パリ・サンジェルマンは5季ぶり2度目の決勝進出だ。2019/20年シーズンは、新型コロナウイルス禍の影響で変則的な集中開催となった中、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)に0―1で屈して、あと一歩で頂点に届かなかった。当時を知るマルキーニョス主将は「(決勝で敗れることが)どれほどつらいことか…。経験を仲間に伝えたい」と語る。サイドアタッカーからワントップに変貌したデンベレや、ジョージア代表で今季途中の冬に加入したクバラツヘリアを軸とした攻撃陣が魅力。今季はリーグ・アン、フランス・カップのタイトルを手にしており、「3冠」を目指す。
決勝トーナメント1回戦では優勝候補だったリバプール(イングランド)に2試合合計1―1からのPK戦をGKドンナルンマの活躍もあって4―1で制し、波に乗った。そこから、アストンビラ、アーセナルとイングランド勢を連破。主催の欧州サッカー連盟(UEFA)公式サイトによると、今大会は全体で2番目に多い33ゴール(16試合)を記録しており、攻撃力の高さが売りであることは間違いないが、ボール・リカバーの回数が694回で2位ドルトムント(ドイツ)以下に100回以上の差をつけてトップに君臨している。失っても再びボールを回収して攻撃につなげるというチームとしての目指す姿がスタッツに表れている。


初優勝という重圧がかかるであろうパリSGにとって、大きな存在といえるのがルイスエンリケ監督だ。55歳のスペイン人監督は、10年前の2015年にバルセロナ(スペイン)を率いて欧州CL制覇を成し遂げている。その「成功体験」が、パリSGを初タイトルへと近づける力となるのは間違いない。同監督は準決勝後に「このクラブでの初日に私は言った。『目標は、歴史をつくることだ』と。サポーターを喜ばせることができる、それがサッカーの素晴らしさだ」と誇らしそうにコメントを残した。まさに、歴史に新たな1ページを記すまで、あと一つのところまで来た。
インテル・ミラノは、準々決勝でバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、準決勝でバルセロナ(スペイン)と優勝経験豊富なビッグクラブを倒してきた。就任4季目で49歳のイタリア人指揮官は「選手たちは並外れたことをしてくれた。バイエルンとバルセロナのようなワールドクラスの2チームを相手に、4試合とも素晴らしいプレーを見せてくれた」と、紙一重の勝負を勝ち上がった選手たちをたたえる。
堅守のイメージが強く、今大会も無失点試合は8試合を数え、全体で最多(パリSGは6試合で2位タイ)。ボール保持率は全体で22番目という低さで47.7%となっており(パリSGは全体で3位の59・6%)、決勝もボールを握る時間が長いのはパリSGという展開が予想される。

ただ、インテル・ミラノは決勝トーナメントに入ってからは6試合で15ゴール(1次リーグは8試合で11得点)と、高い得点力を見せつけている。攻撃的な右サイドバックのドゥムフリースの突破と、FWのL・マルティネスの決定力が勝負強さを支えている。その意味では1次リーグと決勝トーナメントで、インテルは全く別の顔を見せているといえるかもしれない。
また、忘れてはいけないのはGKゾマーの存在だ。今大会2位の51セーブをマークしており、インテル・ミラノの守りを最後尾で引き締めている。準決勝でもヤマル(バルセロナ)の際どいシュートを阻むなど、反応の良さは欧州でも指折りだ。決勝への切符を手にした守護神は「とても大きな意味のあることだ。決勝に進めるなんて、そう何度もできることじゃない」と達成感に浸った。

過去3度の優勝は1963/64、1964/65年シーズンの連覇と、モウリーニョ監督時代の2009/10年シーズン。前回決勝までたどり着いた2季前はマンチェスター・シティー(イングランド)に初優勝を許しており、今大会はそのリベンジを期す。
長い歴史を持つ欧州CLだが、フランス勢の優勝は1992/93年シーズンのマルセイユの1回のみで、パリSGはクラブ初という悲願だけでなく、フランス勢にとって32シーズンぶり2度目の頂点という記録がかかる。イタリア勢にとってはインテルが前回優勝した2009/10年以来のタイトルがかかっており、その間にユベントスの2度を合わせてイタリア勢は3度準優勝に甘んじている。スペインやイングランド、ドイツといった勢力に許してきた欧州王者の称号を久々にカルチョの国に取り戻す戦いでもある。

