バルサが狙うは右SBとクラッキ
執筆者 Francesc Aguilar バルサはロベルト・フェルナンデス強化部長を中心に今夏の補強に向け水面下で準備を進めている。 まず右SBだ。クラブのスカウト陣は欧州のみならず、世界中を駆け回っているものの、現在まで条件を満たす目ぼしい人材は見つかっていないようだ。 とはいえ、右SBが最大の補強ポイントであることに疑いの余地はない。 更に、バルサが目論むもうひとつのターゲットにワールドクラスのクラッキ獲得がある。それ以外の補強については、大部分が現戦力をはじめ、ジェラール・デウロフェウ(ACミラン、イタリア)、ムニル(バレンシア、スペイン)、セルジ・サンペル(グラナダ、スペイン)など、レンタル移籍で放出中の選手をどれだけ高く売却できるかにもかかってくるだろう。 バルサの右SB最有力候補は、現在でもアーセナルのエクトル・ベジェリンである。しかしDFとしては異例ともいえる高額な移籍金がネックとなっている他、豊富な資金で大型補強を続けるマンチェスター・シティを筆頭にユヴェントスFCなどライバルの存在も交渉を難しくしている。 バルサにとって唯一の好材料は、ベジェリン本人が下部組織時代を過ごした古巣バルサへの復帰を望んでいることぐらいだろう。 いずれにせよ、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督はベジェリンの放出を完全否定しており、成績不振により厳しい批判を浴びている同監督が今シーズン限りで退任でもしない限りベジェリンを取り巻く状況が変わるとは考えにくい。 ベジェリンに続く候補として名前が挙げられているのが、バレンシアのジョアン・カンセロである。現在バレンシアを率いるボロ監督の下では以前ほど出場機会に恵まれていないものの、実力はベジェリンに匹敵する。さらに移籍金ははるかに安くなると考えられている。 ベジェリンやカンセロ以外にも、ASモナコ(フランス)に所属するジブリル・シディベやスポルティング(ポルトガル)のルベン・セメドなどもリストアップされている。バルサはまた、ASモナコの左SBバンジャマン・メンディにも注目しており、同選手がまだオリンピック・マルセイユに所属していた時に獲得を検討している。 ワールドクラスのクラッキ サポーターに夢を与え、すでにクラッキで溢れている現在のチームに加わってもしっかりと存在感を示すことのできるワールドクラスの補強については、それほど多くの選択肢は残されておらず、サプライズは起りにくい状況にある。 すでに複数のメディアで指摘されている通り、ユヴェントスのパウロ・ディバラを筆頭に、アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード、スペイン)、フィリップ・コウチーニョ(リバプール、イングランド)、マルコ・ヴェッラッティ(PSG、フランス)などが獲得リストに名を連ねている。最終的な決断はロベルト・フェルナンデス強化部長に委ねられるものの、どうやらコウチーニョの獲得を支持する声が比較的多く聞こえてきているという。 チームに新たなクラッキを迎え入れることは、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長も極めて重要視しているようで、バルサにとっては右SB同様に必要不可欠な補強となりそうだ。 現段階では、右SB補強の必要性から4人の候補のうち、1人のクラッキを獲得するのが予算的にも限界との見方が強い。 複数のワールドクラスを補強できるとすれば、トレードや移籍金の大幅な値下げが起るか、現戦力の売却で大きな収入が見込める場合に限られるものの、その可能性は極めて低いと言えるだろう。 もちろん前述の4選手に劣らぬ実力を持ち、もっと安価な選手も存在する。 しかしクラッキ獲得は、サポーターに夢を与えることが1番の狙いであることから、それなりのネームバリューは必要不可欠な要素となっている。 今夏の補強に向けてさまざまな話題がでているものの、バルトメウ会長やジョルディ・メストレ副会長、そしてロベルト・フェルナンデス強化部長に焦りの色はない。 今の彼らにとって1番重要なことは、チャンピオンズリーグではユヴェントス戦、国内リーグではレアル・マドリードとのクラシコなど、タイトルを左右する重要な試合を間近に控えるチームが3冠に向け集中。 周囲の雑音に惑わされない環境を維持しながら、今シーズン限りでの退任を表明しているルイス・エンリケ監督の後任人事を進めていくことなのだ。