データで見た2026年セ・リーグ6球団の評価と来季の課題(VICTORY編集部作成)阪神 評価:S-
終わってみれば今季も阪神は強かった。79勝62敗2分けで2位巨人に2.5ゲーム差をつけてリーグ優勝。球団史上初の連覇を成し遂げた。特筆すべきは、その投打にわたる圧倒的な数字だ。チーム総得点はDeNAに次ぐ2位の518で、失点は最少の439。得失点差+79は、こちらも2位のDeNA(+45)に大差をつけた。チーム打率.246、125本塁打がDeNAといずれも並ぶリーグ1位で、防御率2.79も1位。攻守に隙のない戦いを見せたことが、データにも表れている。
平均して1イニングに何人の走者を出したかを表し、投手の評価指標として一般的な「WHIP」((被安打数+与四球数)÷投球回数)は1.13でトップ(2位は1.18の巨人)。被本塁打、与四死球(故意四球除く)、奪三振のみから投手の防御率を算出し、総合力を評価するFIPでも断トツの数字で、投手陣の安定感が群を抜いていたことが分かる。打者の総合的な打撃貢献度を表す指標OPS(出塁率+長打率)は.687で、DeNA(.684)を上回ってトップとなった。
投手陣は、開幕11連勝を記録し16勝で最多勝と勝率第1位に輝いた高橋遥人を筆頭に、村上頌樹が最優秀防御率(1.85)、才木浩人が最多奪三振(175)のタイトルを獲得するなどエース級がずらり。球団40年ぶりの三冠王となった佐藤輝明や35本塁打を記録し最高出塁率(.394)のタイトルを獲得した森下翔太ら、打者も圧倒的な成績を残した選手が並び、こうした「個」の強さが全体の数字を押し上げた。
ここまで完璧なら「S」でも…と言いたくなるが、実はある指標を見ると、まだ上を目指せる余地があることが分かる。それが、得失点差からチームの実力を算出する代表的指標「ピタゴラス勝率」だ。チームの総得点と総失点から最終的に帰結する勝率を予測する統計モデルのことで、米国の統計学者ビル・ジェームズが考案し、「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」と数式が似ているため、この名がついた。オリジナルの数式は「得点の2乗÷(得点の2乗+失点の2乗)」だが、引き分けがある点など日本固有のルールを踏まえた指数として、「1.82~1.83乗」の数式がよく用いられる。例えば、セ・リーグ各チームのピタゴラス勝率を「得点の1.82乗÷(得点の1.82乗+失点の1.82乗)」で計算すると、今季の各チームの数字は次のようになる。
◆2026年セ・リーグのピタゴラス勝率と実際の勝率(全日程終了時点、実際の順位順)
1位 阪神 ピタゴラス勝率.575/実際の勝率.560(得点518、失点439)
2位 巨人 ピタゴラス勝率.541/実際の勝率.543(得点486、失点444)
3位 DeNA ピタゴラス勝率.538/実際の勝率.507(得点557、失点512)
4位 広島 ピタゴラス勝率.415/実際の勝率.439(得点431、失点520)
5位 ヤクルト ピタゴラス勝率.395/実際の勝率.433(得点449、失点568)
6位 中日 ピタゴラス勝率.485/実際の勝率.426(得点478、失点494)
この数字から分かるのは、阪神の勝率(.560)はこれでも期待値(.575)より、やや“下振れ”しているということ。連覇という結果は、間違いなく満点評価を与えられるものだが、8月29日に優勝へのマジックナンバー「23」を点灯させた後にペースを落とし、決着まで時間がかかったのも事実。マジック点灯以降の成績は13勝13敗1分けの勝率5割。7連敗も喫した。
逆に言えば、投打において盤石の布陣であることに疑いの余地はなく、来季の3連覇も十分に見えてくる。あえて不安点を挙げるなら、ポスティングシステムで米大リーグに移籍する可能性がある佐藤輝の穴をどう埋めるか。ここのところ目立ったプラスを加えられていない外国人の補強や、2018年オフの西勇輝を最後に獲得がないFA戦線への参戦が一つの選択肢となりそうだ。
得点と失点から計算した「期待値」(ピタゴラス勝率)と実際の勝率。中日は期待値を最も大きく下回った(VICTORY編集部作成)巨人 評価:A
巨人はピタゴラス勝率で見ると、実際の勝率との差がリーグ最少の2厘しかなく、ほぼ実力通りの結果を示したといえる。リーグ最多の42セーブを挙げた守護神ライデル・マルティネス、現役ドラフト出身で初タイトルとなる最優秀中継ぎに輝いた田中瑛斗ら救援陣の勝利貢献度が高く、1点差ゲームで26勝24敗と勝ち越すなど接戦を確実に拾う戦術が機能した。チーム防御率2.80は阪神と僅差のリーグ2位で、救援防御率2.57は2位DeNAの2.98に大差をつけた。
昨オフに米大リーグ、ブルージェイズへ移籍した岡本和真の穴を埋めるべく補強したダルベックがチーム最多の25本塁打を放ち、FAで日本ハムから獲得した松本剛は130試合に出場。ドラフト1位の竹丸和幸が11勝を挙げたほか、2年目の浦田俊輔は36盗塁でタイトルを争うなど若手の台頭も目立った。フロントの戦略が機能しており、名門らしいチームづくりで安定した戦いぶりを見せたといえるだろう。阿部慎之助前監督の辞任を受け、橋上秀樹氏による監督代行体制となる想定外のアクシデントがあったことを考えれば、現場レベルのチームマネジメントも高く評価できる。
とはいえ、阪神に迫りながら最後の決め手を欠いたのも事実。9月19日にはゲーム差なしにまで迫ったが、そこからDeNAに3連敗を喫し、阪神相手にはシーズン通算8勝16敗1分けと大きく負け越したことが最後まで響いた。チーム打率.234、103本塁打はいずれもリーグ4位。守り勝つ野球で善戦はしたものの、覇権奪還を目指す来季に向けては戸郷翔征、山崎伊織ら不振や故障で本来の実力を発揮できなかった先発陣の立て直しが急務。開幕ローテーションにドラフト3位ルーキーの山城京平を抜擢するほど、やはり層の薄さに苦しんだところがある。1試合平均の救援投手起用数3.55もリーグ最多で、救援陣の負担を減らす意味でも、そこがポイントとなりそうだ。
DeNA 評価:B-
DeNAは5年連続のAクラス入りを果たした。6月に4勝15敗と低迷し、最大15の借金を抱えたことを考えれば、71勝69敗3分けの勝率.507という成績に着地させたのは驚異的といえる。借金15以上からの完済は球団史上初。新人監督の70勝到達も球団初。就任1年目の相川亮二監督は、見事にチームを立て直してクライマックスシリーズ進出という“ノルマ”をクリアした。DeNAが球団運営に乗り出した2012年以降、1年目で勝率5割を突破した初めての指揮官であり、十分に評価できる結果を残したといえるだろう。
先発投手陣は昨季計439.1イニングを投げたケイ、ジャクソン、バウアーが抜け、代わる存在として獲得したデュプランティエ、コックスが序盤に離脱。守護神候補だった森原康平は右肘の手術を受けて今季は登板なしに終わった。昨季からの戦力ダウン、補強面での誤算があった中で、前半戦は6月終了時点で5位と大きくつまずいた。ところが、ここから反撃を開始。8月まで3位を争っていたヤクルトを突き放し、終盤は2位巨人に迫ろうかという勢いを見せた。
これを可能にしたのが、フロントによるテコ入れだった。5月には山本祐大をソフトバンクにトレードで出し、尾形崇斗、井上朋也を獲得。尾形は主に先発で85.2イニングを投げ、7勝(2勝は救援)を挙げた。もし不在だったら先発のコマ不足に陥っていたのは間違いなく、正捕手格の人気選手を出したことへの是非はあれど、少なくとも補強ポイントが的確だったとはいえるだろう。
7月に獲得したエンカーナシオンは打率.293、11本塁打、39打点と活躍。主に4番を担い、主軸の牧秀悟や筒香嘉智とのシナジーを生んだ。ストレートに打率.313、3本塁打と強く、変化球も打率.280、8本塁打と苦手にしていないだけに、キャンプでの調整を経て臨める来季は、さらなる活躍が期待できる。7月10日には右腕の浜地真澄を支配下登録。終盤戦では八回を任されるだけの存在になった。
とはいえ、牧を中心に阪神に並ぶ打率.246、125本塁打を記録し、平均得点3.90を含めていずれもリーグ1位というセ・リーグ随一の打線を持ちながら、上位2チームに大きく離され、優勝争いに絡めなかったのも事実。実際に、ピタゴラス勝率よりも3分ほど実際の勝率は“下振れ”しており、物足りなさは残る。
要因ははっきりしている。先発防御率が2点台半ばの阪神に対して3.49でリーグ4位と、やはり先発のコマが揃わなかったのは大きかった。運用面にも影響は出ており、先発の投球回はリーグ最少の1試合平均5.44イニング (トップは中日の6.10、続いて阪神が2位の5.79)で、クオリティスタート(先発で6回以上、自責点3以下)率もリーグワーストの43.4%(トップは中日の61.5%)。リーグ2位の防御率2.98(1位は巨人の2.57)を誇る救援陣に負担がかかったのは明らかで、62試合に登板した守護神レイノルズにも終盤は疲労が見られた。来季阪神を逆転するには、先発投手の補強が不可欠といえるだろう。
広島 評価:D+
広島はピタゴラス勝率による期待値より良い勝率を記録しており、得失点差「-89」という数字の割には奮闘したといえるだろう。要因は投手陣の踏ん張りにある。チーム防御率3.39はリーグ5位ながら、WHIPは阪神、巨人(1.18)に次いでリーグ3位の1.23。先発に転向し7勝、防御率2.98の栗林良吏、規定投球回をクリアし8勝、防御率2.76の床田寛樹が安定した成績を残した。15試合以上先発した投手は計6人おり、これはリーグ最多。先発陣のコマ不足に苦しむチームが多い中、ローテーションをある程度同じ顔ぶれでまわせたのは大きい。
ただ、それを打ち消すほど深刻な問題となったのが長打力不足にあえぐ打撃陣だ。チーム打率.223と431得点はリーグ最下位で、91本塁打はヤクルト(83)に続く下から2番目。規定打席に到達した打者で打率トップは.251(全体15位)の坂倉将吾で、本塁打もファビアンの16本がチーム最多では、やはり苦しい。
グラウンド外の問題にチームが揺れる中、選手起用に制限が出たことも少なからず響いたはずだ。新井貴浩監督の来季続投は決まったが、打撃陣の大幅な強化がなければ再建の道は険しい。ピタゴラス勝率より上振れした結果を残したという事実は、逆に戦力的に、もっと低迷してもおかしくない状況ともいえる。
ヤクルト 評価:C-
今季のセ・リーグにおいて、序盤の主役となったのは間違いなくヤクルトだろう。開幕カードでDeNAに3連勝して勢いに乗ると、6月3日に貯金を最大11まで積み上げ、同30日まで首位を守った。2軍を長く指導してきた池山隆寛新監督のもと、積極起用された若手が躍動。野手では西武から新加入の日隈モンテル、プロ3年目の伊藤琉偉、捕手の鈴木叶らが台頭し、バントをほとんど使わない攻撃的なスタイルも嚙み合い、開幕から流れを引き寄せた。
ただ、5月まで20試合2失点と圧巻の成績を残していたキハダが6月から一気に調子を落とし8月5日に出場選手登録を抹消されると、その後も抑えを固定できない状況が続き、チームも失速した。6月に7勝11敗と今季初めて月間で負け越すと、7月は6勝17敗、8月も8勝16敗と崩れて優勝争いから脱落。最終的にDeNAにも大差をつけられてAクラス入りを逃したばかりか、10月8日の今季最終戦で何とか5位を確定させるのが精いっぱいだった。
比較的狭い神宮球場をホームとしながらチーム本塁打数はリーグ最少の83。米大リーグ、ホワイトソックスに移籍した村上宗隆の穴を序盤は若手の躍動で埋めてきたが、後半戦は投手陣の不安がそのままチーム成績に跳ね返ってきた。8月半ばには1週間で3度のサヨナラ負けを喫するなど、歯止めがきかず。チーム防御率3.68、568失点はリーグワースト。1試合平均の失点数は3.97で、得失点差は「-119」と、投手陣崩壊といっていい、極めて厳しいシーズンになってしまった。
その中でも、来季に向けた光明はある。投手では山野太一が12勝を挙げて2015年の石川雅規以来となる球団左腕の2桁勝利を達成。大卒6年目でブレークを果たした。打者では2年目の田中陽翔や4年目の西村瑠伊斗という2人の高卒野手が終盤に才能の片鱗を見せるなど、期待できる新たな戦力が出てきているのは確か。岩田幸宏は39盗塁でタイトルを獲得。リーグトップの盗塁成功率77.8%、2位の98盗塁(1位は巨人の99)を誇るチームの走力という武器を象徴する存在となった。
来季に向けては、主軸を打てる長打力のある打者、先発・救援を問わない投手陣の大規模な整備など必要なものが多いが、前半戦での優勝争いも若いチームにとっては貴重な経験になるはず。ピタゴラス勝率は3割台。その中でも、来季への布石を打てたシーズンということを踏まえ、4位の広島より少し上の評価とした。
中日 評価:D-
中日は逆にピタゴラス勝率による期待値を大幅に下回る結果に終わった。478得点はリーグ4位で、494失点はリーグ3位。得失点差は「-16」にとどまっており、5割前後の勝率を残していても不思議はない投打の成績だったといえる。
その中でも際立つのは、投手力だ。チーム防御率3.28はリーグ4位ながら、先発の平均投球回はリーグ断トツの6.10。QS率61.5%も、55.7%で2位の阪神を大きく上回っており、先発防御率3.14は3位。7勝で防御率2.34の柳裕也、10勝で同2.45の大野雄大、5勝12敗と大きく負け越しながらも防御率2.91と安定していた金丸夢斗と実に3人が規定投球回に到達。防御率2.62ながら5勝7敗とこちらも勝ち星に恵まれなかった高橋宏斗や7勝を挙げたマラーら先発陣は、リーグ屈指といえる。
打線もフェンス手前に「ホームランウイング」が新設されたバンテリンドーム ナゴヤの効果もあって、リーグ3位の121本塁打を記録。25本塁打の細川成也、23本塁打の新助っ人サノーと軸になる選手もおり、投打にバランスが取れていた。
ただ、広島との開幕カードで3試合連続1点差負けを喫したのをはじめ、1点差の試合は18勝26敗と大きく負け越しており、僅差の試合を勝利に結びつけられていない戦いぶりが、低迷に直結した。1点差試合の借金「8」は楽天の「7」を上回って12球団ワースト。これが期待値と実際のチーム成績が乖離する最大の要因になったことがうかがえる。
逆に言えば、戦力面では上位に匹敵するものがあるだけに、マネジメントや采配で順位を大きく上振れさせることは可能ということ。その点では今季の評価はどうしても厳しくなるが、工藤公康監督のもと新体制で臨む来季に向けては、少なくともデータやセイバーメトリクスの観点では、現有戦力でも十分に上位を狙えるチームといえそうだ。
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これらはあくまでデータや指標から分析した評価であり、ファンにとってはそれぞれの感じ方があるはず。ただ、ドラフト会議やオフのFA戦線などストーブリーグを控え、数字だけを見ても、来季に向けてさまざまな興味深い現実や課題が浮かび上がってくるのも確かだ。