文=村上晃一

大学はトップリーグの下部組織ではない

「日本ラグビー協会が大学ラグビー全体の改革を進めるための作業部会を設置する」という報道があった。

 主に大学レベルの選手強化について話し合われることになりそうだが、全国大学リーグの設置や、エリート選手の育成にのみ重きが置かれることには違和感を覚える。スーパーラグビーに日本チーム「サンウルブズ」が参戦したことで、国内シーズンの短期化が必要になり、来季より日本選手権から大学枠を取り払うということが決まった。

 筆者はトップリーグと大学が戦うことには、反対の立場をとる。プロ的な強化が加速するトップリーグと大学では、一部のチームを除けば、トレーニングの質も量も格段の開きがある。強豪国の代表選手が多数プレーするトップリーグと、まだ体の出来上がっていない18歳、19歳の選手が戦うのは怪我のリスクもある。

 また、トップリーグと大学が戦うために、これまで大学側は日本選手権については難しい日程を強いられていた。トップリーグと日程を合わせなくても良いのであれば、大学は独自のスケジュールを組むことができる。シーズンを長くすることもできるし、多くの学生に試合を楽しむ機会を作ることができるだろう。

 トップの大学に高い目標を持たせるために海外の大学生レベルの強豪チームと戦うような機会を作っても面白い。大学をトップリーグの下部組織のように考えるべきではないし、そう考えるのであれば、プロ的な強化ができる大学を数校に絞り込み、そこに優秀な選手を集めたほうが効率は良い。しかし、大学同士がしのぎを削ってきた日本ラグビーの文化にはそぐわない考えだろう。

社会で活躍できる人材を育てるべき

©Getty Images

 大学ラグビーがどうあるべきか。筆者は学業と部活を両立できることが大前提で、ラグビーの最先端の戦術、トレーニング、ルールなどを研究する場であってほしいと思う。

 エリート選手はトップリーグでプレーする環境を与え、U20日本代表など日本ラグビー協会主導のエリートプログラムで引き上げるべきで、各大学はそれぞれの得意分野の研究をしてほしい。ラグビーに割く時間を増大させ、大学チームに金銭的、時間的に負担を強いる改革には異議を唱えたい。ラグビーをプレーする者であれば可能な範囲で高いレベルで戦いたいと願うのが普通だ。高いレベルでラグビーもでき、学業も優秀な学生が卒業後に社会で活躍し、国を引っ張るリーダーになっていくことが、日本ラグビーの価値を高めることにもなる。

 強豪大学にはスポーツ推薦で入学し、トップリーグを目指す選手が多いことは承知だが、そうした選手と難関の受験を突破して入学し、ラグビー部の門をたたき、卒業すればラグビー以外の世界に夢を持つ学生が共存して人格を磨き合うことこそ、大学ラグビーの価値だと思う。したがって大学が選手の推薦枠を拡大する方向に行くことにも違和感がある。

 現有戦力で、どう勝つかに知恵を絞るのが大学ラグビーのあるべき姿だ。今季の全国大学選手権で、京都産業大学が明治大学を破ったことは、人材確保に有利な立場にあるチームが必ずしも勝つわけではないというスポーツの面白さを示している。

 かつて日本代表を率いた大西鐵之祐氏は、自身が指導した早稲田大学で戦術を実験、検証し、それを日本代表で実践した。現在の日本代表ヘッドコーチであるジェイミー・ジョセフも言及しているように、「体の小さな日本は賢く戦わなければいけない」はずだ。それを念頭に置いても、大学ラグビーが戦術、ルールなどの研究をすることは価値がある。

 たとえば、大学の一つのリーグが、今後世界が採用しそうなルールを先んじて試行し、その研究成果を世界に発信する。体育系の大学が新しいトレーニング方法の研究で競い合う。部員達が真剣勝負を繰り広げる中で未来の日本ラグビーに資する研究を重ねる。そこから、コーチ、アナリスト、レフリー、トレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、メンタルコーチなどが育っていく。大学ラグビーはトップリーグとは別の視点で考え、ラグビーのみならず、社会に出て活躍できる人材を育てるべきだ。

 日本ラグビーの幅を広げるのが大学ラグビーの役割だという気がしてならない。

村上晃一

著者プロフィール 村上晃一

1965年、京都府生まれ。10歳からラグビーを始め、現役時代のポジションはCTB/FB。大阪体育大時代には86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年にベースボール・マガジン社入社、『ラグビーマガジン』編集部勤務。90年より97年まで同誌編集長。98年に独立。『ラグビーマガジン』、『Sports Graphic Number』などにラグビーについて寄稿。