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[広島]黒田の穴を埋められれば連覇も見える

 昨シーズンは2位の巨人に17.5ゲーム差でセ・リーグ制覇を成し遂げた広島から見てみよう。昨年は684得点を挙げており、得点で2位のヤクルトが記録した584得点より90点も多かった。チーム打率も.272で、同じく2位のチーム打率だったヤクルトの.256を大きく上回っていた。今季もこの攻撃陣は健在で、出塁率の高い1番の田中広輔、2番の菊池涼介、3番の丸佳浩を中軸打者が還すパターンは力強い。

 4番には昨季のリーグMVPだった新井貴浩が座ることが予想されるが、昨年大きくブレイクし、侍ジャパンに選ばれて2017WBCに出場した鈴木誠也が4番を張る可能性もある。鈴木が4番に座って、プロ野球の世界にありがちな「実質2年目のジンクス」と呼ばれるスランプに落ち込むことなく活躍できれば、今季の広島打線は大きな補強がないものの、破壊力は十分だろう。

 不安点を挙げるとすれば、ルナがチームを去った三塁を誰が守るのかということだ。2013~14年とサードのレギュラーだった堂林翔太や、昨年は93試合で三塁の守備に就いたのを含む115試合に出て.282の打率を残した安部友裕が候補だが、アピールすべきオープン戦で堂林は.196、安部は.161という打撃成績だった。シーズンに入って三塁を守る選手が打撃で貢献できれば、昨年以上の得点力を持つことになるのだが。

 一方の投手陣は昨年のチーム防御率がリーグトップの3.20で、失点も497点とリーグ唯一の400点台を記録するほど良い数字を残した。リードして試合終盤を迎えたときには、今村猛、ジャクソン、中崎翔太を使って勝ち切るという形がしっかりとできていたのは大きい。ヘーゲンズも勝ち試合のリリーフにいたが、昨年の夏場から先発に回っており、今季もそうなる可能性がある。

 先発投手では昨年16勝を挙げて最多勝利のタイトルを獲得した野村祐輔と、15勝をマークして沢村賞に選ばれたジョンソンの2人は、今季も十分に計算できる。ただし昨季の二桁勝利トリオの1人で、10勝していた黒田博樹が引退したため、その穴を埋めることが必要だ。野村、ジョンソンに続く先発ローテ入りしそうな投手は、福井優也、岡田明丈、戸田隆矢、大瀬良大地、薮田和樹、九里亜蓮、床田寛樹らがいるが、昨季は福井が5勝、岡田と戸田は4勝、大瀬良と薮田は3勝、九里は2勝、床田は今季のルーキーである。彼らが昨年を上回る勝ち星を積み上げて黒田の分を補填できるかどうか。それができれば、リーグ連覇の可能性が大きくなるはずだ。

[巨人]陽岱鋼と山口俊の早い復帰が待たれる

©共同通信

 昨年は広島に大差をつけられて2位となり、2年続けてリーグ制覇を逃してしまった巨人。チーム打率は、広島、ヤクルトに次ぐ3位の.251だった。坂本勇人は.344の打率を残して見事に首位打者のタイトルを獲得し、村田修一はリーグ7位となる.302の成績を残した。しかし規定打席に到達したその他の選手は、.283で15位の長野久義、.258で22位のギャレット、そして.204でリーグ最下位となる27位の小林誠司という成績に終わっている。そこで補強を必要と考えたフロントは、FAで陽岱鋼を獲得し、さらに楽天時代に日本一に貢献したマギーの入団にも成功する。

 陽岱鋼は日本ハム時代の13年に47盗塁をマークして盗塁王のタイトルホルダーとなっており、守備では昨年を含む4度外野手としてゴールデングラブ賞を受けている。3割にこそ届いていないが、.昨季は293の打率を残した。大きな戦力の補強と言えるが、キャンプ中に下半身の張りを訴える故障を起こし、開幕の時点でまだ復帰の目途は立っていない。陽岱鋼が早い段階で復帰できるかどうかは、攻撃面に大きな影響がありそうだ。マギーは楽天に所属していた13年に全144試合に出場して打率.292、28本塁打、93打点の成績を収めた実績がある。その時に近い活躍ができれば、広島に引けを取らない攻撃陣になる可能性がある。また昨年の規定到達打者で最下位だった小林は、2017WBCで大きく成長した。シーズンでの活躍にも期待ができそうだ。

 昨年の失点は543点で広島に次ぐ2位、防御率は広島、阪神に次ぐ3位の3.45だった巨人投手陣。テコ入れのため、DeNAから山口俊を、ソフトバンクから森福允彦をFAで獲得した。森福は左の中継ぎとして順調に開幕を迎え、活躍が期待できそうだ。しかし昨年11勝を挙げてDeNAのCS初出場に貢献した山口は、先発ローテ入りが期待されていたが、右肩の故障によりこちらも復帰の目途が立っていない。それでも開幕時の先発ローテーション投手として、菅野智之、マイコラス、田口麗斗、内海哲也、吉川光夫、大竹寛と揃っており、層の厚さがある。特に昨年初の二桁10勝を挙げた田口は、オープン戦の規定到達投手でトップとなる防御率0.90を記録し、好調のままシーズンに入っていくことができる。

 リリーフ陣は昨年49ホールドポイントで自身2度目となる最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得したマシソンをはじめ、森福、田原誠次、澤村拓一、それに新外国人のカミネロが勝ちゲームを逃げ切る戦力となるだろう。特に新戦力のカミネロは、13年から16年までの4年間、米メジャーリーグの試合にすべてリリーフとして計149試合で登板していた実績があるだけに、期待できそうな投手である。総じて層の厚い巨人だけに、十分優勝を狙える戦力があると言えるだろう。

[DeNA]山口俊の穴を埋められれば優勝争いの可能性も

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 昨季は11年ぶりのAクラス入りと、球団史上初のCSへ進出したDeNA。チーム打率はリーグ4位の.249だったが、得点は3位の572点を挙げた。チームの中心は、侍ジャパンでも4番を務めた主砲の筒香嘉智。昨年は44本塁打、110打点で打撃2冠に輝いた。2017WBCでも活躍を見せてくれただけに、今季も昨年以上の成績を期待したい。その前の3番を打つロペス、後ろの5番を打つ宮﨑敏郎も期待したいところだが、特にロペスはオープン戦の打率が.143とあまりに打てなかったのは気になるところだ。しかし実績があるだけに、開幕してからのバッティングに期待したい。

 また、昨年は怪我で出遅れた梶谷隆幸が今季は開幕からスタートできるのは大きい。今年も1番を任されそうな桑原将志も、無事にシーズンインできそうである。不安なポイントとしては二塁手をどうするのかだが、BCリーグの石川から今季入団した新戦力のシリアコが、オープン戦では.375の成績を残して首位打者になった。昨年の打率が.209だった石川雄洋に代わって、レギュラーの座を掴むかもしれない。

 昨年のチーム防御率はリーグ5位の3.76だった投手陣。ここから11勝と勝ち頭だった山口俊がFAで移籍してしまったのは大きな穴である。先発ローテーション投手である昨年9勝の石田健大、8勝の今永昇太、7勝の井納翔一は、それぞれが4勝ずつでも上乗せできれば山口の穴は埋まるはずだ。しかしこの3人に続く先発投手が、開幕時にはドラフト1位ルーキーの濱口遥大、それにウィーランドとクラインの新外国人投手になりそうなのは、まだ日本球界で実績がないだけに不安である。特にクラインはオープン戦で17イニングで21個の四球を与え、制球に難がありそうなのは気になるところだ。

 リリーフ陣は須田幸太、三上朋也、山﨑康晃の勝ちゲームを逃げ切る3人に加えて、新外国人のパットンが期待できそうである。米メジャーリーグでは通算54回2/3を投げて58個の三振を奪っている投手だ。リードしてパットン、山﨑で締められれば、今季は優勝争いに絡める可能性もある。


BBCrix編集部