ベスト8の顔ぶれはアーセナル(イングランド)、レアル・マドリード(スペイン)、アストンビラ(イングランド)、パリ・サンジェルマン(フランス)、バルセロナ(スペイン)、ドルトムント(ドイツ)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、インテル・ミラノ(イタリア)である。それぞれのクラブの足取りとともに、大会のここまでを振り返ってみる。

 昨季までと大きく異なる「スイス方式」のフォーマットで、最も特徴的なのは組み分けをしない点、その上で総当たりではなく出場36チームそれぞれの対戦相手がばらばらだという点だ。公平性から考えると、「クラブAは、レアル・マドリードやリバプールと対戦するのに、クラブBはその2チームとはやらない」ということが起こるので、不公平な印象は否めない。ただ、昨季までの方式でも32チームを8組に抽選で振り分けるため、視点を変えればクラブAはレアル・マドリードと1次リーグで同組になるのに、クラブBは別組となるということが起こる。同じ組で同じ相手と試合をして(総当たり方式で)成績を比べるという観点では公平といえるが、同じ組のクラブの顔ぶれがどうなるかという点は抽選にゆだねられており、そこに「運」の要素はある。決勝トーナメント進出のための「必要条件」は、昨季までも今季もクラブごとに異なるという見方が成り立ち、その意味では「スイス方式」=「不公平な方式」とまではいえないだろう。

 欧州サッカー連盟(UEFA)は「欧州最高峰のクラブ大会を活性化させるという約束を果たした」と新方式によって1次リーグが大いに盛り上がったことを強調している。UEFAによると、2024/25年シーズンの1次リーグの1試合平均得点は3・26点で、大会史上最多。長い歴史を持つ大会で最もゴールが入ったスリリングな展開だった。スイス方式の特徴の一つに消化試合を減らすというものもあるが、1次リーグ最終節の前の時点で突破(8位以内)が決まっていたのはリバプールとバルセロナの2クラブのみ。決勝トーナメントへ直接進める1~8位、プレーオフの第2戦を有利なホームで行える9~16位、それ以外の17~24位と分けたことで、出場チームは最終節まで少しでも順位を上げることが求められ、それがゴールへの高い意識につながったと分析することができる。

 さらに、注目したいのは24位まで可能性が残されているという点だ。36チームで争われる方式で、上位3分の2までに入れば道はつながるのである。これは昨季まで1次リーグで4チーム中、1、2位でなければ決勝トーナメントに進めなかった方式に比べると、巻き返しのチャンスが大いに残されているとみることができる。

 しかし、プレーオフを勝ち抜いた8クラブは、ドルトムント(1次リーグ10位)、レアル・マドリード(11位)、バイエルン・ミュンヘン(12位)、PSVアイントホーフェン(14位)、パリ・サンジェルマン(15位)、ベンフィカ(16位)、フェイエノールト(19位)、クラブ・ブリュージュ(24位)という顔ぶれだった。下位クラブで下克上を果たしたのはフェイエノールトとクラブ・ブリュージュで、8カード中、6試合は1次リーグの順位の通り、上位が勝ち抜いたのである。前田大然らのセルティック(21位)や一昨季王者のマンチェスター・シティー(22位)、守田英正のスポルティング(23位)は新たなレギュレーションに救われるような形で望みをつないでいたが、プレーオフで道をたたれた。

 決勝トーナメント1回戦の結果はどうだっただろうか。

 バルセロナ(1次リーグ2位)、アーセナル(3位)、インテル・ミラノ(4位)、アストンビラ(8位)は1次リーグで好成績を収め、決勝トーナメント1回戦にストレートインしたクラブ。ドルトムント(10位)、レアル・マドリード(11位)、バイエルン・ミュンヘン(12位)、パリ・サンジェルマン(15位)はプレーオフを勝ち上がったクラブだった。17位以下からベスト8へと勝ち残ったクラブは皆無。1次リーグを1位通過したリバプールは敗退の憂き目に遭ったが、パリ・サンジェルマンという実力派クラブとの一戦で、しかもPK戦の決着。結果はどちらに転んでもおかしくはなかったとみることができる。そのほか敗退したのはアトレチコ・マドリード(5位)、レーバークーゼン(6位)、リール(7位)。アトレチコ・マドリードは、レアル・マドリード、レーバークーゼンはバイエルン・ミュンヘンという格上のクラブに屈し、リールは昨季準優勝のドルトムントに競り負けた。ベスト8の顔ぶれでは、アストンビラが大健闘しているが、それ以外は順当なクラブが勝ち残っている。

 欧州のシーズンも残り2ヶ月を切った。32チームによる8組での1次リーグに慣れているファンにとってはなじみのなかった方式だが、生まれ変わった大会はクライマックスを迎えようとしている。今季の主役はどのクラブとなるのか。決勝は現地時間5月31日、ミュンヘンのアリアンツ・アレーナが舞台だ。

いよいよ日本時間4月16日、17日にベスト4が決まるCLの新方式の評価は?(画像:UEFA公式サイトより)

VictorySportsNews編集部