世界最高峰のリーグの本質が見直された今大会

 今年はまずチーム分けの方法が、東西カンファレンスの最多得票獲得のキャプテン2人が交互に選手を選抜していく編成方式から、従来の東西カンファレンスごとの編成へと戻っている。また、「ターゲットスコア」に先に到達したチームが勝利するという特別ルールから、こちらも通常の48分間(12分x4クオーター)の試合方式へと回帰する。

 これについてNBAのアダム・シルバーコミッショナーは「Back to basketball」というフレーズを使いながら、NBAという世界最高峰のリーグの本質として何が大切かを考える必要があったとし、従来の伝統的なフォーマットに戻すにあたってバスケットボールの盛んなインディアナ州でのオールスターはふさわしい場所だと述べている。

「我々はファンや選手たちからの声も聞きましたが、昨年のオールスターについては誰も誇らしいものだと考えていません。誰が悪いとかではありませんが、ただ、我々はこのリーグの意義を再認識する必要があり、そしてそれは世界最高峰のバスケットボールを披露することだということです」(2023-24開幕直後のシルバー氏の記者会見での発言)

NBAのスーパースターが勢揃い。フレッシュな顔ぶれも

 1月下旬にはまず、東西計10名の先発選手が発表された。先発選手はファン、現役選手、メディアによる投票で決まるが、東では542万7874のファン票を獲得したヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)が、西は同509万8872票を獲得したレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)が選出された。

 今年でNBA入りから21シーズン目のジェームズは、今回の選出で、カリーム・アブドゥル・ジャバー(元レイカーズ等)を抜いて史上最多となる20度目のオールスターとなった。今シーズンも高いレベルの個人スタッツを残しているとはいえ、39歳の彼のオールスターでの勇姿が来年以降も見られる保証はない。その意味では、ジェームズのプレーぶりから目が離せない。

 その他、東はジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ、膝の故障で欠場の見込み)、ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)、タイリース・ハリバートン(ペイサーズ)、デイミアン・リラード(バックス)が、西はケビン・デュラント(サンズ)、ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)、シェイ・ギルジャス・アレクサンダー(オクラホマシティ・サンダー)が先発として選ばれた。

 1月にはエンビードが1試合で70得点(史上13位タイ)を、そしてドンチッチが73得点(同4位)と超人的なパフォーマンスを見せている。こうなるとエンビードの欠場は残念だが、昨夏のFIBAワールドカップの際にはスロベニア代表として沖縄で試合をし、日本のファンの間でも独特かつ圧倒的なプレーぶりでより認知度を上げたドンチッチのプレーぶりは見ものだろう。

 昨年のオールスターで初選出され、やはりワールドカップにアメリカ代表として出場したハリバートンは、今年は地元開催の後押しを受けて先発となった。今、最も急激に成長を遂げ、今シーズンはここまでアシスト1位を走る23歳のガードは、選手紹介時にうなるような声援を浴びるはずだ。

 コーチ選抜で決まるベンチメンバーに目を向けると、西に10度目のオールスター選出となったステフィン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ)やアンソニー・デイビス(レイカーズ)、ポール・ジョージ、カワイ・レナード(ともにロサンゼルス・クリッパーズ)といったベテラン勢が多いのに対し、東はジェイレン・ブラウン(ニューヨーク・ニックス)、タイリース・マクシー(シクサーズ)、パオロ・バンケロ(オーランド・マジック)が初めての選出となるなど、フレッシュな顔ぶれの印象だ。

 東はこの他、ドノバン・ミッチェル(クリーブランド・キャバリアーズ)、ジェイレン・ブラウン(セルティックス)、バム・アデバヨ(マイアミ・ヒート)らが選ばれている。

 ここ10年、20年のNBAの国際化には目を見張るものがある。しかも、エンビードやドンチッチ、アレクサンダー、アデクトンボら非アメリカ出身者がシーズンの得点ランキング上位を占めるといった事象が示す通り、今やこういった選手たちが多くのチームで主力となり、プレーオフのシード順や優勝争いを左右する存在になっている。彼ら抜きでNBAを語ることはもはやできなくなっているということだ。

オールスターゲーム以外にも様々なイベントが開催。次世代スターの躍動にも注目

 オールスターは本戦以外にもイベントが目白押しだ。17日(現地16日)の「ライジングスターズ」ではNBA1年目と2年目、そしてNBAの下部リーグであるGリーグのチーム「イグナイト」の選手らが4チームに分かれ、トーナメントを行う。この中でなんといっても目玉なのが、ジェームズ以来の大物として昨年のNBAドラフトで全体1位指名受けたビクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)だ。2m24cmの高身長ながらドリブルや3Pなどアウトサイドの選手のようなスキルも備えるフランス出身の20歳が、オールスターというお祭りイベントでその怪物的な技量を披露する場面はありそうだ。

 そして18日(現地17日)には毎年恒例で、オールスターならではの人気イベントである「スキルズチャレンジ」や「3ポイントコンテスト」「ダンクコンテスト」があり、世界最高峰・NBAの選手が超人的な能力で競う。

 今年はこれらのコンテストに加えてカリーと、WNBAのスターサブリナ・イオネスク(ニューヨーク・リバティ)が3Pコンテストを行う初の試みが催される。史上最高のシューターと呼ばれるカリーと、昨年のWNBAオールスターの3Pコンテストで歴代1位の37得点を挙げたイオネスクの対決は、多くの耳目を集めるに違いない。

 オールスターは近年、NBA使用のアリーナだけでなく異なる会場を使って街を挙げて盛り上げを図っている。今回はNFLインディアナポリス・コルツの本拠地で約7万人収容のルーカスオイルスタジアムやインディアナコンベンションセンターもイベント会場となっており(コンテストは前者で開催)、実際に訪れるにしてもテレビでの観戦になるにせよ、NBAの祭典の規模の大きさを感じることができるだろう。


永塚和志

スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。