の狙いだった。チャンスをつくれてはいたと思うが、残念ながらミドルレンジから最初のゴールを許してしまい、それが決定的場面となった。その後すぐに2点目を許してしまい、非常に難しくなった」(浦和レッズ・スコルジャ監督)。日本国内ではなかなかお目にかかれないようなミドルシュートをたたき込まれ、いいところなく敗れた。
Jリーグは、今季コンタクトプレーで余計な笛を吹かずにアクチュアルプレーイングタイムを増やそうと取り組んでいる。しかし、以前から球際の激しいサッカーが当たり前の欧州や南米をはじめとした海外クラブとの差は、知らず知らずのうちにJリーグの基準に慣れてしまった日本のクラブにとって、すぐには埋めがたいものだったといえるかもしれない。
1次リーグの他組に目を移すと、開催国枠で出場しているインテル・マイアミ(米国)のメッシと、ブラジル勢4クラブの存在感が目立った。メッシは背番号10に主将マークを巻いて、新興クラブといえるインテル・マイアミをけん引。第2戦ではゴールほぼ正面からの直接FKを得意の左足で決めるなどして、経験豊富なクラブがひしめく大会で見事にベスト16入りを果たした。メッシの周りにはスアレス、ブスケツ、アルバと、バルセロナ時代の盟友たちが並び、監督はアルゼンチン代表でも同僚だったマスケラーノ。24日で38歳となった大ベテランだが、勝手知ったる面々に囲まれて遺憾なく実力を発揮している。
ブラジル勢は欧州の強豪に引けを取らない勝負強さを見せている。マイアミと同じA組のパルメイラス、B組のボタフォゴ、D組のフラメンゴ、F組のフルミネンセと4チーム全てが1次リーグを突破してベスト16入りを決めた。4チームの1次リーグの成績は6勝5分け1敗。例えばフラメンゴにはジョルジーニョやアレックスサンドロ、ダニーロら欧州の名門クラブでならした実力者がいて、欧州の一線級のクラブにとっても侮れないところを示している。また、浦和と同組のモンテレイが決勝トーナメントに進んだように、W杯でベスト16の常連といえるメキシコはクラブもきちんと成果を示し、ブラジルとはいかないまでもその国のサッカーの実力の底堅さのようなものを見せている。日本がW杯でベスト16に進むようになっても、クラブの大会で浦和が露呈したひ弱さは、Jリーグと世界の基準が乖離していることを物語っているのではないだろうか。
決勝トーナメント1回戦の注目カードは今年の欧州チャンピオンズリーグ(CL)王者のパリ・サンジェルマン(フランス)とマイアミの顔合わせだろう。メッシにとっては古巣との対戦でもあり、敵将のルイスエンリケはバルセロナ時代に監督を務めていたこともあり、立場が変わって再会する一戦でもある。
佳境を迎えつつある大会は7月5日(日本時間)から準々決勝、同9,10日に準決勝が行われ、14日に来年のW杯と同じく米ニュージャージー州のメットライフスタジアムで決勝が行われる。
W杯を超える賞金総額 生まれ変わったサッカーのクラブW杯
4年に1度の祭典と言えば、地球上最大のスポーツイベントであるサッカーのワールドカップ(W杯)だが、それに続けとばかりに国際サッカー連盟(FIFA)の肝入りで改編されたのが、クラブW杯である。『DAZN』にて全63試合独占で無料ライブ配信を行っており、大会公式パートナーには総合家電メーカーの『ハイセンス』が就任。昨年行われたスポンサー発表会には、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノ氏やFIFA事務総長のマティアス・グラフストロム氏も出席しており、FIFAの本大会に対する並々ならぬ力の入れようがうかがえる。賞金総額は10億㌦(約1450億円、1㌦=145円で換算)で、優勝すれば最大1億2500万ドル(約181億2500万円)。W杯カタール大会は賞金総額が4億4千万ドル、優勝賞金は4200万ドルだったから、総額は2倍以上、優勝チームは3倍の大金を手にするという破格の設定となっている。

FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長とデビッド・ベッカム氏(右)。ハードロック・スタジアムにて ©David Klein/CSM via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ