文=河合拓

自分たちのミスに苦しみながらも4-0の完勝

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 23日に行われたUAE戦で先発したFW大迫勇也とMF今野泰幸が負傷のため、チームを離脱していた日本は、その2人に代わってFWに岡崎慎司、中盤の底に酒井高徳が起用された。

 FIFAランクでは日本が51位、タイが127位と両チームの差は明らか。実際に日本は序盤からボールを支配して、チャンスをつくり出す。前半8分には森重真人がFW久保裕也にロングパスを送る。右サイドでボールを受けた久保は、ドリブルで仕掛けてからクロスを入れると、ニアで岡崎がDFを引き連れて潰れ、その背後に入り込んでいた香川がボールを受ける。「(久保)裕也が右サイドで抜けたとき、(エリア内に)入るタイミングを少しズラして入ったら、岡ちゃんがニア(サイド)で潰れてくれました」と振り返る10番はボールを収めると、寄せて来たDFを外してシュートを決めた。「うまくかわして決められたかなと思います。良い時間帯でしたし、タイミングも含めて良いゴールだったと思います」と、香川自身も胸を張るゴールで1点をリードした。

 その後も攻勢の日本は前半19分、再び右サイドから久保がクロスを入れると、ゴール前に入り込んだ岡崎がヘッドで合わせて追加点を挙げる。大迫の負傷で巡ってきたチャンスを逃さず、日本代表通算50ゴール目を自身の代名詞でもあるダイビングヘッドで決めた岡崎は、「ああいうヘディングは、最近なかったので」と喜んだ。

 早い時間帯で2点をリードした日本だったが、ここからの展開は褒められたものではなかった。ロングボールを前線で収めた岡崎のシュートがブロックされ、右サイドの久保のパスから追加点のチャンスをつくったが香川シュートが大きく枠外に外れるなど、追加点を挙げられない。さらに中盤の底に入った山口蛍と酒井高徳、右サイドの酒井宏樹がミスを連発。ボールを相手に渡すようなミスも出て、時間の経過とともにピンチが増えていったが、GK川島の好セーブもあり、なんとか前半を無失点で折り返す。

守護神・川島の活躍が光り、2試合連続の無失点

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 後半の立ち上がりも、ホームの日本は試合の主導権を握られる。それでも、GK川島を中心に守備陣が踏ん張り、悪い時間帯を無失点で乗り切る。すると12分、酒井宏のスローインを受けた久保が、中央にカットインして左足を振り抜く。前半は、クロスから再三にわたってチャンスをつくっていた14番が、豪快なシュートを突き刺して日本に3点目が入る。

 その後、日本はMF本田圭佑、MF清武弘嗣を投入する。後半38分には、交代出場したばかりの清武のCKから、「セットプレーから、あんなにフリーになることはない」と振り返ったDF吉田麻也が、ヘディングシュートを叩き込み、勝利を決定的なものとした。

 ビルドアップ時のミスでボールを失い、『タイのメッシ』ことチャナティップのドリブルを中心とした攻撃に苦しめられながらも、なんとか無失点に抑えて来た日本に後半40分、最大のピンチが訪れる。エリア内でファウルを取られて、タイにPKが与えられたのだ。それでも、この絶体絶命のピンチに、GK川島が相手のシュートを枠外に弾き出し、ゴールを守り抜く。このまま日本は4-0で勝利し、3月シリーズを2連勝とした。

 スコア上は快勝だったが、キャプテンの吉田は「結果は評価できますが、内容は全然。無失点で終えられたのは、奇跡に近い」と反省しきり。そして「W杯予選は悪い中でもこのように勝ち点を積み上げることが大事ですが、勝っているときこそ足元を見つめ直して、どう改善するかを探らないといけない」と、より精度を高める必要性を強調した。それでも日本は勝ち点を16に伸ばして、今節のグループ2位以上が確定。また、試合を控える前節までの首位・サウジアラビアを暫定的に抜いて、グループ首位に浮上した。


河合拓

2002年からフットサル専門誌での仕事を始め、2006年のドイツワールドカップを前にサッカー専門誌に転職。その後、『ゲキサカ』編集部を経て、フリーランスとして活動を開始する。現在はサッカーとフットサルの取材を精力的に続ける。