今季はパリ五輪で正セッターを務めた司令塔の関田誠大(サントリー)が5月に右足関節を手術したため、代表活動には参加していない。そこで永露元稀(広島)、大宅真樹(日鉄堺)の両セッターを併用しながら新たなスタイルを模索している。

 前哨戦のネーションズリーグ(VNL)は1次リーグを8勝4敗の4位で通過。しかし、決勝ラウンドの準々決勝は同1位のポーランドにストレート負けを喫した。第1、2セットは競った場面があったものの、強敵との一戦を通じてセンター線の攻撃が課題として浮かび上がった。

 VNL後の鹿児島、東京合宿では、バックアタックや速攻など、多彩な戦術に磨きをかけることで、攻撃の幅を広げてきた。セッター陣とアタッカー陣も頻繁に会話を重ね、お互いのズレを一つひとつ修正。高橋藍(サントリー)は「自分がどういう状況で欲しいとか、どういったトスが欲しいのかを常にセッターにも伝えている」と説明した。

 さらに地獄の合宿でチームの結束力も強化した。8月11~17日の鹿児島合宿はオフが1日もなく、複数の選手が「今までで一番キツかった」とこぼすほど。高橋は「7日間連続で練習をしたのは、高校生以来。みんなヘトヘトだった」と明かすも「みんなでやるという団結力の部分は(ロラン)ティリ監督が求めていたところなので、みんなで成長できた」と手応えを口にした。

 世界選手権は「表彰台」を目標に設定。1次リーグを順調に勝ち進めば準々決勝でポーランドと再戦する可能性が高い。石川は「対戦相手としてはいいとは思わない」と苦笑い。ただ、悲観はしていない。

 銅メダルの23年VNL、銀メダルの24年VNLは、準々決勝でいずれも世界ランキングが日本よりも下位の国に勝利。だが、24年パリ五輪、25年VNLの準々決勝は日本より上位の国に敗れている。28年ロサンゼルス五輪を見据える上では「大きな大会になればなるほど、ベスト8に強いチームが増えてくる。それを乗り越える経験をするために、ポーランド戦はとても重要。強いチームを倒す経験が必要なので、そういった意味では非常にベストな対戦相手」と力を込める。

 間近に控える大一番に向けては、同15位のブルガリア(2、3日)、同2位のイタリア(6、7日)と壮行試合を実施。ブルガリアには連勝を収めた一方で、イタリアとの2試合は多くの課題が垣間見えた。

 6日の試合はフルセットの末に2―3で敗戦。パリ五輪準々決勝で2―0から逆転を許した因縁の相手と一進一退の攻防を繰り広げたとはいえ、高いブロックに苦戦を強いられるシーンが幾度もあった。「イタリアの高いブロックは、常に日本が苦手としているところ。みんなが意識しすぎてしまった」と石川。世界トップレベルの守備陣に身構えてしまった部分があった。

 7日の試合は1―3で敗れた。1―2で迎えた第4セットはジュースの末に32―34で落として万事休す。世界の舞台で勝ち進むには、接戦をモノにする必要がある。石川は「攻撃の部分で少し苦戦してしまった。ああいった(第4セット)のような試合を取り切らないと」と苦言。続けて「最後の2戦は負けて終わってしまった。イタリアも今日に関してはメンバーを落としていたが、まだまだ力が出せなかったし、出してもはね返されてしまった」と表情を曇らせた。

 劣勢時の雰囲気づくりにも改善の余地ありだ。7日の試合後には途中出場の山本智大(大阪B)が「(序盤は)みんなの顔が死んでいて元気がなかった。相手に先行されたことで自分たちができることができずに、一人ひとりがうまくかみ合っていない印象を受けた。コートの中で悩みを抱えているような顔をしていた」とばっさり。選手たちがマイナスの感情を抱えながらプレーをしていたように見えたという。

 石川も同様のムードを感じとっていた。「今までのメンバーと1人、2人違うだけでもチームの雰囲気がガラッと変わる。そのメンバーに合った雰囲気のつくり方や上げ方があると思う」と指摘。「僕もまだ考えているところ」と口にしつつ「もっと締まった雰囲気でプレーすることが、今のチームには必要」と語気を強めた。

 世界選手権は32チームが8組に分かれて、各組上位2チームが決勝ラウンドに進む。G組の日本は同16位のトルコ(13日)、同11位のカナダ(15日)、同75位のリビア(17日)と相まみえる。残された時間は少ないが、高橋は「トップチームになってくると攻撃面など思った通りにプレーさせてもらえないのも、世界バレー前に味わえた。ポジティブに捉えて、修正してさらに力を付けたい」と巻き返しを宣言。51年ぶりのメダル獲得へ、ここからは這い上がるのみだ。


中西崇太

著者プロフィール 中西崇太

1996年8月19日生まれ。愛知県出身。2019年に東京スポーツ新聞社へ入社し、同年7月より編集局運動二部に配属。五輪・パラリンピック担当として、夏季、冬季問わず各種目を幅広く担当。2021年東京五輪、2024年パリ五輪など、数々の国内、国際大会を取材。