名門の発掘力と、レイズの結束

 ア・リーグの注目カードは、ニューヨーク・ヤンキース対タンパベイ・レイズ。ヤンキースを見るとき、資金力だけに目を向けてはもったいない。今季初めてオールスターに選ばれたベン・ライス(2021年12巡目・全体363位)とキャム・シュリットラー(2022年7巡目・全体220位)は、スカウトのマット・ハイドさんが見いだした才能だ。ワイルドカード初戦では、ライスが満塁弾を含む2本塁打6打点、シュリットラーが7回途中まで無失点、10奪三振。発掘した選手を大舞台の主役へ育てる組織の強さが、鮮やかに表れた。完成されたスターを集めるだけではない。才能を見つけ、育てる。その積み重ねも名門の底力なのだ。

 迎え撃つレイズで、選手の体を支えるのがトレーナーの福田紳一郎さん。 Shinさんから伺ったのは、若き主砲カミネロがチームを背負う「自覚」を深めていること。さらに、NPB(北海道日本ハムファイターズ、福岡ソフトバンクホークス)でもプレーしたニック・マルティネスが豊かな経験を、惜しみなく若手に伝えているという。福田さんとマルティネスが企画した投手陣の夕食会では、日本流の焼肉に舌鼓を打ったという。シーズンを通して仲間との絆を深めてきたことも、緻密な野球を行うレイズの戦い方の下支えになっている。

勢いのパドレスか、最高勝率のブリュワーズか

 ナ・リーグの注目カードは、サンディエゴ・パドレス対ミルウォーキー・ブリュワーズ。パドレスは、前半戦に苦しんだタティスJr.がオールスター後だけで20本塁打。20歳の捕手イーサン・サラスもデビューし、MLB初ホームランを含む、いきなりの1試合2HRを披露するなど魅力たっぷり。主役の復調と新星の登場が重なり、勢いに乗る。

 立ちはだかるのは、MLB最高勝率、103勝のブリュワーズ。最優秀投手に贈られるサイ・ヤング賞の筆頭候補ミジオロウスキーは、最速105.5マイル(約170キロ)を誇り、防御率1.80、252奪三振を記録した。長いシーズンで最も勝ったチームと、終盤に調子を上げたチーム。力と力がぶつかり合う短期決戦の難しさと面白さが詰まったカードだ。

村上と若手が切り開く、ホワイトソックスの秋

 村上宗隆はMLB1年目に、今年日本人最多となる35本塁打。33本のミゲル・バルガス、31本のコルソン・モンゴメリーと、若き30HRトリオを形成した。今季の村上はたとえ不調が続いても、じっくりとボールを見極めてきた。シーズンを通して92四球を選び、出塁率は.347。一発を狙うだけでなく、チームメイトに繋ぐ姿は、まさに本人が目指してきた「勝てる集団」を体現している。ワイルドカードではベナブル監督の手腕も光った。第2戦、横浜DeNAベイスターズでも日本一に貢献した先発のアンソニー・ケイをリリーフとして起用し、5回の満塁のピンチを無失点で切り抜けた。直後にはマイドロスが3ラン。若手の躍動とベンチの采配がかみ合い、球団では2005年以来となるポストシーズンのシリーズ突破を果たした。

 次の相手は、ホゼ・ラミレスを中心とするガーディアンズ。今季の勝利数の差は、わずか1つだった。地区優勝争いで競り負けた相手に、今度は秋の舞台で挑む。村上と仲間たちがどこまで進むのか、目が離せない。

日本人3選手が担う、王者の勝ち筋

 ドジャースは最終盤に戦力が戻ってきた。大谷翔平は復帰戦で早速ヒット。さらに、パドレスの守護神メイソン・ミラーの約165キロの速球を左中間へ運ぶ、タイムリーツーベース。速い球を強く弾き返す一打に、期待は高まる。佐々木朗希はリリーフとして復帰し、無失点・毎回奪三振の投球を続け、昨秋を彷彿とさせる役割で、ブルペンに選択肢を加えた。昨季のワールドシリーズMVP、山本由伸は、14勝、185イニングと、勝利数も投球回もMLBで自己最多を更新。最強の先発4本柱の大エースとして、3度目の大舞台に臨む。役割の違う3人が、3連覇への道を支える。日本人の活躍に、王者の勝ち筋を見たい。

毎年恒例!ポストシーズン大予想

 今年も五十嵐亮太さんのYouTube「イガちゃんねる」で、ポストシーズン予想に参加した。若きMLB博士村田洋輔さんをお迎えし、番組ではお馴染みの山本萩子さんとともに、それぞれが持論を展開した。ぜひ動画も楽しみながら、皆さん自身の予想とともに、この熱い秋を見届けてほしい。


福田太郎

著者プロフィール 福田太郎

MLB実況アナウンサー。WBCやワールドシリーズ第7戦ドジャースvsブルージェイズも担当。現地取材・選手インタビュー・コンサルティングなどを通じ、野球の魅力を届ける。北海道日本ハムファイターズのES CON FIELD HOKKAIDO開業を前に、2022年単身渡米し、スポーツエンタメを学んだ。MLB全30球場を訪ねた経験を活かし、野球の仕事に専念するため、昨年3月HTB北海道テレビ放送を退職。Subtitle株式会社を設立した。佐賀県鳥栖市、早稲田大学出身・アンダースロー投手 @tarofukuda_