新たな観戦体験の提供を可能にする「民設民営」アリーナ

 TOYOTA ARENA TOKYOは、Bリーグの強豪アルバルク東京の本拠地としての使用を主目的に建設されたバスケットボール観戦に最適化されたアリーナ。同時にその他の競技やエンターテインメント興行など、あらゆるイベントにおいて新たな観戦体験の提供を可能にする多目的型施設でもある。

 形状は全席がコートに正対しているオーバル(楕円形)型。中央部には総面積1000平方メートルを超える国内最大級のLEDセンターハングビジョン、階層間に設置された国内初となる上下2層のリボンビジョンをはじめ、これまでにないビジュアルと音響演出を可能にするハード面が標準装備されている。また、観戦者の快適性を追求したレザーシートを全座席に採用する一方、オープンエアのテラススイートをはじめ、来訪者に上質な空間を提供するホスピタリティエリアも充実させている。

 また、アリーナに併設された2つのパークも開放的な空間で、周辺に高層建造物がないため、晴れた日には青空と東京湾から吹く風に心地よさを感じられる。公開空地のため、イベントのない日でも誰もが利用できることも特徴だ。

 アルバルク東京の林社長はBリーグが開幕した2016年以降、「Bリーグのクラブが競技(チーム強化)と会場運営を一体でやることがスポーツビジネスの価値を高める一番の手法と考えていた」と、「民設民営」によるアリーナ運営を模索してきた。その背景には、アルバルク東京がこれまで主に公営施設を借りる形でホームゲームを運営するなか、「施設利用の制限などもあり、自分たちがやりたいと思えることを100%実現できなかった」という思いがあったという。

 そんななか、2026-27シーズンから始まるBリーグのトップリーグ再編「Bプレミア」への参画に、条件(収容人員5000人以上、VIPルーム常設等)を満たしたアリーナの必要性が出てきたこと、トヨタ自動車が所有していた江東区青海(あおみ)の土地の再開発計画を模索していたことが重なり、新アリーナ構想が一気に実現に向かうことになった。

 ここはかつて大型商業施設パレットタウン内に構えていたトヨタ自動車の展示ショールーム「メガウェブ」の跡地。周辺の再開発はまだ道なかばではあるが、新交通ゆりかもめ「青海」駅から徒歩4分、りんかい線「東京テレポート」駅から徒歩5分と公共交通機関の駅から至近であるのも、利用者にとっては大きなメリットだ。

あらゆるジャンルの次世代へ「可能性にかけていこう」

 開業記念式典では、「可能性にかけていこう」というTOYOTA ARENA TOKYOのコンセプトが発表された。その言葉には、スポーツや音楽、ダンスといったさまざまなジャンルにおいて、この場所から世界へ羽ばたく「聖地」になるという思いがこめられている。

 Bリーグでは今シーズンからアルバルク東京の公式戦30試合、来シーズンからは同じ東京を本拠とするサンロッカーズ渋谷もホームアリーナとしての使用が決定。1年間のうち60日はBリーグのゲームが行われるため、「日本で最もバスケットボールの試合が行われるアリーナ」(林社長)となる。その他のスポーツ、競技人口の少ない種目やパラスポーツのアスリートをはじめ、ユース世代にとっても憧れの場となるような大会の誘致、またエンターテインメントでは日本武道館や全国のドーム球場のように、トップアーティストにとっての最大の目標の場となる文化も築いていく。

 開業記念式典のテープカット後には、アルバルク東京主将のザック・バランスキー、ダンスプロリーグD.LEAGUEのトップダンサーTAKUMI、女子車いすバスケットボール日本代表の財満いずみの3人のアスリートに加え、室伏スポーツ庁長官、プロジェクトパートナーでもあるトヨタ自動車の豊田会長によるトークショーが実施された。

 テーマは、「アスリートにとって戦う場所とは」。各選手はそれぞれ「感動を生むところ」(TAKUMI)、「熱狂」(財満)、「キャンバス」(バランスキー)と表現。また、ハンマー投で五輪金メダリストの室伏スポーツ庁長官は、「アスリートやパフォーマーだけでは成り立たない。観客、舞台が一体となって熱狂と感動を生む」という意味の「一座建立」を掲げ、「TOYOTA ARENA TOKYOがそういう場になることを願いたい」と期待を語った。

 また、東京お台場地区の移動手段の整備が十分でない状況を解決すべく、トヨタ自動車は東京都や周辺事業者と連携。次世代モビリティ「e-Palette」などを活用した新たなモビリティサービスを導入することで、エリア内の周遊性を向上させることによる街の活性化も図っていく計画も発表された。

 これはTOYOTA ARENA TOKYOという「点」ではなく、アリーナを中心にお台場地区全体を活性化していくという豊田会長の思いがある。アリーナの来場者はもちろんのこと、地元の人々と共に「感動や熱狂を創り上げる“共創の場”として発展させていきたい」と抱負を述べている。

 TOYOTA ARENA TOKYOは10月3日にアルバルク東京のホームゲーム開幕戦(対宇都宮ブレックス)で開業を迎え、10月11日、12日にはエンターテインメントイベントのこけら落としとして「Official髭男dism」の音楽ライブが予定されている。

 近年、アリーナにおける大物アーティストのライブは神奈川、埼玉、千葉といった東京近県での開催が多い印象を受ける。その流れを変えることができるのか、という視点からも注目が集まる。

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10月3日に開業を迎えるTOYOTA ARENA TOKYO(トヨタアリーナ東京/江東区青海)の内覧会が8月28日に行なわれ、2025-26シーズンから同アリーナを本拠地とする男子プロバスケットボールリーグBリーグの強豪チーム・アルバルク東京、日本航空株式会社(以下、JAL)、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社(以下、Visa)が、3社間のパートナーシップ契約を締結したことを発表した。

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どの席からでも快適な観戦体験を追求 TOYOTA ARENA TOKYO(トヨタアリーナ東京)の全容が公開

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牧野豊

著者プロフィール 牧野豊

スポーツライター&編集者。スポーツ専門出版社ベースボール・マガジン社に約30年間勤務したのち、2022年夏にフリーランスに。陸上競技、バスケットボール、水泳を中心に五輪競技やMLB等もカバーする。オリンピック、アジア大会、単競技の世界選手権の取材経験もあり。