やはり目立った「ソフトバンク有利」という予想
©Baseball Crix 6人のライターのうち5人が1位に挙げたのはソフトバンクだった。昨シーズン、わずかに届かず優勝を逃したものの、最強軍団であることに疑いの余地はなさそうだ。
「デスパイネを加え、戦力の厚みで他を圧倒」(中島大輔氏)
「昨年こそ日本ハムの奇跡的な連勝で足元をすくわれたが、実力ナンバーワンに違いはない」(キビタキビオ氏)
「『こうなったら面白いな』という願望で選んでいるので、ベタにソフトバンクとしたくなかったのですが、今春のキャンプを見て、個々の力量と競争意識の高さに圧倒され、これは選ばざるを得ないだろうと観念しました」(菊地高弘氏)
「和田毅、武田翔太、千賀滉大の3本を軸とした先発陣の質の高さ、量の豊富さは長丁場のペナントレースを制する最大のアドバンテージ。昨年9勝した東浜巨は今年2ケタ勝利を予想」(服部健太郎氏)
「デスパイネという弱点に対する的確な補強、また元来の投手陣の層の厚さもあり、強みを築いたままシーズンを戦い切る可能性が最も高そう」(山中潤氏)
唯一1位にロッテを挙げた永田遼太郎氏は、「佐々木千隼、酒居知史ら即戦力ルーキーが、キャンプ、オープン戦である程度メドがたち、投手を中心に選手層が厚くなった。昨年の上位2球団を出し抜き、今年は突っ走る」と特に投手陣を評価。
ロッテは、オープン戦の防御率を1.46で乗り切った。13勝2敗3分と勝利を重ねるうえでの原動力になっており、昨年はケガに泣いた投手陣が順当に力を発揮すれば、ペナントレースの主役に躍り出る可能性もありそうだ。
対抗馬としているのは、こちらも6人中5人が日本ハム。日本ハム連覇という予想はなしという結果に。その評価においてニュアンスは少し違っていた。
服部氏は、「投手・大谷翔平の計算が立たず、吉川光夫、バースが退団したが、日本球界復帰となる村田透の加入が心強いプラス要素。質とタフネスさを備えたリリーフ陣は先発陣を十分カバーできる力を備え、昨年1位だったチーム防御率はキープできると見る。野手はブレイクが期待される岡大海が、巨人に移籍した陽岱鋼の穴を埋めると予想」と評価。しかし、一方で2位確保をやや不安視する言葉もあった。
「西武、日本ハム、ロッテは力が拮抗している。日本ハムはブルペンの増井浩俊、宮西尚生がWBCでフル回転した点を差し引いて評価を下げた」(中島氏)
「2~6位は混戦必至で苦肉の順位付けとなったが、試合巧者の日本ハムが今年もソフトバンクを追う形になると読む」(キビタ氏)
「大谷がどれだけ打席に立てるかでかなり攻撃力が上下する。昨年より打席数が減るなら攻撃面でかなり苦労するだろう。そのあたりの管理や調整がうまくいくか」(山中氏)
ダークホース候補には楽天や西武の名前が
©共同通信 菊地氏は楽天を2位(また西武を3位に)に挙げたことについて「楽天、西武は選手個々のポテンシャルの高さを買って上位に。両球団とも素材重視のドラフトをしている印象で、もしかしたら活火山が大噴火するかのごとく、チームを一気に熱くする可能性があります」とコメントした。2位としたのは菊地氏だけだったが、ほかにもダークホースとして楽天を挙げる予想が見られた。
「岸孝之、則本昂大の二枚看板に今年は安樂智大、森雄大らの若手の成長が著しい。ウィーラー、アマダー、ペゲーロの重量打線が噛み合えば、快進撃があっても不思議じゃない」(永田氏)
「開幕からある程度成績の計算が立つ外国人打者が揃っている状況は、ここ数年の楽天にはなかった。少し違った戦いができるかもしれない」(山中氏)
「岸が加入し、則本とダブルエースとなった楽天も、相乗効果による若手の台頭が期待でき、勢いがつく可能性がある」(キビタ氏)
キビタ氏は、「打線はリーグ有数の破壊力があり、岸の移籍は若手に競争をもたらし、むしろ好影響となる気配を感じる」として、西武もダークホースに挙げている。中島氏も「岸が抜けた一方、辻発彦新監督を迎えてモチベーションが高い。ここ数年は持てる力を発揮できなかったが、打線の破壊力は12球団トップクラスだけに、一気に波に乗る可能性もある」と評価するなど、計4人が3位に挙げている。その打線のポテンシャルからなかなか下位に予想しにくい面があったようである。
もちろん、「岸が抜けた穴はやはり大きい。慢性的な課題である守備力の低さ、失策数の多さが解消される見通しが立っていないのも厳しい」と服部氏が指摘するように、ディフェンスでの課題はある。多和田真三郎や高橋光成ら若手先発投手が成長を果たせるかどうかで、上位と下位どちらもありえそうだ。
昨年最下位に沈んだオリックスは3人が最下位に。ただ、一部で評価する声もあった。
「昨年よりはグッとチームが成熟してきているが、チームとしてのまとまりと盛り上がりがまだ不足している部分がある」(キビタ氏)
「ドラフト1位の山岡泰輔のローテーション定着、金子千尋の復調、吉田正尚のフル出場が揃って叶えば上位進出は十分可能」(服部氏)
糸井嘉男という柱を失ったオリックスだが、どんな戦いを見せるのだろうか。昨年はケガで出場機会が限られたものの、吉田のパワフルな打撃に期待を寄せる声は多い。才能開花があれば、糸井の穴を埋めて余りある活躍をするかもしれない。
以上、6人のライター陣によるパ・リーグの順位予想を紹介した。力関係の捉え方としては、かなり一致した部分があったと言える。それでもケガ人の出現や突出した働きを見せる新戦力の登場で、予想と結果が大きく変わる可能性は十分ある。果たして結果はいかに———。
(野球ライタープロフィール)
菊地高弘
1982年生まれ、東京都生まれ。雑誌『野球小僧』『野球太郎』編集部勤務を経てフリーランスに。野球部研究家「菊地選手」としても活動し、著書に『野球部あるある』シリーズ(集英社/既刊3巻)がある。
キビタ キビオ
1971年、東京都生まれ。30歳を越えてから転職し、ライター&編集者として『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を長年勤め、選手のプレーをストップウオッチで計測して考察する「炎のストップウオッチャー」を連載。現在はフリーとして、雑誌の取材原稿から書籍構成、『球辞苑』(NHK-BS)ほかメディア出演など幅広く活動している。
中島大輔
1979年、埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材し『日経産業新聞』『週刊プレイボーイ』『スポーツナビ』『ベースボールチャンネル』などに寄稿。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)『中南米野球はなぜ強いのか』(亜紀書房)がある。
永田遼太郎
1972年、茨城県生まれ。雑誌編集を経て、2005年からフリーとして活動を開始する。いくつかのプロ野球球団のオフィシャルサイトの記者を経て現在に至る。月イチ野球トークイベント『新大久保ベースボールカフェ』の運営も行う。
服部健太郎
1967年、兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、商社勤務を経て、フリーの野球ライターに転身。関西を拠点に学童野球からプロ野球まで取材対象は幅広い。通算7年の米国在住経験を生かし、外国人選手、監督のインタビューも多数。
山中潤
1978年、東京都生まれ。大学卒業後、編集プロダクション、出版社勤務を経て2008年よりフリーの編集者兼ライターとして活動。データサイドからの野球分析の最新動向や、球団編成部門の施策などを追っている。