文=平野貴也

スーパーシリーズで初優勝、五輪後に飛躍した園田、嘉村組

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 オリンピックイヤーが終わり、各競技で世代交代が始まっている。バドミントン日本代表は、リオデジャネイロオリンピックで活躍した女子ばかりでなく、男子ダブルスも面白くなりそうだ。

 リオ五輪に出場した早川賢一、遠藤由大組(日本ユニシス)が日本の第一人者としてけん引して来た種目だが、リオ五輪後に早川が代表を引退。同様に世界トップクラスのペアにも引退や組み換えなどで動きがあった。代表的なものでは、リオ五輪で金メダルを獲得した中国の張楠(ジャン・ナン)、傅海峰(フー・ハイフォン)組がペアを組み換えている。

 世界の一線級ペアがトップ戦線から一度退く形となり、これまで第2集団で頑張って来たペアの台頭と、4年後の2020年東京オリンピックを視野に入れて新たなペアが生まれる動きが各国で起きている。日本でも同じ流れで2つのペアが興味深い存在となってきている。

 まず、園田啓悟、嘉村健士組(トナミ運輸)がリオ五輪後に一気に台頭した。長らく早川、遠藤組に続く日本の2番手であり、リオ五輪も出場はかなわなかった。しかし、持ち味である低空戦の精度を高め、オリンピック後に混戦模様となった国際舞台で結果を残した。前衛を務める嘉村が「自分が決めようとし過ぎていた」と話すように、決めに行くばかりでなく、より相手の体勢を崩していく戦術も採るようになったことで安定感を増した。

 バドミントンの国際大会はオリンピックや世界選手権のほかに、1年を通して「BWF(国際バドミントン連盟)スーパーシリーズ」と格付けされる12大会が行われ、各種目で総合成績の上位8名、8組が12月にBWFスーパーシリーズ・ファイナルズで覇権を争う形式でカレンダーが進む。園田、嘉村組は、オリンピック後のスーパーシリーズでベスト4に1回、ベスト8に4回と堅実にポイントを重ね、11月には最終第12戦の香港オープンでスーパーシリーズ初優勝。そして、シリーズランク1位でトップ選手が集ったファイナルズに臨み、準優勝という好成績を収めた。

 園田と嘉村は共に1990年生まれの26歳。これから成熟期に入るペアは、リオ五輪後のトップ戦線に食い込む存在であることを大いにアピールしたと言える。

ベテランと若手のニューペアは今後の成長が期待される

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 一方、代表引退を表明した早川と組んでいた遠藤は、12月で30歳となりベテランの域に入ったが、若いパートナーを得て再出発している。新たな相棒は、19歳の渡辺勇大。2017年が社会人2年目となる左利きの若手だ。富岡高時代には全国高校総体で男子シングルス、同ダブルスの2冠を達成している。

 遠藤と渡辺が初めて組んだのは、リオ五輪直後の9月に行われた全日本社会人選手権。このときには、決勝で園田、嘉村組を破って優勝を果たした。その後は、11月に中国オープン、香港オープンとスーパーシリーズ2大会に出場。それぞれ1回戦、2回戦で敗退と国際舞台ではまだ飛躍していないが、12月の全日本総合選手権では園田、嘉村組と決勝を戦い、敗れたもののマッチポイントを2度奪う大接戦を演じた。

 まだ同じ球に2人が同時に飛びついてしまうなど連係面は課題だらけだが、コートからコーチボックスに移った早川は「2人とも守備範囲が広く、自分がよい球を打てる範囲を抜けても球を追える。連係が出来上がれば楽しみ」とニューペアの今後に期待をかけていた。連係が不十分でも園田、嘉村組と互角に渡り合えるあたりに高い潜在能力が感じられるペアだ。

12月4日、バドミントン全日本総合選手権の決勝で園田、嘉村組がフルセットの末に2-1で遠藤、渡辺組を破り優勝を勝ち取った
園田、嘉村組が連覇 バドミントン全日本総合選手権 - スポーツ : 日刊スポーツ

 2月は主な国際大会が行われない時期になるが、両ペアは精力的に国内リーグ「S/Jリーグ」に出場している。2月12日に国立代々木第二体育館で行われる最終戦では、両ペアが所属するチームの対戦(トナミ運輸vs日本ユニシス)が組まれており、3度目の対戦が実現する可能性がある。女子も同じ会場で試合を行うため、リオ五輪で金メダルを獲得した「タカマツ」ペアこと高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)のプレーを見ることもできる。

 3月から国際大会が始まると、日本のトッププレーヤーの公式戦を国内で見られるのは、例年通りであれば秋に行われるスーパーシリーズ、ヨネックスジャパンオープンまで待たなくてはならない。今後、国際舞台での活躍が見込まれる彼らの雄姿を一度見てみてはいかがだろうか。女子だけでなく男子にも楽しみな選手がいることを目撃するチャンスだ。


平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト『スポーツナビ』の編集記者を経て2008年からフリーライターへ転身する。主に育成年代のサッカーを取材しながら、バスケットボール、バドミントン、柔道など他競技への取材活動も精力的に行う。