ネイマール対策は「ウルグアイ流ハードマーク」
執筆者 JAVIER DE LEÓN モンテビデオ(ウルグアイ首都)の街はお祭りムードだ。理由はブラジル代表がやってきて、セレステ(空色=ウルグアイ代表の愛称)と2018年に行われるワールドカップ・ロシア大会の南米予選を戦うからだ。 現在ウルグアイは首位ブラジルに次ぐ2位。かつてないほど高い位置から順位表を見下ろせる立場にいる。 ウルグアイでは、昔ながらの飲み屋や現代的なSNSといったあらゆる場所で「どうすればネイマールを止められるのか?」という質問が繰り返されている。 その質問に対し、ウルグアイ代表のオスカル・タバレス監督の説明は明確だった。 「ネイマールを止める方法を知っていたとしても教えるつもりはないよ。だがそんな方法はない。彼は予測不可能な選手の典型例だからね。彼のことをよく知り、癖を学び、マークをつける。その上でチームとしてもしっかり守らなければならない。ブラジルはネイマールだけのチームではないからね」 一方、ウルグアイ代表の最多出場記録を持つ、FCポルト所属のマキシミリアーノ・ペレイラは「ウルグアイ流のハードマークだ」と直球でその問いに答えている。 ネイマールはモンテビデオにあるエスタディオ・センテナリオで代表戦を戦った経験がない。 だが2011年、サントスFCの一員としてCAペニャロール(ウルグアイ1部)と戦ったコパ・リベルタドーレス(南米サッカー連盟が主催のクラブチーム大陸選手権大会)決勝のことは覚えているはずだ。 あの試合のエスタディオはまるで地獄で、花火と煙が充満し、視界が開けるのを待つためにキックオフが遅れた。 ネイマールはサントスでの再戦でリベンジを果たし、南米王者となったことも覚えているだろう。あの夜、勝負を分けたのはペニャロールの右サイドバック、アレハンドロ・ゴンサレスだった。ネイマールが試合の主役になれたのは、彼がネイマールに削られて負傷交代を強いられたからだ。 1年前にブラジル・レシフェで行われたブラジル対ウルグアイの一戦も、ドゥンガ率いるブラジルが30分たらずで2―0とリードを広げるまでは、文字通りウルグアイがブラジルを踊らせ続ける、お祭り騒ぎとなった。だがそんな雰囲気も後半の開始早々、ウルグアイに2-2と追いつかれたことで一変。最後はウルグアイが逆転しかけるまでに盛り返した。 あれから12カ月が経過した。ブラジル代表の状況は全く異なるものとなっている。 ネイマールはFCバルセロナで素晴らしいパフォーマンスを披露し始めた。2016年夏にドゥンガを解任したブラジルは、チッチ新監督の就任以降、6連勝を挙げ、現在順位表のトップに立っている。 ガブリエル・ジェズスが不在の攻撃陣にはリヴァプールFCのロベルト・フィルミーノが招集され、その同僚でもあるフィリペ・コウチーニョと共に前線を構成する。 スペインやフランスリーグ所属の常連組としては、レアル・マドリードのカゼミーロとマルセロ、パリ・サンジェルマンFC(PSG)のマルキーニョスなどがいる。もちろんユヴェントスFCのダニエウ・アウヴェスも健在だ。 では、ウルグアイはどうか。スアレスの出場停止は埋めがたい穴だ。彼の欠場が攻撃陣にもたらす影響は計り知れないが、具体的にはセレステの歴史的ストライカーがプレーできないという点に限る。ゆえにウルグアイはプレーできる選手のことに集中すべきである。 チームをけん引するのはヨーロッパで自身最高のシーズンを過ごしているPSGのエディンソン・カバーニだ。彼もスアレスと共にプレーすればお互いの能力を引き出し合える相乗効果が期待できただろう。スアレスがいない彼に1人で何とかしてもらうしかない。 2人目のストライカーとして起用されるのは、同じくフランスのリーグ・アンでプレーしているディエゴ・ロラン(FCジロンダン・ボルドー)で間違いないだろう。 中盤にはハードワーカーが並び、最終ラインにはいつだって主将のディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリード)が構えている。ウルグアイはブラジルのポテンシャルと同様に、ビッグゲームでこそ強さを発揮する自分たちの武器が何かを心得ている。それにもちろん、ここまでワールドカップ予選のホームゲームは6戦全勝であることも忘れてはいない。