文=横井伸幸
722億円を稼いだが、3位に転落
これまで国内外で無数のタイトルを獲得してきたレアル・マドリーだが、その矜持といえば欧州制覇の回数だろう。56年から91年まで続いたチャンピオンズカップ時代を含むUEFAチャンピオンズリーグを11回も制しているクラブは他にない。
同様に、ここ10年あまり、レアル・マドリーは金銭面でもヨーロッパをリードしてきた。世界の四大会計事務所のひとつであるデロイト社が毎年公表するサッカークラブの年間収入ランキング「デロイト・フットボール・マネー・リーグ」のことだ。レアル・マドリーは11年連続1位という堂々たる実績を誇る。企業家であるフロレンティーノ・ペレス会長にとって、ここでの首位は大きな誇りであったに違いない。
ところが、今年1月に発表された15-16シーズン分のランキングにおいてレアル・マドリーは3位に転落してしまった。収入自体は前季と較べて7.5%増えており、初めて6億ユーロ(約722億円)の大台にも乗ったのだが、代わって12年ぶりに頂点に立ったマンチェスター・ユナイテッドは前季比32.6%増の6億8900万ユーロ(約829億円)を計上。13-14シーズンを除いて7季前から2位を定位置としてきたバルサもレアル・マドリーより10万ユーロ多い6億2020万ユーロ(前季比10.6%増の約746億円)を懐に収めた。
3つに分けられている収入源を個別に見ていくと、まず、レアル・マドリーの「試合の入場料収入」は悪くない。前季比0.6%減の約155億円だが、マンチェスター・ユナイテッドの1億3750万ユーロ(前季比20.6%増の約165億円)やアーセナルの1億3360万ユーロ(約161億円)との差はそれほどでもなく、バルサの1億2140万ユーロ(3.8%増の約146億円)には勝っている。
次に「試合の放映権収入」は前季比13.9%増の2億2770万ユーロ(約274億円)で1位。2位マンチェスター・シティの2億1580万ユーロ(約260億円)や、3位バルサの2億270万ユーロ(1.5%増の約244億円)はともかく、7位マンチェスター・ユナイテッドの1億8770万ユーロ(32.6%増の約226億円)には結構な差を付けている。
問題は3つ目の「商業収入」だ。トップはマンチェスター・ユナイテッドの3億6300万ユーロ(前季比38%増の約437億円)で、2位はバイエルン・ミュンヘンの3億4260万ユーロ(約412億円)。3位はバルサの2億9600万ユーロ(21.3%増の約356億円)。
レアル・マドリーはそれらに遠く及ばず、マンチェスター・ユナイテッドより120億円も少ない2億6300万ユーロ(6.5%増の約316億円)で5位だったのだ。
契約見直しとネーミングライツでトップ返り咲きなるか
©Getty Images スペインの経済紙エクスパンシオンによると、カギを握ったのはユニフォームサプライヤーとの契約である。マンチェスター・ユナイテッドは14年7月、アディダスと1シーズン7500万ポンド(約104億円)で10年間の契約を結んだ。その始まりが15-16シーズン。バルサは昨年5月、毎シーズン100億プラスアルファの最大155億ユーロ(約186億円)という条件でナイキとの契約を26年まで延長した。これが効力を持つのは18年からだが、サインした契約書には「それまで現行の年間6500万ユーロ(約78億円)を20%アップする」という条項がついていた。
一方でレアル・マドリーはというと、12年に締結したアディダスとの契約で得られるのが毎シーズン4000万ユーロ(約48億円)。当時は世界最高レベルの高額だったが、拡大する一方の欧州サッカー経済に置いてけぼりを食らっているのは否めない。
ただ当のアディダスもそれはわかっているので、遅かれ早かれ契約内容の見直しは行われるであろう。また今シーズン終了後に始まる予定のサンティアゴ・ベルナベウ改修工事に際して、アブダビのIPIC(国際石油投資会社)がネーミングライツを購入するといわれているので、レアル・マドリーはそちらからの収入も期待できる。
まだかなり先の話になるが、次回のデロイト・フットボール・マネー・リーグの首位攻防戦、面白いことになりそうだ。