わたしたちの目はごまかせない―。R・マドリードを逆転勝利に導いた不可解なジャッジ
執筆者 Santi Nolla(サンティ・ノジャ) しかし、試合から僅か2日で両者の立場は逆転する。 大々的な報道、耐え難い重圧、あらゆる所から降りかかる集中砲火。ビジャレアルを悪者に仕立て上げるのに、さほど時間はかからなかった。レアル・マドリードに同点となるPKを与えたビジャレアルのブルーノ・ソリアーノの“幻のハンド”は、48時間の間に記憶の片隅に追いやられた。 それに代わって主審のジャッジを公に批判したFCバルセロナのジェラール・ピケやビジャレアルのフェルナンド・ロイグ会長をはじめ、ジャッジの内容についてアンケート、討論会、コラムなどを掲載したR・マドリード寄りではないメディアが槍玉に挙げられてしまう。R・マドリードの人をそそのかす偏った宣伝工作には毎度の事ながら感心させられる。 しかし、わたしたちの目はごまかせない。 結局「主審は試合後、R・マドリードのエンブレム入りの袋を手に提げてスタジアムを後にした」と、各試合でクラブがいつも審判団に渡している粗品を指して、買収の可能性をまことしやかに報じたりしてしまったメディアがいけないのだ。 普段ならば疑惑の判定にいちいち反応しない審判団委員会まで、ソリアーノのハンドは正しいジャッジだったとコメントを発表する始末。とはいえ、あの場面でソリアーノの手に無意識に当たってしまったのは、自陣のゴールから跳ね返ってきたリバウンドであって、R・マドリードのシュートやパスを妨害したわけではなかった。そもそもボールの進行方向はビジャレアルのゴールとは逆方向だったのだから。 しかし、そんなことはすぐに記憶の片隅に追いやられ、反対にビジャレアルの1点目の場面を画像解析し、わずか数ミリながらオフサイドが存在していたと、あら捜しをされるこことなってしまう。 審判たちは、R・マドリードに有利なジャッジをする周囲の反応が大きく変わると身をもって理解している。降りかかる抗議に対しても完全に守られ、起こる批判の声は容赦なく粛清されるのである。 今回のようなR・マドリードに有利なスキャンダルは、トークショーのネタにされ、多くの賛成派があらゆる根拠を掲げる格好の機会に利用される。そこでは、ソリアーノのハンドでR・マドリードは同点に追いついた事実は記憶の片隅に追いやられてしまうのだ。