覇権を争う大一番で田臥勇太に引っ張られた栃木ブレックス、精神力の強さを発揮してアルバルク東京から逆転勝利を収める
劣勢の栃木、田臥のブザービーターで食らい付く アルバルク東京と栃木ブレックスの対戦は、『東地区の首位攻防戦』に留まらず『Bリーグの覇権を争う一戦』と呼ぶにふさわしい、テンションの高い試合となった。 第1クォーターは外国籍選手オン・ザ・コートがA東京は「2」、栃木は「1」。A東京のセンターには前節デビューしたジェフ・エアーズが入った。マッチアップするライアン・ロシターは、高さとフィジカルで上回るエアーズに力で勝負するのではなく、アウトサイドでパスの配給役に回ることでエアーズをペイントから引き出し、ズレを作って攻め込む。 古川孝敏のシュートタッチが良く、立ち上がりは栃木がリードするが、大一番で固くなったのか軽率なターンオーバーも出て、A東京に付け入る隙を与えてしまう。 他のチームならいざしらず、相手がA東京となるとミスは手痛いダメージに直結する。第1クォーターのラスト3分にディアンテ・ギャレットの連続3ポイントシュートを含む0-12のランを浴び、15-24と突き放された。 第2クォーターから試合は膠着状態に。今度は栃木がオン・ザ・コート「2」となるも、第1クォーターの栃木で竹内公輔が働いたように、第2クォーターのA東京では竹内譲次が、そしてザック・バランスキーが身体を張ったプレーで攻守を支える。ロシターが本来のスコアラーの仕事に戻り12得点を挙げるも、なかなか差を埋められない。 それでも残り1分を切って田臥が魅せる。ロシターが押さえたリバウンドからの速攻を決めると、残り7秒からの最後のポゼッションではロシターのスクリーンからエアーズにマークが切り替わった瞬間、相手に詰める足がないと判断してのジャンプシュートを放ち、これがブザービーターに。39-43と4点差として前半を終えた。 単調な攻めでリズムを崩すギャレットがブレーキに 第3クォーターも両チームがディフェンスに注力し、スコアの動きが重い展開が続く。ジェフ・ギブスの連続得点から、チーム一丸の守備で踏ん張り、渡邉裕規が2本のフリースローを決めて53-54と1点差に。それでもここでギャレットの3ポイントシュートがまた飛び出す。 この第3クォーターはスタートからの7分間、ギャレットがベンチで休みエアーズがコートに立っていた。加入して間もないエアーズは連携不足が明らかながらも『個』の力で存在感を発揮。第2クォーターに4本のシュートをすべて決めて8得点を奪い、第3クォーターには2本の3ポイントシュートを決めた。もちろんインサイドでのディフェンスも重厚。今後フィットしていけば脅威の存在となるだろう。 だが、最終的に栃木が逆転勝利を収める第4クォーターで、ギャレットとエアーズは仕事ができなかった。エアーズは6分間の出場で得点なし、リバウンドわずか1。10分間プレーしたギャレットは3得点、そして5つのターンオーバーを記録した。 立ち上がりは余力十分のギャレットが自在のプレーを見せる。菊地祥平の3ポイントシュートをアシストすると、自らのスティールから走ってダンクを決めるなど、流れをA東京に呼び込んだかに見えた。 それでも、ここを勝負どころと見た栃木がディフェンスの意識を一つ上のレベルに高めると、A東京はミスを連発し始める。新外国籍選手の連携不足でスムーズなオフェンスができない分、ディフェンスの強度を上げられると攻めどころを見いだせなくなり、ターンオーバーを連発。今度はそのミスを栃木が見逃さなかった。 単調な攻めから抜け出せずフラストレーションを溜めるギャレットから2本連続のターンオーバーを誘い、ロシターと田臥がきっちり得点につないで64-64の同点に追い付くと、そのまま怒涛のラン。実に13-0の攻勢に出て73-64と一気に突き放した。 痛快すぎる逆転劇、指揮官は「チームの勝利」を強調 73点目となるロシターの3ポイントシュートが決まったのは残り3分37秒の時点。ここで得点は止まるが、ディフェンスの意識は全く緩むことなく、残り1分を切るまで失点を許さなかった。A東京の無得点は5分間続いたことになる。 気付けば残り1分を切って73-66、無難に時計の針を進めた栃木が逆転勝利を収めた。 栃木の指揮官、トーマス・ウィスマンは「今日は特にディフェンスのパフォーマンスが良かった。チームとしてもスティールが7多く(栃木11、A東京4)、ターンオーバーを12多く誘発できた(栃木7、A東京19)ことからも素晴らしかった」と、粘り強い守備が逆転勝利を呼び込んだ要因だと語った。 ロースコアの展開になった中で、ロシターは両チーム最多の19得点、さらには12リバウンドと活躍。さらには田臥が16得点4アシスト、ターンオーバーわずか1と目立ったスタッツを残した。66-64と逆転のファストブレイクを決めた際、田臥はいつもクールな彼らしからぬ雄たけびを上げている。それだけ集中し、気合いの入った一戦だったということだ。 ただ、試合後の会見でのウィスマンHCは、田臥の活躍についての質問に対し、「第3クォーターに渡邊がしっかりコントロールして第4クォーターにつないでくれた」と控えポイントガードである渡邉の名前を挙げた。痛快な逆転劇は第4クォーター半ばからスタートしたが、第3クォーターの後半に10点差から栃木の反撃は始まっていた。追撃態勢を整えた渡邊の働きに言及することで、特定の選手ではなくチーム一丸での勝利であることを強調したかったのだろう。 今節は変則開催で、同カードは日曜と月曜に行われる。つまり第2戦は明日月曜ナイトゲーム、19時15分ティップオフだ。
文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE