公益社団法⼈⽇本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、毎年5月15日に合わせたイベントや仕掛けに取り組んできた。昨年は「Jリーグカレー」を復刻して大きな話題を呼んだ。そして今年、Jリーグの日に合わせて「Jリーグチップス」が復刻された。
2013年以来のJリーグチップス
Jリーグチップスとは、1992年から2013年までカルビーから発売されていたポテトチップス。選手のカードが付いていて、特に子供たちがこぞって購入しては、好きな選手のカードを引き当てられるかに一喜一憂した。Jリーグチップスが2013年で販売終了した後は、日本代表チップスのみ定期的に販売されてきた(※2024年版は5月上旬で販売終了)。
そして12年ぶりに戻ってきたJリーグチップスは、現役選⼿180種、選⼿OBの35種、テレビ放映などJリーグ公認番組と連携した特別カードの計220種が用意された。チップスにはその内の1枚が付いていた。販売ではなく試合会場来場者への無料配布で、5月17、18日の各試合会場では多くのファンや当時Jリーグチップスを購入していた人たち、そして子供たちが、Jリーグチップス付属のカードを取り出して誰を引き当てたのか楽しんでいた。
カードの中の一部にはキラキラ加工したものがあったり、今も現役を続ける三浦知良選手の当時の姿のカードや開幕当時に活躍していた人気選手たちのカード、またイベント当選カードも交える仕掛けもあり、SNSでも自分が当たったカードの写真を投稿するなど数多くの反応が見受けられた。
日本代表・森保監督のカードも復刻
その数日前の5月14日には東京都内で、「2025“Jリーグの⽇”特別企画発表会」が開催。ゲストには開幕戦を監督として指揮した松⽊安太郎さん、サッカー⽇本代表の森保⼀監督、横浜フリューゲルス、ヴェルディ川崎や湘南ベルマーレ等でプレーした前園真聖さんが登場した。
松⽊さんは「(Jリーグができて)全てが⼀変した。今までの⽇本のサッカー界とは全く違う新たな1ページが開かれたなという印象でした」と話せば、当時サンフレッチェ広島の選⼿だった森保監督は「給料が月4万5000円という⽇本サッカーリーグ(JSL、実業団リーグ)時代からやっていましたから、サッカーだけやっていて⽣活できるようになるんだと夢のようでした」とJリーグ開幕のインパクトを実感したという。
「Jリーグチップス」の復刻について、選⼿OB枠でカードが作られた森保監督は「当時から選⼿カードとして使ってもらっていましたが、まず恥ずかしいという感情が⼤きかった。ただサッカーに興味がなかった⽅にも知っていただける機会ができたので、Jリーグチップスありがとうと思いました」と感謝していた。
また、録画映像で出演した58歳でなお現役を続ける三浦知良選手は、Jリーグ開幕当時や初年度のMVP受賞した際の思い出を語った。
観戦離反層にまた来てもらう
今回のJリーグチップス復刻の仕掛け人の1人である、Jリーグ事業マーケティング本部プロモーション部の高田佑平さんは、企画の経緯について「Jリーグの日はJリーグとしても大切なタイミングで、今一度Jリーグを思い出してもらいたいというのがまず一つあります。例えば、開幕当時を知っていて今は(観戦から)離れている。そういった人にJリーグチップスを訴求することで、さらにまたJリーグを改めて認識してもらって、来場してもらい、もう1回Jリーグを見てもらいたいなと思ってもらうことがまず一つあります」と説明した。
「まず、(観戦から)離反していた方に改めて来てもらうっていうところと、これをきっかけに少し話題化することで、例えば、テレビなどメディアに露出して頂くことで、Jリーグにまだ触れたことのない方にも届くきっかけとなる。Jリーグに少し興味がある人にリーチさせることで、Jリーグに触れてもらう機会をまず届けたいというのが1番大もとの背景」(高田さん)
Jリーグチップスをその訴求物として選んだのは、昨年の反響があったという。
「去年Jリーグカレーを復刻してすごく話題になりました。その時にJリーグチップスも復刻してほしいといったお客様の声もあった。そういった経緯で、今年はJリーグチップスを復刻しようかなとなり、カルビーさんなどにも事前にご相談をして、カルビーさんは今回ブランドとしてはつかないで、Jリーグのノンブランドとして無償販促という形で今回復刻をさせて頂いた」(高田さん)
こういったスポーツ選手のカードは今も昔もファンの収集癖をくすぐる。コレクションとして揃えようとする人は少なくない。また、スポーツリーグと選手カードの親和性が高いということもあるのか、カルビーは長年プロ野球チップスを出し続けているし、バスケのBリーグやラグビーのリーグワンでもカードが販売されており、バレーでもSVリーグ公式のデジタルのカードを発売している。それだけに今回のJリーグチップスの復刻に喜んだ人は多いはず。
マーケティング強化で積極的にプロモーションを打ち出すJリーグ
Jリーグは近年マーケティングを強化している。その背景の一つとして、既に2010年代から、来場観戦者の高齢化が危惧されていたということがある。そのため若年層やライト層の取り込みに力を入れていた。さらにコロナ禍で減少した来場者数がなかなかコロナ前の状態にまで回復してなかったこともあり、2023年頃からリーグとしてプロモーションをかけたり、国立競技場開催1万人招待など仕掛けていくなど、積極的な施策を打ち出すようになっている。
コロナ前までは主に新規、ライト層、若者層に対する取り組みが目立ったが、昨年のJリーグカレーの復刻であったり、Jリーグチップスの復刻は、どちらかというと若者層向けというよりその上の年代を刺激する取り組みに見える。今回の取り組みは離反層ということだが、主にファミリー層、40代から50代をさすという。
「Jリーグでももともとボリュームゾーンではありますが、35歳以上の人たちも対象にはなると思います。ボリュームゾーンではあるものの観戦から離反していた人たちが親になっていて、また観戦に来てもらうということはその方々の子どもたちにもアプローチになります」(高田さん)
今回をきっかけにJリーグチップスが本格販売再開とならないのだろうかと期待されるが・・・。
「できれば商品化できるといいなと思うんですけど、有料で売るとなるとOBの方や選手にどういうふうにマージンを返すのかなど含めて、今回の制作期間的にいちプロモーションの規模を超えてしまいます。今後発売をするしないは検討はしていくことはあると思いますが、今すぐに発売できますというのは難しい。現状は訪れた人たち向けのプレゼントです」(高田さん)
こういったスポーツ選手のカード付きお菓子はカードの種類が多いと生産で一手間も二手間もかかる。しかもシーズンごとに作るカードも変わる。かなりの販売数量が見込めない限り、メーカー側も常時生産販売まではなかなか踏み込めないだろう。Jリーグの商品を開発して販売すれば”もうかる”ということをJリーグ側はメーカー側に示す必要がある。果たしてJリーグチップスの反響がどのくらいになるのか、その大きさに期待がかかる。