[阪神]昨年経験を積んだ若手と移籍の糸井が起爆剤になるか
2016年は優勝した広島と24.5ゲーム差、3位のDeNAとは5ゲーム差で4位という成績だった阪神。チーム打率はリーグワーストの.245に終わり、上位チームに比べて破壊力不足は否めなかった。規定到達打者の成績を見ると、リーグ5位となる打率.311とよく打った福留孝介と、ルーキーながら16位となる.275の打率を残して新人王となった髙山俊は結果を出した。しかしその他の選手で規定に到達したのは、退団した23位で.255だったゴメスと、リーグワースト2となる26位で.236の鳥谷敬だけだった。
それでも金本知憲監督は、「超変革」というスローガンのもと、実績のなかった若手を積極的に起用した。規定打席には5打席届かなかったものの.273の打率を残した北條史也、107試合で打率.299、11本塁打を記録して昨季の捕手から今季は一塁手にコンバートされた原口文仁、64試合に出場して.266の打率だった中谷将大などが1軍で大きく経験を積むことができた。これが活きて彼らが今季飛躍できれば、チーム力の底上げはかなりのものになる。さらにそこへFAで糸井嘉男が入団した。今年36歳になるベテランだが、昨季は打率.306の数字を残し、さらに53個のスティールを決めて盗塁王となっている。特に阪神はリーグ最少の59個しか盗塁を記録していなかっただけに、その数に匹敵する糸井の加入によりチーム全体に起動力アップが見られれば、上位を狙える攻撃陣となる可能性がある。
チーム防御率は、優勝した広島に次ぐリーグ2位の3.38だった阪神投手陣。先発は昨年の12勝を含む在籍7年で5度の二桁勝利を挙げているメッセンジャー、昨季は7勝に終わったものの3度の二桁勝利をマークしている藤浪晋太郎、それに昨年初の10勝を挙げた岩貞祐太の3本柱は、今季も十分に計算ができる。今年38歳になるベテランの能見篤史も過去に5度の二桁勝利を挙げており、今年も10勝超えは期待できるが、過去3年の負けが13敗、13敗、12敗とリーグワーストを記録しているのは気になるところだ。果たして今季は貯金を作れるだろうか。この4人に加えて昨季後半にローテ入りし、シーズン4勝を挙げた青柳晃洋、ファームで最多勝と2位の防御率を記録した秋山拓巳が先発ローテ入りしそうである。
リリーフ陣は松田遼馬、ドリス、藤川球児、マテオの右腕に比べて、昨年は高橋聡文しか左の計算できる投手がいなかったが、今季は岩崎優がリリーフに回って厚みができた。リードして後半を迎え、彼らのリレーで逃げ切れる形を作っていければ、優勝争いができる投手陣になり得るだろう。
[ヤクルト]畠山の復調と新外国人が活躍すれば上位争いも
©共同通信 昨年は優勝した広島に25.5ゲームもの差をつけられ、5位に終わったヤクルト。しかし打線はチーム打率が.256、得点は594点を挙げて、いずれも広島に次ぐリーグ2位の成績を残している。規定到達打者の打率を見ても、2年連続トリプルスリーを達成した山田哲人が.304で6位、一昨年の首位打者で昨年は途中離脱があったものの.302で8位となった川端慎吾、3割には届かなかったもののリーグを越えた移籍1年目ながら.295の結果を残した坂口智隆が10位、それに31本塁打を放ったバレンティンが.269の19位という成績を収めている。つまり打撃10傑に3人の選手が入っていたのだ。
そのうち川端は椎間板ヘルニアのため実戦から離れ、1軍復帰が遅くなるのではとの見方もあったが、3月28日の2軍戦に先発出場して3打席に立った。開幕1軍メンバーには入らなかったものの、近く合流する目途はついたようだ。そんな彼らに、畠山和洋、雄平、大引啓次らが並ぶ打線は強力である。ただし一昨年に打点王のタイトルを獲得した畠山は、相次ぐ故障に見舞われて昨年は45試合にしか出場できなかっただけに、復調できるかどうかがさらなるチーム打撃力向上のカギを握りそうだ。畠山が本来の力を出せれば、広島に負けない破壊力ある打線になり得るだろう。
ただし昨季のヤクルト投手陣は壊滅的な成績であった。チーム防御率は4.73と12球団ワーストであり、これは毎試合5点を取らなければ勝てない数字である。防御率5位のDeNA投手陣が3.76なので、DeNAとヤクルトとの防御率の差が約1点もあったのだ。当然のことながら失点数も断トツの694点もあり、これは失点数5位のDeNAが588点なので100点以上の差をつけられ、トップの広島は497点なので約200点も多くヤクルトは失点していたことになる。
これには特に先発投手陣の枚数が足りなかったことが大きい。規定投球回に到達したのは小川泰弘ただ1人で、その小川の防御率は規定到達投手ワーストの4.50であった。しかし昨年は故障のため規定投球回に届かなかった石川雅規は、オープン戦で3試合に登板して14イニングを投げ、失点0に抑える好投を見せている。今季は期待できそうだ。この2人にオープン戦3試合で防御率0.71の館山昌平、同じく3試合で防御率1.13の山中浩史は先発ローテ入りしそうである。ただしあとの2人はオーレンドルフ、ブキャナンの新外国人となる可能性が高い。未知数だが、彼らが結果を残してくれれば上位争いに食い込めそうだ。リリーフ陣は2017WBCに出場した抑えの秋吉亮、昨年39ホールドポイントを挙げたルーキは計算できる。あとは昨年育成選手から復活した平井諒、ドラフト2位ルーキーの星知弥、新外国人のギルメットなどが存在感のある活躍を見せてくれれば、昨年に比べて大きく成績を伸ばせる可能性がある。
[中日]大きな補強なく、今季も厳しい戦いか
©共同通信 優勝した広島に30.5ゲームもの大差をつけられ、リーグ最下位に沈んだ昨季の中日。チーム打率はワーストの阪神とほとんど変わらないリーグ5位の.245で、総得点は阪神の506点を下回るリーグ最少の500点しかなかった。規定打席到達打者で打率3割を打った者は1人もおらず、最も高かったのは.292で12位だった大島洋平だ。以下、ビシエドが.274の17位、堂上直倫が.254の24位、平田良介が.248の25位となっている。
戦力としては厳しい昨年の打線であったが、今季の攻撃陣の補強はドラフト入団組を除けば新外国人のゲレーロしかいない。そのゲレーロも2015年にはドジャースで106試合に出場して打率.233、11本塁打、36打点の成績を収めていたが、昨年は膝の故障のためマイナーでもほとんど試合に出ていなかったのは気がかりだ。もちろん万全の体調でシーズンに臨み、打棒が炸裂する可能性もあるので期待しつつ注目したい。もう一人打線の新戦力としてドラフト2位の京田陽太が開幕1軍を勝ち取った。京田がセカンドのレギュラー争いに食い込める活躍ができれば、ベテランの荒木雅博や亀澤恭平らも刺激を受けてチーム力がアップすることだろう。しかし結局は昨年不調だった選手たち、特にビシエドや平田らが今季どれだけ成績を伸ばせるかにかかっている。
チーム防御率はリーグ4位の3.65だった中日投手陣。昨年は規定投球回に到達した者がおらず、勝ち星も大野雄大と若松駿太の挙げた7勝がチームトップで、こちらも非常に厳しい戦いを強いられた。
今季の開幕時における先発ローテは、大野と過去に5度の二桁勝利をマークしている吉見一起、2014年に13勝で最多勝利のタイトルを取ったベテランの山井大介、昨年6勝のバルデス、昨年5勝の小熊凌祐、それに13年のドラフト1位で4年目の鈴木翔太で回すことになりそうだ。特に鈴木はまだプロ未勝利なだけに、どこまでやるか注目しよう。リリーフではセットアッパーを務める岡田俊哉と祖父江大輔、それに抑えを務める田島慎二は計算ができる。果たしてリードする展開でそこまで繋ぐことができるのか。今季も厳しい戦いが予想される。