文=横井伸幸
満点100ポイントの1位はベティスとヌマンシア
ちょっと前の話になるが、様々な組織の腐敗・汚職と闘うNGOトランスペアレンシー・インターナショナルのスペイン支部(以下TIスペイン)が、国内のサッカークラブの16年度の透明性を調査した。
その方法はこうだ。まず、TIスペインがチェックポイントとして5部門60項目を挙げる。内訳は「クラブに関する情報」が9、「ソシオ、サポーター、観客一般との関係に関する情報」が18、「財政に関する情報」が17、「選手の獲得・売却やプロバイダーに関する情報」が5、そして「透明性法に関する項目」が11。
次に、対象となるリーガ1部と2部の計21クラブ(2部のセビージャ・アトレティコは1部セビージャのBチーム)それぞれについて、その60項目をTIスペインが3段階で評価する。当該情報の全てがクラブのウェブサイトに掲載されていたら「1」。部分的に掲載されていたら「0.5」。全く掲載されていなかったら「0」をポイントとして与えるのだ。
最後に、TIスペインからこれを受け取ったクラブが60項目の各情報の掲載場所を示し、望む場合は追加の説明を添えて返送する。この追加説明によってTIスペインが当初の評価を上げることがある。
こうして21クラブを調べた結果、1部20クラブの平均は100ポイント中71.8ポイント、2部21クラブは54.4ポイント、全41クラブでは62.8ポイントで、TIスペインは「合格」と総括した。15年度の平均が1部は49.7ポイント、2部は39.0ポイント、全体は44.2ポイントだったことを考えると納得はできる。
透明性が最も高いとされたのは満点の100ポイントを得たベティスとヌマンシア(2部)。前者は15年度の調査ではわずか10ポイントしか得られず、透明性においてリーガ最悪のクラブだったが、それを恥じたのか1年で大きな改革を実行した。
反対に前回の1位から順位を下げたのはエイバルとレアル・マドリーで(昨年はともに100)、それぞれ3位(99.2)と5位(95.8)まで落ちた。その他上位は2部ルゴ(98.3で4位)とバルセロナ、レガネス(ともに93.3で6位)。8位のデポルティボ、9位エスパニョール、10位セビージャ、11位の2部ミランデースも80ポイント以上獲得しているので優良クラブといえるだろう。
他方、50ポイントに届かず、不合格の烙印を押されたクラブは12もある。ワースト3はレウス(15.8)、ウエスカ(21.7)、オビエド(22.5)と2部のクラブが占めているが、ビジャレアル(30.8)にマラガ(38.3)、オサスナ(46.7)と1部の落第組もしっかりいる。
「薄暗闇の中で交渉する術をバルサはいまでも知っている」
©Getty Images ところで、最近元ブラジル代表のロナウドが、97年夏のバルセロナからインテルへの移籍の背景を明らかにした。
96-97シーズンのロナウドといえば、オランダのPSVからやって来たばかりだというのにリーガ37試合で34ゴールを決め、国王杯とUEFAカップウィナーズ・カップ(後にUEFAヨーロッパリーグの前身UEFAカップに吸収され消滅)を合わせた全公式戦49試合でも47得点し、バルセロナのリーガを除く2冠獲得に貢献。弱冠20歳ながら、「いまのバルサの戦術はロナウド」といわれるほどのチームに対する影響力を持っていた。
にもかかわらず、シーズン終了後、彼はインテルへ去ってしまう。
「僕のせいじゃないんだ。リーガが終わるちょうど1カ月前、契約延長でバルサと合意したのに、その1週間後、弁護士とバルサの会長が『それは道理に反している、違約金2900万ドル(現在のレートで約32億円)払うクラブがあったらオファーを受け入れる』と口を揃えて言い始めたんだ」
ロナウドは続ける。
「そうやって薄暗闇の中で交渉する術をバルサはいまでも知っている。他のクラブとはやり方が違う。たとえばネイマールのケースはどうだ? 本当のところ何があったのか、未だ明らかになってないだろ?」
ネイマールのケースとは13年夏の彼の獲得にバルサは本当は幾ら費やし、誰が幾ら受け取ったのかに関するもので、ネイマール自身や当時の会長に横領の疑いがかけられている件だ。
こうした本当に闇の部分を直接問いただす項目はTIスペインの調査にはないので今回の結果とは無関係である。とはいえ、「選手の獲得・売却やプロバイダーに関する情報」でバルサが得たのは70ポイントで5部門中最少。バルサの総合順位が上がらなかった原因だ。