柴崎岳の移籍先テネリフェの歴史と現状

 2017年1月31日、冬の移籍マーケットが閉じる最終日──

 ヨーロッパへの移籍を目指してスペインに渡った柴崎岳は、その前日の30日に兼ねてより交渉していたスペイン1部のラス・パルマスにふられてしまった。一転して鹿島アントラーズに戻ってくるとの見方が大半になったが事態は急転直下、マーケットが閉じるギリギリまで移籍先を探し、スペイン2部のテネリフェへ移籍することを決めた。

 柴崎本人も現地入りしていない現段階で金額などの詳しい内容はまだわからないが、テネリフェは公式サイトで柴崎岳とは2017年6月30日までの半年契約であることを明らかにしている。

 ひょっとすると契約にオプションが付き契約期間が長くなるのかもしれないが、双方の狙いがあり契約期間が半年間に合致したものと思われる。あくまでも推察ではあるが、テネリフェにとってスペインの舞台で大きく活躍したことがない日本人を、外国籍枠の選手として獲得するにはリスクがある。そのリスクを最小限に抑えようとして半年契約を提示したものと思われる。

 そして、柴崎岳の本命はスペイン1部に所属するチームへの移籍で、それはテネリフェへの移籍がまとまった今でも変化はないだろう。残り半分のシーズンで目立つ活躍し、来シーズンの頭には1部にいるチームへの移籍を画策しているはずだ。よって、今シーズンでテネリフェが1部昇格を決めれば、契約期間が延長されるなどのオプションが付いた契約になっているのではないかと予想できる。

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2部リーグを定位置とするテネリフェ

さて、そのテネリフェに今季1部昇格の目は残されているのだろうか──

 スペイン2部リーグに所属するテネリフェは、1月31日現在で第23節を終えて勝ち点34で6位に位置している。19試合を残し首位のレバンテとは勝ち点差で15も離れている状態だ。現在2位のジローナとは8差となっており、1部へ自動昇格できる2位以内に入るには十分に現実味のある勝ち点差となっている。さらに、現在地の6位以内に入っておけば、最終順位の3位〜6位の4チームで1枠を争うプレーオフに進出できる。まさに、新加入選手の実力が試される順位にいるチームで、勝利に導く活躍ができれば最終的に昇格の立役者として崇められることになりそうだ。

そもそもテネリフェとはどんなチームなのだろうか──

 大西洋に浮かぶ7つの島々からなるカナリア諸島のテネリフェ島にある町で、カナリア諸島州の州都サンタ・クルス・デ・テネリフェをホームタウンとするサッカークラブがCDテネリフェだ。マドリードやバルセロナといった名のあるスペインのどの都市よりも、アフリカ北西部のモロッコや西サハラといった国のほうがテネリフェ島は近い。ちなみに、当初の移籍先と思われていたラス・パルマスは隣島のグラン・カナリア島にあるクラブで、テネリフェとはダービーマッチを繰り広げる強いライバル関係にある。

 テネリフェの正式名称はクラブ・デポルティーボ・テネリフェ(Club Deportivo Tenerife)で、テネリフェのスポーツクラブという意味になる。
 1912年に創設されたクラブは離島という立地条件であるが故に、しばらくは地域リーグでしか活動をしていなかった。1950年代に2部リーグへ昇格し初めて全国リーグへ参戦することになった。その後、1961-62シーズンに1部リーグに昇格するも翌シーズンには降格し、長い下部リーグ時代が続いていった。1989年に1部に昇格してからは、10シーズンに渡り降格を逃れた。1992-93シーズン、1995-96シーズンにはクラブ史上最高位の5位につけ、それぞれの翌シーズンにはUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)にも出場している。2000-01シーズンにはラファエル・ベニテス監督が指揮を執り、再び1部に昇格するも、ベニテス監督がバレンシアへ引き抜かれ1シーズンで2部へ降格することになった。その後はクラブの財政危機を乗り越え2008-09シーズンに昇格を決めたが、またもや1年で降格。さらに3部まで降格した年もあったが、2013-14シーズン以降は2部リーグをキープしている。

 クラブの黄金期といえば間違いなく1989年から1990年の10年間で、その間にアルゼンチンの貴公子フェルナンド・レドンド、2006年ドイツワールドカップで劇的ゴールを決めたドイツ代表のオリバー・ノイビル、オランダ代表のストライカーだったロイ・マカーイなどが所属していた。日本人のよく知るところでは、オーストラリア代表のアウレリオ・ヴィドマーだろう。彼はサンフレッチェ広島に移籍する1シーズン前まではテネリフェに所属していた。

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柴崎岳とテネリフェの可能性

そして、柴崎岳は果たして出場できるのだろうか──

 現在、テネリフェは4-2-3-1のシステムを多用しており、オプションとして4-4-2のシステムを敷くこともあるようだ。絶対的なレギュラーは右サイドのウイングに位置するスソ・サンタナで、31歳のベテランはチームの得点源でありキャプテンを務めている。もう1人はセネガル出身で20歳のアマト・エンディアで、トップを務めることが多い。そして、33歳でベテランのビトロは中盤でディフェンシブな役割を担う。その他に攻撃の軸、中盤の核となるような選手はおらず、テネリフェはセントラルMFの補強が急務とされていた。その証拠として今回の冬の移籍市場で柴崎の他に、スポルティング・ヒホンからラシッド・アイット=アトマンという24歳のセントラルMFを獲得している。

 そもそもポゼッション率の高くないテネリフェは、中盤でボールを落ち着けてからチームのストロングポイントであるサイドへ展開できるようになることが課題だった。そのことから考えても、柴崎にはしっかりとしたチャンスが与えられそうで、当面はトップ下かボランチ2枚のうち1人として出場することになりそうだ。


VictorySportsNews編集部